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大阪大学 2024年度 前期日程 · 英語

全学部 和文英訳
解答と解説

忘れたことと疑問が解決したことを明確に分け、心に戻ってくる「そもそも」の問いをもう一度考える営みこそ哲学だと述べる文章です。「〜からといって」を just because ... does not mean ... で処理すること、疑問がどのように広がるかを how 節で説明すること、「〜に他ならない」を this is exactly what it means to ... と what 節で受けることが中心です。時々といつの間にかの時間表現も落とせません。

難易度 ★★★★ 目安 20分 和文英訳 テーマ 忘れた根本の疑問を問い直す哲学
1

問題

全学部 次の文を英訳しなさい。

とはいえ,忘れたからといって,疑問が解決されたわけではありません。時々は,思い出したり、疑問が広がったりするのではないでしょうか。 実を言えば,いつの間にか忘れてしまった「そもそも」問題を,あらためて問い直すのが「哲学すること」に他なりません。

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この問題で見られている力

  • just because A does not mean B で誤った因果を否定できるか
  • 「疑問が解決された」を受け身で正しく置けるか
  • 時々思い出し、疑問が広がる二つの動きを残せるか
  • 「いつの間にか忘れた」を before we know it などで説明できるか
  • 「哲学することに他ならない」を what 節で同定できるか
2

文ごとの解説

第 1 文

とはいえ,忘れたからといって,疑問が解決されたわけではありません。

つまずきやすいところ
  • 「とはいえ」は直前の文脈を受ける譲歩なので Still / Even so で始めます
  • ここが山場です。「忘れたからといって」は because だけではなく just because S V does not mean ... の形で誤った結論を否定します
  • 「忘れた」の目的語は直前の疑問なので it で受けます
  • 「解決された」は the question has been answered / solved と受け身にします
  • 「わけではありません」は単純な not より does not mean that で論理を示します
発想の切り替え

日本語の「AからといってBではない」は、AがBの十分な理由にならないという関係です。二文に切るより Just because we have forgotten a question does not mean that ... と一つの型に入れると、その関係がそのまま伝わります。疑問は puzzle ではなく question とし、答えが出たという意味なら has been answered が自然です。現在まで未解決なので現在完了を使います。ここで we を補うのは、特定の一人ではなく誰にでも起こる思考の話だからです。また it は question を受け、忘れた人と答えられた疑問を取り違えないようにします。

訳例
標準

Even so, just because we have forgotten a question does not mean that it has been answered.

別解

Still, the fact that a question has slipped from our minds does not show that we have found what the answer is.

この文でやりやすい誤り

because だけで「からといって」を表す

減点 大
Because we forgot the question, it has not been answered.
Just because we forgot the question does not mean that it has been answered.

because では忘れたことが未解決の原因だという意味になります。原文は、忘れた事実から解決済みとは結論できない、と推論を否定しています。

question と problem を取り違える

減点 中
The problem has not been answered.
The question has not been answered.

answer と自然に結びつくのは question です。problem は通常 solve するものなので、この組み合わせでは語の選び方がずれています。

解決を現在形の受け身にする

減点 中
The question is not answered.
The question has not been answered.

今この瞬間に答えられていないという状態に聞こえます。過去から今まで解決に至っていないので、現在完了の has not been answered が合います。

この文の言いかえ
とはいえ
Even so,前の内容を認めて向きを変えます
Still,短く自然です
Therefore,順接なので論理が逆になります
〜だからといって…ではない
Just because A does not mean B誤った推論を否定する定番です
The fact that A does not show B少し説明的ですが安全です
Because A, not B文の骨格がなく関係も不明です
疑問が解決される
the question has been answeredanswer と question の組み合わせです
we have found what the answer is能動態に開いた形です
the question has been solved意味は通りますが answered のほうが自然です
第 2 文

時々は,思い出したり、疑問が広がったりするのではないでしょうか。

つまずきやすいところ
  • 「時々は」は Sometimes を文頭に置けば十分です
  • 「思い出す」の目的語は疑問なので remember it / it comes back to us とします
  • 「〜たり〜たり」は二つの例を並べる形で、必ず両方を訳します
  • 「疑問が広がる」は a question spreads より we begin to see how many more questions it raises と中身に開きます
  • 「ではないでしょうか」は perhaps / may で控えめにし、問いかけの調子も残せます
発想の切り替え

疑問そのものが空間的に広がるわけではありません。最初の問いから新しい問いが生まれ、考える範囲が広がるという意味です。そこで it may lead us to see how many more things we need to ask と説明します。「思い出す」と「広がる」は別々の可能性なので and で同時発生に固定せず、or を使うと「〜たり〜たり」に合います。may を両方に置くのは、いつも必ず起きるとは言わず「そういうこともあるのでは」と控えめに問いかけるためです。raises の主語 it は最初の疑問で、その疑問が別の問いを生むという因果も見えます。

訳例
標準

Sometimes we may remember it, or we may begin to see how many more questions it raises.

別解

At times the old question may come back to us and make us notice how far our doubt can grow and what else we need to ask.

この文でやりやすい誤り

remember の目的語を落とす

減点 小〜中
Sometimes we may remember.
Sometimes we may remember it.

remember は自動詞にもなりますが、ここでは何を思い出すのかが文の中心です。目的語を落とすと疑問とのつながりが見えません。

「疑問が広がる」を面積の spread で直訳する

減点 大
Sometimes the question spreads widely.
We may begin to see how many more questions it raises.

うわさや病気なら spread しますが、ここでは一つの疑問から新しい問いが生まれる話です。何が増えるかまで書く必要があります。

「〜たり〜たり」の一方を落とす

減点 中
Sometimes we may remember the question.
Sometimes we may remember it, or we may see how many more questions it raises.

思い出す可能性だけになり、そこから疑問がさらに広がるという後半が消えています。二つの動きを or で並べてください。

この文の言いかえ
疑問が広がる
see how many more questions it raises新しい問いが増える中身を示せます
our doubt grows短くまとめる形です
the question spreads物理的に広がるようで不自然です
第 3 文

実を言えば,いつの間にか忘れてしまった「そもそも」問題を,あらためて問い直すのが「哲学すること」に他なりません。

つまずきやすいところ
  • 「実を言えば」は In fact / To tell the truth で前二文をまとめます
  • 「いつの間にか」は without noticing と節にすると、気づかないままの忘却が見えます
  • 「そもそも」問題は what the most basic questions are と名詞句から節へ開きます
  • 「あらためて問い直す」は ask ... again / return to ... and ask again とします
  • ここが山場です。「〜に他なりません」は nothing other than の直訳に賭けず、this is exactly what it means to do philosophy と what 節で同定します
発想の切り替え

「そもそも」を first of all 一語にすると、単なる話の順番になります。ここでは普段は忘れている根本の問いなので、「最も基本の問いとは何か」と what the most basic questions are に開いてください。これなら日本語の「そもそも問題」という名詞の塊を、その中身を尋ねる節にできます。「哲学する」を philosophize と難しくせず、do philosophy で十分です。最後を what it means to do philosophy とすれば、「問い直すこと」と「哲学すること」が同じだという核心も明確になります。without noticing は、急に忘れたのではなく、忘れたことにも気づいていなかった時間の流れを残します。

訳例
標準

In fact, asking again what the most basic questions are after we have forgotten them without noticing is exactly what it means to do philosophy.

別解

To tell the truth, philosophy is nothing more than returning to the questions we somehow left behind and asking again why things are the way they are.

この文でやりやすい誤り

「いつの間にか」を suddenly にする

減点 中
We suddenly forgot the basic questions.
the basic questions we forgot before we knew it

suddenly は急な出来事です。「いつの間にか」は気づかないうちに時間が過ぎたことなので、before we knew it が合います。

「そもそも」を at first にする

減点 大
We ask the questions from at first again.
We ask again the basic questions about why things are as they are.

at first は時間的な「最初は」であり、根本から問うという「そもそも」の内容を表せません。さらに from at first という形も作りません。

ask を重ねて不自然な形にする

減点 小
We ask again once more what we forgot.
We ask again the questions we forgot.

again と once more が同じ意味を二重に表しています。どちらか一つで「あらためて」を示せます。

philosophy と philosopher を混同する

減点 大
Asking these questions is what it means to be philosophy.
Asking these questions is what it means to do philosophy.

philosophy は学問や営みで、人が「哲学そのものになる」わけではありません。be philosophy では行為との同定ができないため、人が行う営みとして do philosophy とします。

「そもそも問題」を問いの順番に変える

減点 大
We ask the forgotten questions first and then do philosophy.
Asking again what the most basic questions are is what it means to do philosophy.

first を使うと「忘れた疑問を最初に尋ね、その後で哲学をする」という手順になります。原文の「そもそも」は根本的な問いの性質を示し、問い直す行為そのものが哲学だと述べています。

この文の言いかえ
いつの間にか
before we knew it気づかないうちの変化を節で表せます
without noticing it自分が気づかなかった点を示します
suddenly急な変化になり意味が違います
そもそもの疑問
what the most basic questions are名詞の塊を「根本の問いとは何か」という what 節へ自然に開けます
basic questions about why things are as they are根本の内容を why 節まで使って具体的に説明できます
fundamental questions意味は通りますが、難しい形容詞を覚えるより basic questions で十分です
first-of-all problems日本語の語順を移した不自然な形で、根本的という意味にもなりません
あらためて問い直す
ask the question again平易で十分正確です
return to the questionもう一度向き合う流れが出ます
re-interrogate the issue硬く、この答案では覚える必要がありません
〜に他ならない
be exactly what it means to ...二つの内容を what 節で同定できます
be nothing more than ...「まさに〜だ」の意味で使えます
be not other thing英語の定型になっていません
3

模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×1 / what節 ×259語

Even so, just because we have forgotten a question does not mean that it has been answered. Sometimes we may remember it, or we may begin to see how many more questions it raises. In fact, asking again what the most basic questions are after we have forgotten them without noticing is exactly what it means to do philosophy.

第1文は just because A does not mean B で「忘却=解決」という誤った結びつきを否定しました。第2文の how many more questions it raises は、疑問が広がるとは新しい問いが増えることだと具体化しています。第3文では「そもそも問題」という名詞の塊を what the most basic questions are に開き、さらに what it means to do philosophy で問い直す行為と哲学を同定しました。how節1個、what節2個の合計3個を実文で数えています。without noticing によって「いつの間にか」も残し、難しい哲学用語なしで、忘却、再浮上、問い直しという原文の流れを保っています。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×1 / what節 ×273語

Still, the fact that a question has slipped from our minds does not show that we have found what the answer is. At times the old question may come back to us and make us notice how far our doubt can grow and what else we need to ask. To tell the truth, philosophy means returning to the questions we somehow left behind and asking again why things are the way they are.

こちらは「疑問が解決された」を we have found what the answer is と能動態へ開きました。また「そもそも問題」を why things are the way they are と具体的に説明しています。標準解が「根本の問いとは何か」と問いの種類を開くのに対し、こちらは「なぜ物事は今のようになっているのか」と問いの一例まで示す版です。原文は具体的な問いを指定していないので、断定的に狭めず、根本を問う代表例として置いています。slip from our minds が出なければ simply forget でかまいません。疑問が戻るだけでなく what else we need to ask まで進めると、「疑問が広がる」が別の問いを生むことだと伝わります。抽象語を探すより、誰が何を忘れ、何を再び問うのかを順番に書くほうが、内容を落とさない答案になります。

6

他の問題にも使える形

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Just because A does not mean B最重要

誤った因果を否定する

Aという事実だけではBを結論できない、と論理の飛躍を正せます。評論文でも自由英作文でも使いやすい形です。

Just because we forgot a question does not mean it was answered.
Just because a plan is new does not mean it is better.
have been + 過去分詞よく使う

過去から今までの結果を受け身で表す

誰がしたかより、今どの状態にあるかが大切な文で使います。

The question has not been answered.
The old bridge has been repaired.
see how + 形容詞・副詞 S V最重要

変化の程度を節で見せる

「広がり」「深さ」のような名詞を、実際にどの程度かという内容へ開けます。形容詞や副詞を how の直後に置くと、変化そのものだけでなく、その大きさや速さへ焦点を当てられます。

see how far our doubt can grow
see how quickly the town has changed
notice how much the children have learned
what else S need to Vよく使う

ほかに何をすべきかを書く

追加の疑問や課題を漠然と things で済ませず、what 節にできます。

what else we need to ask
what else the team needs to change
before S knew itよく使う

気づかないうちの変化

「いつの間にか」を突然の出来事にせず、本人が気づく前に進んだこととして書けます。

We forgot it before we knew it.
The child grew tall before we knew it.
A is exactly what it means to B最重要

AこそBだと同定する

「AがBに他ならない」「AこそBの意味だ」という抽象的な結論を平易に書けます。Aには具体的な行動を置くと、抽象語Bの内容を説明する文になり、nothing other than の硬い直訳を避けられます。

Asking again is exactly what it means to do philosophy.
Helping each other is what it means to be a team.
Listening carefully is what it means to respect another person.
7

この問題の語彙

表現意味ひとこと
question疑問、問い答える対象なので answer a question と結びつきます
answer答える、答え動詞でも名詞でも使えます。受け身は be answered です
raise提起する、生じさせるraise a question で「疑問を生じさせる」です。rise とは区別します
doubt疑い、疑問不可算で一般的な疑いを表せます。具体的な問いなら question が安全です
basic根本的な、基本的なfirst では表しにくい「そもそも」の内容に使えます
somehowいつの間にか、どういうわけか方法が不明という響きもあるので、時間を強調するなら before we knew it が明確です
philosophy哲学営みは do philosophy、人は philosopher です
mean意味するwhat it means to V の語順で「Vするとはどういうことか」を表します
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出題の傾向

阪大の全学部向け和文英訳は、2022年の宇宙の条件、2023年の人類の共通性、2024年の根本的な疑問、2025年の別問題へと、身近な言葉から抽象的な考察へ進む素材が続きます。一方、同じ年でも文学部はフィクション、文学部以外は報道を扱います。学部別に題材は変わっても、日本語の名詞表現を節へ開き、対比や因果を補って論理を見える形にする点は共通しています。

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