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大阪大学 2012年度 前期日程 · 英語

文学部 和文英訳
解答と解説

文法・論理・構成は正しいのに生命感がない文章を、修辞の工夫で生き生きさせる流れを訳す問題です。差がつくのは、単語の置き換えではなく、文中の時間差・逆接・因果・限定を英語の骨組みに直すことです。標準解では how 節4個、what 節1個を使い、名詞のかたまりを具体的な内容へ開きました。「文章にぶつかる」と「説得力がない」の訳し分けを軸にすると、長い原文でも何を主語にし、どの評価を残すかが見えます。各文を一度短い主語と動詞にほどき、接続関係を戻してください。

難易度 ★★★★★ 目安 35分 和文英訳 テーマ 正しいだけで説得力のない文章を生かす修辞
1

問題

文学部 次の日本文を英訳しなさい。

文章も文法的なまちがいはない,論理もちゃんとしている,冒頭から結論までの道筋もとおっている,それでいて,どうも説得力がない,迫力がない,といった文章にぶつかることがあります。そういう文章は,どこか,魅力がなく,生命の通った感じがしないのです。そんな文章をどうしたら生き生きさせられるでしょうか。表現の面でいいますなら,修辞にくふうを加えることです。

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この問題で見られている力

  • 文章にぶつかるを come across writing と自然に表す力
  • 論理がちゃんとしているの論理を英語の接続や節で残す力
  • 説得力がないを直訳せず文脈に合う意味にする力
  • how節・what節の中を平叙文語順にする力
  • 原文の全4文を訳し漏らさず一つの流れにする力
2

文ごとの解説

第 1 文

文章も文法的なまちがいはない,論理もちゃんとしている,冒頭から結論までの道筋もとおっている,それでいて,どうも説得力がない,迫力がない,といった文章にぶつかることがあります。

つまずきやすいところ
  • 三つの長所を that / whose で並べ、文の骨組みを途中で失いません
  • 「道筋」は road とせず、how the argument moves または organization として処理します
  • ここが山場です。「それでいて」を but still / yet で強い逆接にします
  • 「説得力」と「迫力」を convincing と move the reader に分け、同じ powerful を二度使いません
  • 「ぶつかる」は物理的な衝突ではなく come across / read で表します
発想の切り替え

この文では、三つの長所を that / whose で並べ、文の骨組みを途中で失いません。日本語の名詞を英語の名詞一語へ急いで置き換えず、誰が何を見て、どのように判断するかまで組み直します。とくに「文章にぶつかる」は come across writing と書くと、原文の論理が見えます。別解のように語順を変えても、対比・因果・限定のどれを表す文なのかを保てば大丈夫です。

訳例
標準

We sometimes come across writing that has no grammatical errors, whose logic is sound, and whose path from the opening to the conclusion is clear, but that still somehow fails to convince or move the reader.

別解

We sometimes read a piece that is correct in grammar and logic and is clearly organized from beginning to end, yet somehow it does not tell us what makes the argument convincing or how the words can move us.

この文でやりやすい誤り

「ぶつかる」を collide with と直訳する

減点 大
We sometimes collide with writing that has no grammatical errors.
We sometimes come across writing that has no grammatical errors.

collide with は物理的に衝突する意味です。偶然その文章を読むという文脈では come across を使います。

writing を可算名詞として a writing にする

減点 中
We sometimes read a writing with clear logic.
We sometimes read a piece of writing with clear logic.

writing はこの意味では通常不可算です。一つの文章なら a piece of writing と数えます。

no と否定動詞を重ねる

減点 大
The writing does not have no grammatical errors.
The writing has no grammatical errors.

not と no が重なり、標準英語では意図と逆に読まれます。否定は一つだけにします。

「論理がちゃんとしている」を correctful とする

減点 大
Its logic is correctful.
Its logic is sound.

correctful という形容詞はありません。論理が筋の通った状態なら sound または logical が使えます。

「道筋」を road と物理的に訳す

減点 大
A road passes from the opening to the conclusion.
It is clearly organized from the opening to the conclusion.

文章の論の進み方を述べており、道路が通る話ではありません。organized や line of thought で構成を表します。

but を落として評価の逆転を消す

減点 中〜大
It has no errors and clear logic and no power to convince.
It has no errors and clear logic, but it still fails to convince the reader.

文法上並べられても、「正しい。それなのに力がない」という意外な対比が見えません。but still を入れます。

この文の言いかえ
文章にぶつかる
come across writingこの問題の文脈で意味の中心が明確です。how / what 節に開くため、難しい抽象名詞も要りません。
read a piece of writing語順や視点を変えた安全な別案です。主語と時制を前後に合わせて使ってください。
collide with a sentence日本語の形をそのまま移したため、英語の語法またはこの文脈の意味に合いません。
文法的な間違いがない
have no grammatical errorsこの問題の文脈で意味の中心が明確です。前後の対比や因果を保ちやすい形です。
be correct in grammar語順や視点を変えた安全な別案です。主語と時制を前後に合わせて使ってください。
have not grammar mistakes日本語の形をそのまま移したため、英語の語法またはこの文脈の意味に合いません。
論理がちゃんとしている
the logic is soundこの問題の文脈で意味の中心が明確です。how / what 節に開くため、難しい抽象名詞も要りません。
the argument is logical語順や視点を変えた安全な別案です。主語と時制を前後に合わせて使ってください。
the logic is correctful日本語の形をそのまま移したため、英語の語法またはこの文脈の意味に合いません。
道筋が通る
be clearly organized from beginning to endこの問題の文脈で意味の中心が明確です。前後の対比や因果を保ちやすい形です。
have a clear path to the conclusion語順や視点を変えた安全な別案です。主語と時制を前後に合わせて使ってください。
a road passes in the writing日本語の形をそのまま移したため、英語の語法またはこの文脈の意味に合いません。
説得力がない
fail to convince the readerこの問題の文脈で意味の中心が明確です。how / what 節に開くため、難しい抽象名詞も要りません。
lack persuasive force語順や視点を変えた安全な別案です。主語と時制を前後に合わせて使ってください。
have no persuasion power日本語の形をそのまま移したため、英語の語法またはこの文脈の意味に合いません。
第 2 文

そういう文章は,どこか,魅力がなく,生命の通った感じがしないのです。

つまずきやすいところ
  • 「そういう文章」は such writing で前文全体を受けます
  • 「どこか」は場所ではなく理由を言い切れない副詞 somehow です
  • 「魅力がない」は lacks appeal とし、文章を人のように attractive と評価しすぎません
  • 「生命の通った感じ」は how living ideas move through it と節に開きます
  • feel の目的語を what 節にして、何を感じられないかを補います
発想の切り替え

この文では、「そういう文章」は such writing で前文全体を受けます。日本語の名詞を英語の名詞一語へ急いで置き換えず、誰が何を見て、どのように判断するかまで組み直します。とくに「論理がちゃんとしている」は the logic is sound と書くと、原文の論理が見えます。別解のように語順を変えても、対比・因果・限定のどれを表す文なのかを保てば大丈夫です。

訳例
標準

Such writing somehow lacks appeal and does not give us a sense of how the writer's ideas come alive.

別解

A piece like that seems dull; we cannot feel what the writer truly wants to bring to life in it.

この文でやりやすい誤り

how節を疑問文語順にする

減点 大
We cannot feel how do living ideas move through it.
We cannot feel how living ideas move through it.

how 節の中では do を前に出しません。how living ideas move の平叙文語順にします。

この文の言いかえ
生命が通う
show how living ideas move through itこの問題の文脈で意味の中心が明確です。前後の対比や因果を保ちやすい形です。
make the words come alive語順や視点を変えた安全な別案です。主語と時制を前後に合わせて使ってください。
blood runs in the sentence日本語の形をそのまま移したため、英語の語法またはこの文脈の意味に合いません。
第 3 文

そんな文章をどうしたら生き生きさせられるでしょうか。

つまずきやすいところ
  • 疑問文なので How can we ...? の語順を守ります
  • 「どうしたら」は方法を問う how で、why にしません
  • 「生き生きさせる」は make writing come alive と補語に動詞原形を置きます
  • then を添え、前の問題点を受けた問いだと示します
  • such writing を受け、別の文章一般へ話題を広げません
発想の切り替え

この文では、疑問文なので How can we ...? の語順を守ります。日本語の名詞を英語の名詞一語へ急いで置き換えず、誰が何を見て、どのように判断するかまで組み直します。とくに「説得力がない」は fail to convince the reader と書くと、原文の論理が見えます。別解のように語順を変えても、対比・因果・限定のどれを表す文なのかを保てば大丈夫です。

訳例
標準

How, then, can we make such writing come alive?

別解

What can we do to make a piece like that feel alive to its reader?

この文でやりやすい誤り

make の後ろを to come にする

減点 大
How can we make such writing to come alive?
How can we make such writing come alive?

使役の make + 目的語の後ろは動詞原形です。to を置かない形にしてください。

この文の言いかえ
生き生きさせる
make the writing come aliveこの問題の文脈で意味の中心が明確です。how / what 節に開くため、難しい抽象名詞も要りません。
bring the piece to life語順や視点を変えた安全な別案です。主語と時制を前後に合わせて使ってください。
make the writing lively itself日本語の形をそのまま移したため、英語の語法またはこの文脈の意味に合いません。
第 4 文

表現の面でいいますなら,修辞にくふうを加えることです。

つまずきやすいところ
  • 「表現の面で」は As far as expression is concerned と範囲を限定します
  • 「答えは〜すること」は the answer is to V で受けます
  • ここが山場です。「修辞にくふう」を難しい一語で済ませず、何をどう使うかへ開きます
  • what kinds ... to use と how to use them を並べて工夫の二面を示します
  • 修辞は増やせばよいのではなく、伝えたい内容に合うものを選ぶと説明します
発想の切り替え

この文では、「表現の面で」は As far as expression is concerned と範囲を限定します。日本語の名詞を英語の名詞一語へ急いで置き換えず、誰が何を見て、どのように判断するかまで組み直します。とくに「生き生きさせる」は make the writing come alive と書くと、原文の論理が見えます。別解のように語順を変えても、対比・因果・限定のどれを表す文なのかを保てば大丈夫です。

訳例
標準

As far as expression is concerned, the answer is to think carefully about what kinds of words will work and how to use them.

別解

In terms of expression, we can bring the writing to life by choosing figures of speech that fit what we want to say and by deciding how each one should work.

この文でやりやすい誤り

expression の範囲限定を原因に変える

減点 中
Because of expression, we should use figures of speech.
As far as expression is concerned, we should think about how to use figures of speech.

原文は表現が原因だと言っているのではなく、「表現の面から答えるなら」と範囲を限定しています。

修辞をただ増やす意味にする

減点 大
The answer is to add more figures of speech.
The answer is to think carefully about what figures of speech to use and how to use them.

原文の「くふう」は数を増やすことではありません。何をどう使うか考えるという質の工夫を残します。

この文の言いかえ
修辞に工夫を加える
choose how to use rhetorical devicesこの問題の文脈で意味の中心が明確です。前後の対比や因果を保ちやすい形です。
think carefully about figures of speech語順や視点を変えた安全な別案です。主語と時制を前後に合わせて使ってください。
add a device to rhetoric日本語の形をそのまま移したため、英語の語法またはこの文脈の意味に合いません。
3

模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×3 / what節 ×188語

We sometimes come across writing that has no grammatical errors, whose logic is sound, and whose path from the opening to the conclusion is clear, but that still somehow fails to convince or move the reader. Such writing somehow lacks appeal and does not give us a sense of how the writer's ideas come alive. How, then, can we make such writing come alive? As far as expression is concerned, the answer is to think carefully about what kinds of words will work and how to use them.

全88語です。原文の4文をすべて対応させ、文法・論理・構成は正しいのに生命感がない文章を、修辞の工夫で生き生きさせる流れを訳す形にしました。how節3個、what節1個を実測しています。難しい名詞へ逃げず、主語・動詞・接続を見える形にしたため、少し説明的でも意味は正確です。冠詞、時制、主述の一致も文ごとに確認しています。まずはこの骨組みを目標にしてください。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×2 / what節 ×4105語

We sometimes read a piece that is correct in grammar and logic and is clearly organized from beginning to end, yet somehow it does not tell us what makes the argument convincing or how the words can move us. A piece like that seems dull; we cannot feel what the writer truly wants to bring to life in it. What can we do to make a piece like that feel alive to its reader? In terms of expression, we can bring the writing to life by choosing figures of speech that fit what we want to say and by deciding how each one should work.

全105語です。こちらは原文の論理を保ちながら、文法的な間違いがないや生命が通うを別の平易な言い方にしました。how節2個、what節4個を使っています。一語が出ないときも、誰が何を感じ、何がどう変わるかを二つの短い節に分ければ、内容を落とさず書けます。

6

他の問題にも使える形

学習のコツを紹介する Boost のキャラクター Boo
how + S V / how + 形容詞 + S V最重要

名詞を働きへ開く

文章にぶつかるのような内容を、物や性質の名前ではなく「どう〜するか」へ開きます。節内は疑問文語順にしません。

come across writing
how carefully the reader follows the argument
what + S V最重要

内容を節で受ける

「もの・こと」の中身を示せます。この問題では 説得力がない を具体化するために使えます。末尾に it を重ねないでください。

fail to convince the reader
what the writer wants to show
once / before / after + S Vよく使う

時間の境目を示す

変化の前後を明確にします。時を表す節では未来の内容でも will を置かず、現在形を使います。

once we decide what to do
before we judge what it means
no matter how / however + 形容詞よく使う

譲歩を平易に書く

程度にかかわらない譲歩を表します。難しい倒置を使わず、形容詞と主語・動詞の順を守れば十分です。

no matter how strange the result may be
however difficult the question seems
that does not mean that S Vよく使う

誤った推論を止める

前の事実から短絡的な結論を出さないための形です。筆者が何を否定しているかをはっきり示せます。

That does not mean that we can ignore its faults.
No clear answer does not mean that every view is equal.
Aではあるが、それでもBよく使う

評価の逆転を見せる

正しい点を認めたあとで問題点を出す対比です。but still / yet を使い、単なる and の列挙にしません。

It is correct, but it still fails to move the reader.
The rule is simple, yet many people misunderstand how it works.
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この問題の語彙

表現意味ひとこと
come across偶然出会う、目にする文章との出会いに使え、collide with とはしません
a piece of writing一つの文章writing を数えるときの形です
grammatical文法的なgrammar は名詞、grammatical は形容詞です
soundしっかりした、妥当なsound logic で筋の通った論理を表せます
convince納得させる目的語に reader など人を置きます
appeal魅力lack appeal のように不可算で使えます
come alive生き生きするmake the writing come alive と使います
figure of speech比喩などの修辞表現複数なら figures of speech です
8

出題の傾向

阪大文学部の和文英訳は、2012年のように文章論や表現論をまとまった長さで訳す問題が見られます。同年の文学部以外が美術鑑賞の俗説を論じるのに対し、文学部は文章の説得力を扱います。複数の評価語を同じ英単語で潰さないことが重要です。

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