大阪大学のロゴ 外国語学部(1) 和文英訳 大阪大学 2013
大阪大学 2013年度 前期日程 · 英語

外国語学部(1) 和文英訳
解答と解説

「心の傷を癒してきた宗教の役割」を扱う和文英訳です。差がつくのは、傷を物理的なけがにせず心の痛みとして受け、古来ずっと宗教の仕事とされてきた継続と、宗教ごとの教義・方法の違いを表すことです。日本語の抽象名詞を英単語一語に置き換えるだけでは、原文の因果や対比が見えなくなります。そこで、how節・what節を使い、誰が何を感じ、何がどのように変わるのかを具体的にします。標準解では平易な語を選び、原文の限定・推量・時制も残しました。各segmentで日本語と英語を対応させ、最後に訳し落としがないかを一文ずつ確かめてください。

難易度 ★★★★ 目安 22分 和文英訳 テーマ 心の傷を癒してきた宗教の役割
1

問題

外国語学部(1) 次の日本文を英訳しなさい。

それではその傷はどのようにして癒されるのか。心の傷の癒しは,古来からもっぱら宗教の仕事とされてきた。いろいろな宗教がそれぞれの教義や方法によって,人間の心の癒しを行ってきた。

次の日本文の下線部(1)の意味を英語で表しなさい。 人間は誰しも心のなかに傷をもっている。もっともその傷の存在をあまり意識しないで生きている人もいる。そのような人は一般的に言って,他人の心に傷を負わせる――ほとんど無意識に――ことが多いようである。 ___下線部(1)___それではその傷はどのようにして癒されるのか。心の傷の癒しは,古来からもっぱら宗教の仕事とされてきた。いろいろな宗教がそれぞれの教義や方法によって,人間の心の癒しを行ってきた。___下線部(1)______下線部(2)___しかし,近代になって人々が宗教を信じがたくなるのと同時に,心理療法という方法によって,心の癒しができると考え,しかもそれは「科学的」な方法でなされると主張する人たちが現れた。___下線部(2)______下線部(3)___そのような「科学」を絶対と信じる人には,それは時に有効かもしれないが,そうでない人には,人間の心が科学的方法で癒されたりするものでないことは,少し考えるとわかることである。___下線部(3)___ (河合隼雄『中年クライシス』)
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この問題で見られている力

  • 「その傷」を wounds in the human mind と受け直す
  • 疑問文では how の後ろを倒置する
  • 古来からの継続を現在完了で表す
  • 「もっぱら」を mainly で強すぎず示す
  • 宗教ごとの違いを different ways とする
  • 教義と方法を what / how 節で具体化する
2

文ごとの解説

第 1 文

それではその傷はどのようにして癒されるのか。

つまずきやすいところ
  • ここが山場です。「その傷」を wounds in the human mind と受け直す。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 疑問文では how の後ろを倒置する。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 古来からの継続を現在完了で表す。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 「もっぱら」を mainly で強すぎず示す。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 宗教ごとの違いを different ways とする。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
発想の切り替え

この部分では「心の傷を癒してきた宗教の役割」の流れのうち、「その傷」を wounds in the human mind と受け直すことが中心です。日本語の名詞を一語ずつ置き換えるのでなく、まず誰が何をするのかを決め、疑問文では how の後ろを倒置する形へ組み直します。さらに、古来からの継続を現在完了で表す点も落とさないでください。標準解と別解の主語や接続語を比べると、同じ内容でも二通りの安全な組み方が見えてきます。

訳例
標準

Then how can such wounds in the human mind be healed?

別解

How, then, do people recover from pain in their minds?

この文でやりやすい誤り

直接疑問文の語順を平叙文にする

減点 大
Then how such wounds can be healed?
Then how can such wounds be healed?

この英文では「直接疑問文の語順を平叙文にする」という一つの欠陥が実際に現れています。そのままだと、この問題で必要な「「その傷」を wounds in the human mind と受け直す」という関係が崩れるか、原文より意味が強く・狭くなります。修正例では狙い以外の語順や時制は動かさず、この一点だけを直しています。答案では修正後の形を声に出して、主語から動詞、節の終わりまで確認してください。

recover の後ろに直接 pain を置く

減点 大
People recover their pain through religion.
People recover from pain through religion.

この英文では「recover の後ろに直接 pain を置く」という一つの欠陥が実際に現れています。そのままだと、この問題で必要な「教義と方法を what / how 節で具体化する」という関係が崩れるか、原文より意味が強く・狭くなります。修正例では狙い以外の語順や時制は動かさず、この一点だけを直しています。答案では修正後の形を声に出して、主語から動詞、節の終わりまで確認してください。

心の傷を cut と物理的に訳す

減点 小〜中
Religion has healed cuts in the human body.
Religion has helped heal wounds in the human mind.

この英文では「心の傷を cut と物理的に訳す」という一つの欠陥が実際に現れています。そのままだと、この問題で必要な「「もっぱら」を mainly で強すぎず示す」という関係が崩れるか、原文より意味が強く・狭くなります。修正例では狙い以外の語順や時制は動かさず、この一点だけを直しています。答案では修正後の形を声に出して、主語から動詞、節の終わりまで確認してください。

この文の言いかえ
woundこの問題の「傷」に合う基本形です。この文では in the mind を添え、心の傷だと明示します
pain inside a personwoundがすぐに出ないとき、意味をほどいて書ける言いかえです。原文の強さと時制は保ってください。
the wound thing日本語の「傷」に thing を機械的に足しただけで、意味の関係が伝わりません。この形は使わないでください。
癒す
healこの問題の「癒す」に合う基本形です。傷や心を目的語に取れます。人なら help 人 recover が安全です
help recoverhealがすぐに出ないとき、意味をほどいて書ける言いかえです。原文の強さと時制は保ってください。
〜から回復する
recover fromこの問題の「〜から回復する」に合う基本形です。痛みを目的語にせず from を置きます
get overrecover fromがすぐに出ないとき、意味をほどいて書ける言いかえです。原文の強さと時制は保ってください。
an overly formal expression知っている難しい表現を無理に使う必要はありません。ここでは平易な節のほうが正確です。
第 2 文

心の傷の癒しは,古来からもっぱら宗教の仕事とされてきた。

つまずきやすいところ
  • ここが山場です。疑問文では how の後ろを倒置する。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 古来からの継続を現在完了で表す。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 「もっぱら」を mainly で強すぎず示す。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 宗教ごとの違いを different ways とする。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 教義と方法を what / how 節で具体化する。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
発想の切り替え

この部分では「心の傷を癒してきた宗教の役割」の流れのうち、疑問文では how の後ろを倒置することが中心です。日本語の名詞を一語ずつ置き換えるのでなく、まず誰が何をするのかを決め、古来からの継続を現在完了で表す形へ組み直します。さらに、「もっぱら」を mainly で強すぎず示す点も落とさないでください。標準解と別解の主語や接続語を比べると、同じ内容でも二通りの安全な組み方が見えてきます。

訳例
標準

Since ancient times, religion has mainly been responsible for healing what hurts people inside.

別解

For a very long time, helping people understand what hurts them and how they can live with it has been seen mainly as the work of religion.

この文でやりやすい誤り

heal を自動詞だけで使う

減点 中
Religion has helped to heal from wounds in people’s minds.
Religion has helped to heal wounds in people’s minds.

この英文では「heal を自動詞だけで使う」という一つの欠陥が実際に現れています。そのままだと、この問題で必要な「疑問文では how の後ろを倒置する」という関係が崩れるか、原文より意味が強く・狭くなります。修正例では狙い以外の語順や時制は動かさず、この一点だけを直しています。答案では修正後の形を声に出して、主語から動詞、節の終わりまで確認してください。

古来からを過去形だけにする

減点 中
Religion was responsible for healing since ancient times.
Religion has been responsible for healing since ancient times.

この英文では「古来からを過去形だけにする」という一つの欠陥が実際に現れています。そのままだと、この問題で必要な「古来からの継続を現在完了で表す」という関係が崩れるか、原文より意味が強く・狭くなります。修正例では狙い以外の語順や時制は動かさず、この一点だけを直しています。答案では修正後の形を声に出して、主語から動詞、節の終わりまで確認してください。

religion を複数主語と取り違える

減点 中〜大
Religion have often helped people recover.
Religion has often helped people recover.

この英文では「religion を複数主語と取り違える」という一つの欠陥が実際に現れています。そのままだと、この問題で必要な「「もっぱら」を mainly で強すぎず示す」という関係が崩れるか、原文より意味が強く・狭くなります。修正例では狙い以外の語順や時制は動かさず、この一点だけを直しています。答案では修正後の形を声に出して、主語から動詞、節の終わりまで確認してください。

「もっぱら」を only にして例外を消す

減点 小〜中
Healing the mind has only been the work of religion.
Healing the mind has mainly been the work of religion.

この英文では「「もっぱら」を always にして例外を消す」という一つの欠陥が実際に現れています。そのままだと、この問題で必要な「宗教ごとの違いを different ways とする」という関係が崩れるか、原文より意味が強く・狭くなります。修正例では狙い以外の語順や時制は動かさず、この一点だけを直しています。答案では修正後の形を声に出して、主語から動詞、節の終わりまで確認してください。

この文の言いかえ
古来から
since ancient timesこの問題の「古来から」に合う基本形です。過去から今まで続くので現在完了とよく合います
for a very long timesince ancient timesがすぐに出ないとき、意味をほどいて書ける言いかえです。原文の強さと時制は保ってください。
〜を担う
be responsible forこの問題の「〜を担う」に合う基本形です。for の後ろが動作なら ing 形にします
be seen as the work ofbe responsible forがすぐに出ないとき、意味をほどいて書ける言いかえです。原文の強さと時制は保ってください。
もっぱら、主に
mainlyこの問題の「もっぱら、主に」に合う基本形です。always や only より断定を弱められます
for the most partmainlyがすぐに出ないとき、意味をほどいて書ける言いかえです。原文の強さと時制は保ってください。
第 3 文

いろいろな宗教がそれぞれの教義や方法によって,人間の心の癒しを行ってきた。

つまずきやすいところ
  • ここが山場です。古来からの継続を現在完了で表す。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 「もっぱら」を mainly で強すぎず示す。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 宗教ごとの違いを different ways とする。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 教義と方法を what / how 節で具体化する。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
  • 「その傷」を wounds in the human mind と受け直す。この文の意味と英語の主語・動詞が対応しているか確認します
発想の切り替え

この部分では「心の傷を癒してきた宗教の役割」の流れのうち、古来からの継続を現在完了で表すことが中心です。日本語の名詞を一語ずつ置き換えるのでなく、まず誰が何をするのかを決め、「もっぱら」を mainly で強すぎず示す形へ組み直します。さらに、宗教ごとの違いを different ways とする点も落とさないでください。標準解と別解の主語や接続語を比べると、同じ内容でも二通りの安全な組み方が見えてきます。

訳例
標準

Different religions have helped people recover in different ways, according to what each religion teaches and how it asks people to live.

別解

Each religion has offered its own teaching and shown people what they can do to heal.

この文でやりやすい誤り

according to の to を落とす

減点 中
Each religion helps people according its teaching.
Each religion helps people according to its teaching.

この英文では「according to の to を落とす」という一つの欠陥が実際に現れています。そのままだと、この問題で必要な「「その傷」を wounds in the human mind と受け直す」という関係が崩れるか、原文より意味が強く・狭くなります。修正例では狙い以外の語順や時制は動かさず、この一点だけを直しています。答案では修正後の形を声に出して、主語から動詞、節の終わりまで確認してください。

what 節を疑問文語順にする

減点 中
Religion teaches people what should they do.
Religion teaches people what they should do.

この英文では「what 節を疑問文語順にする」という一つの欠陥が実際に現れています。そのままだと、この問題で必要な「疑問文では how の後ろを倒置する」という関係が崩れるか、原文より意味が強く・狭くなります。修正例では狙い以外の語順や時制は動かさず、この一点だけを直しています。答案では修正後の形を声に出して、主語から動詞、節の終わりまで確認してください。

「いろいろな宗教」を一つの同じ方法にする

減点 中〜大
All religions have used exactly the same way to heal people.
Different religions have helped people in different ways.

この英文では「「いろいろな宗教」を一つの同じ方法にする」という一つの欠陥が実際に現れています。そのままだと、この問題で必要な「古来からの継続を現在完了で表す」という関係が崩れるか、原文より意味が強く・狭くなります。修正例では狙い以外の語順や時制は動かさず、この一点だけを直しています。答案では修正後の形を声に出して、主語から動詞、節の終わりまで確認してください。

この文の言いかえ
宗教
religionこの問題の「宗教」に合う基本形です。一般的な制度として述べるときは無冠詞の単数で置けます
religious beliefreligionがすぐに出ないとき、意味をほどいて書ける言いかえです。原文の強さと時制は保ってください。
教え、教義
teachingこの問題の「教え、教義」に合う基本形です。難しい専門語を避けた平易な表現です
what a religion teachesteachingがすぐに出ないとき、意味をほどいて書ける言いかえです。原文の強さと時制は保ってください。
3

模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×2 / what節 ×247語

Then how can such wounds in the human mind be healed? Since ancient times, religion has mainly been responsible for healing what hurts people inside. Different religions have helped people recover in different ways, according to what each religion teaches and how it asks people to live.

標準解は全47語です。how節2個、what節2個を実測しました。傷を物理的なけがにせず心の痛みとして受け、古来ずっと宗教の仕事とされてきた継続と、宗教ごとの教義・方法の違いを表すことを、難しい名詞に頼らず節と平易な動詞で表しています。冠詞、時制、主語と動詞の一致を文ごとに確認し、原文の内容がどの箇所に対応するかも照合しました。まずはこの形を目標にしてください。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×2 / what節 ×253語

How, then, do people recover from pain in their minds? For a very long time, helping people understand what hurts them and how they can live with it has been seen mainly as the work of religion. Each religion has offered its own teaching and shown people what they can do to heal.

こちらは全53語で、how節2個、what節2個です。標準解とは骨格を変えながら、「心の傷を癒してきた宗教の役割」の内容を落とさず説明しました。一語の訳語が出ない場合も、人・行動・理由を短い節で補えば正確に伝えられます。書いた後は、原文の限定や対比を強めすぎていないかも確認してください。

6

他の問題にも使える形

学習のコツを紹介する Boost のキャラクター Boo
how + S + V最重要

様子や程度を節に開く

「その傷」を wounds in the human mind と受け直すとき、抽象名詞を探すより how の後ろに主語と動詞を置くと内容が見えます。疑問文と違い、節の中では普通の語順にしてください。

This shows how the idea works.
We learned how people see the issue.
what + S + V最重要

内容を名詞節で示す

疑問文では how の後ろを倒置するときに使えます。「もの」「こと」を thing で受けず、何を指すかまで一つの節にすると、今回の中心である心の傷を癒してきた宗教の役割が明確になります。

We should understand what the writer means.
Tell me what happened next.
If / When + S V, S Vよく使う

条件や時の関係を先に示す

古来からの継続を現在完了で表す場合、先に条件や時点を置くと長い日本語を二つに整理できます。if 節で単純な条件を述べるときは、未来の内容でも現在形を基本にします。

If we look carefully, we can see the difference.
When people learn more, their view may change.
because + S Vよく使う

理由と結果を一度だけ結ぶ

「もっぱら」を mainly で強すぎず示す理由を示すときに便利です。because を使ったら主節の前に so を重ねず、どちらが原因でどちらが結果かを読み返してください。

We changed our plan because we found a problem.
Because she asked a clear question, we understood her point.
not A but B / A and Bよく使う

対比と並列を使い分ける

宗教ごとの違いを different ways とするためには、反対関係なら not A but B、同じ向きの要素なら A and B を選びます。日本語の読点だけを見ず、二つの内容の関係を確かめてください。

The task needs not speed but care.
We asked questions and checked the facts.
主語を決める→節に開く→接続語を戻す最重要

長い和文を安全に組み立てる順番

この問題では教義と方法を what / how 節で具体化する点が最後の確認になります。まず各文の中心動詞を置き、how / what 節で中身を補い、最後に because や however を戻すと、訳し漏れを防げます。

心の傷を癒してきた宗教の役割:中心動詞を決めてから細部を足す
教育の意義:何を学び、どう変わるかを先に書く
7

この問題の語彙

表現意味ひとこと
woundこの文では in the mind を添え、心の傷だと明示します
heal癒す傷や心を目的語に取れます。人なら help 人 recover が安全です
since ancient times古来から過去から今まで続くので現在完了とよく合います
be responsible for〜を担うfor の後ろが動作なら ing 形にします
mainlyもっぱら、主にalways や only より断定を弱められます
religion宗教一般的な制度として述べるときは無冠詞の単数で置けます
teaching教え、教義難しい専門語を避けた平易な表現です
recover from〜から回復する痛みを目的語にせず from を置きます
8

出題の傾向

阪大外国語学部は、同じ文章から複数の下線部を出し、前後の論理を踏まえて各部分を英語にする形が見られます。2013年は学部内の三題が連続した議論を作っているため、この外国語学部 (1)では「心の傷を癒してきた宗教の役割」に必要な範囲だけを訳し、前後の内容を勝手に足さないことが大切です。翌年の外国語学部でも、抽象的な考えを平易な動詞と節でほどく力が問われています。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

この問題を解いて添削してもらう

解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。

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