博士号取得者数の推移を示したグラフを読み、日本のおかれている状況を英語で述べたうえで、その要因か改善案のどちらかを論じます。阪大の全学部でこの形式が出たのは珍しく、いつもの意見論述とは進め方が変わります。山場は二つあります。ひとつは、6本ある折れ線から書く一組を選ぶことで、標準解では日本の横ばいと中国の急増を while で対比します。「日本以外はすべて増加」とまとめると、ほぼ横ばいのドイツを取りこぼして図と食い違います。もうひとつは、設問が「要因、もしくは、改善案」と選ばせている点で、両方に手を出すと80語ではどちらも深まりません。標準解では要因を一つだけ選び、企業が博士の価値を説明していないという筋で最後までそろえます。
以下のグラフから読み取れる日本のおかれている状況について英語で述べなさい。その上で,その状況を引き起こしていると思われる要因,もしくは,その状況を改善するための案(逆に,積極的な施策は必要ないと考える場合,その理由)についても全て英語で論じなさい。
全体の分量は80語程度とします。
折れ線グラフ。表題は「博士号取得者数推移」、単位は人。横軸は2000年から2014年まで(2年刻みの目盛り)、縦軸は0から80,000まで10,000刻み。系列は6本で、右端に2014年時点の値が「米国:6.8万人」「中国:5.4万人」「ドイツ:2.8万人」「日本:1.5万人」「フランス:1.4万人」「韓国:1.3万人」と添えてあります。米国は約45,000から約67,000へ増加。中国は約11,000から約53,000へ急増し、2002年ごろ日本を追い抜きました。ドイツは25,000前後でほぼ横ばい。日本は15,000前後で横ばいから微減。フランスと韓国は10,000前後で推移し、韓国の2010年、フランスの2001・2010・2011年はデータが欠けています。
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The graph shows how the number of people who earned doctorates changed from 2000 to 2014. In Japan it stayed at about 15,000, while in China it rose to 54,000.
日本のおかれている状況を、一言で言い切る
Japan is clearly falling behind.
要因か改善案のどちらかを選び、中身を書く
One reason is that many students worry about what happens after they finish a doctorate, because companies here rarely explain how such training helps a career.
条件文で提案に変え、筋を閉じる
If firms showed what skills they value, more students would choose to continue their studies after graduation.
第1段:グラフが示す事実を、日本と中国の対比で書く
グラフ問題で最初につまずくのは、何を書けばいいか決まらないことです。折れ線が6本もあると、全部に触れなければいけない気がしてきます。ですが80語しかありません。ここで見られているのは、たくさん読み取る力ではなく、いちばん大事な一点を選んで英語にする力です。まず6本が何なのかを確かめてください。右端に国名と2014年の値が添えてあり、上から米国6.8万人、中国5.4万人、ドイツ2.8万人、日本1.5万人、フランス1.4万人、韓国1.3万人 です。ここを読み飛ばして「日本以外はすべて増えている」と決めつけると、2000年から2.8万人前後でほとんど動いていないドイツを取りこぼし、図と食い違う答案になります。選ぶべき一点は、日本の横ばいと中国の急増の対比です。中国は約1.1万人から約5.4万人へ伸び、2002年ごろに日本を追い抜いています。差がいちばん大きく、しかも図を見なければ書けない事実なので、ここを書けば読み取りができていることが伝わります。書き方も決まっています。日本を述べた節と中国を述べた節を while でつなぐだけです。while は「〜する一方で」という対比を作れるので、二つの動きを一文に収められます。「横ばい」という日本語を英語の一語で探そうとすると手が止まりますが、stayed at about 15,000 と数値ごと書けば済みます。期間を入れ忘れる人が多いのですが、from 2000 to 2014 が無いと、いつの話か分からない文になってしまいます。グラフに書いてある年は必ず入れてください。
The graph shows how the number of people who earned doctorates changed from 2000 to 2014. In Japan it stayed at about 15,000, while in China it rose to 54,000.
According to the graph, Japan awarded about 15,000 doctorates a year between 2000 and 2014, while the number in China rose from about 11,000 to 54,000.
図の日本は1.5万人前後、中国は2014年で5.4万人です。80,000 は縦軸のいちばん上の目盛りで、どの国もそこには届いていません。図から読めない数字を書くと、答案全体が図を見ずに書いたものとして扱われます。この一項目では数値だけを直しています。
ドイツは2000年からずっと2.5万〜2.8万人のあたりにあり、「他の5か国はいずれも増加」とは言えません。図に書いていないことを足すと、読み取りができていないと判断されます。この一項目では対比の相手だけを直しています。
stagnation は名詞なので、be動詞の後に置くと「数=停滞」という意味の通らない文になります。難しい語を思い出せても、品詞が合わなければ減点されます。この一項目では語の選び方だけを直しています。
グラフは2000年から2014年までの記録なので、過去の推移として書く必要があります。現在形にすると「今もそうだ」という別の主張になり、グラフから読み取れる範囲を超えてしまいます。この一項目では時制と期間だけを直しています。
第2段:日本のおかれている状況を、一言で言い切る
設問は「グラフから読み取れる日本のおかれている状況」を問っています。第1段で書いたのは数の動きという事実で、まだ「状況」ではありません。ここで一段上げて、その事実が日本にとって何を意味するのかを言い切ります。とはいえ、長く書く必要はありません。むしろ短いほうがいいのです。80語のうち第1段でおよそ30語を使っているので、残りを要因と提案に回さないと、後半が薄くなります。使うのは falling behind です。「後れを取っている」という意味で、比較の相手が文脈から明らかなときは behind だけで止められます。clearly を足すと、グラフを見れば明らかだという書き手の判断が入り、事実の記述との違いがはっきりします。ここで理由を書き始めてしまう人がいますが、まだです。段の役割を一つに保つと、読み手は筋を追いやすくなります。
Japan is clearly falling behind.
This gap is a serious problem for research.
第1段で述べた事実の言い換えにとどまり、「日本のおかれている状況」という問いに答えていません。同じことを二度書くと、その分だけ後半の語数が減ります。この一項目では内容の重複だけを直しています。
behind は前置詞なので、後ろに比較の than は続きません。比べる相手を出すなら behind the other countries とします。ここでは前段で相手が示されているので、behind で止めるのが自然です。この一項目では than の扱いだけを直しています。
理由を三つ並べたことで、どれも説明されないまま次へ進むことになります。設問は要因を「論じる」ことを求めているので、一つ選んで中身を書くほうが評価されます。この一項目では詰め込みだけを直しています。
第3段:要因か改善案のどちらかを選び、中身を書く
設問をもう一度読んでください。「要因,もしくは,改善案」とあります。もしくは、です。両方書く必要はありませんし、80語では両方は書けません。ここで欲張ると、要因も提案も一行ずつになって、どちらも論じたことにならなくなります。標準解では要因を選びました。選んだら、その中身を最後まで書きます。ありがちなのは「学生が博士に行きたがらないから」で止めてしまうことです。これは言い換えただけで、なぜ行きたがらないかが説明されていません。そこで how と what の出番です。学生が心配しているのは「博士を終えたあとに何が起きるか」なので、what happens after they finish a doctorate と節に開きます。「その先が見えない」という日本語を名詞で訳そうとすると詰まりますが、節にすれば知っている語だけで書けます。さらにその不安の出どころを、企業が how such training helps a career を説明していないという形で示します。こうすると、学生個人の意欲の話ではなく、情報が伝わっていないという仕組みの話になり、次の段の提案に自然につながります。
One reason is that many students worry about what happens after they finish a doctorate, because companies here rarely explain how such training helps a career.
To improve the situation, universities could show students what careers a doctorate opens, and companies could explain how research skills are used at work.
設問は要因か改善案のどちらかを求めているのに、両方を並べたため、どれも説明されないまま終わっています。中身を書くには一方に絞る必要があります。この一項目では絞り込みだけを直しています。
「取得者が増えない理由は、取りたい人が少ないから」と、同じことを言い換えているだけで、なぜ少ないのかが書かれていません。理由として機能していないため、論じたことになりません。この一項目では中身の欠落だけを直しています。
what 節の中は平叙文の語順なので、does を入れる必要はありません。間接疑問での語順の誤りは、この形式でも和文英訳でも繰り返し出る失点です。この一項目では語順だけを直しています。
グラフから読み取れないことを断定しており、根拠のない決めつけになっています。設問は状況を引き起こしている要因を問うているので、確かめられる仕組みの話にするほうが説得力があります。この一項目では根拠の無さだけを直しています。
第4段:条件文で提案に変え、筋を閉じる
最後の段の役割は、前の段で示した要因を受けて、そこから見える出口を一文で示すことです。ここで新しい話題を出すと、80語の中に二つ目の筋ができてしまい、まとまりが崩れます。使うのは仮定法の形です。If firms showed ..., more students would choose ... と書けば、「今はそうなっていないが、そうなればこう変わる」という関係をはっきり示せます。仮定法と聞くと身構えるかもしれませんが、If の中を過去形に、後ろを would にするだけです。この問題では、前段で「企業が説明していない」と書いたので、その裏返しとして「もし企業が what skills they value を示せば」と続けるのが自然です。前段の what と how をここでもう一度使うことで、答案全体が同じ語彙で編まれ、読み手には一本の筋に見えます。after graduation を添えると、いつの話かがはっきりして文が締まります。
If firms showed what skills they value, more students would choose to continue their studies after graduation.
If young people understood what they would gain, more of them would decide to study further after finishing their master's degree.
If 節を過去形にしたのに帰結節が現在形のままで、時制の対応が崩れています。仮定の話なのか事実なのかが読み取れなくなります。この一項目では帰結節の形だけを直しています。
前段で述べた企業の説明不足と関係のない話が最後に出てきたため、答案に筋が二つできてしまいます。80語では一つの筋を通しきるほうが評価されます。この一項目では話題の追加だけを直しています。
The graph shows how the number of people who earned doctorates changed from 2000 to 2014. In Japan it stayed at about 15,000, while in China it rose to 54,000. Japan is clearly falling behind. One reason is that many students worry about what happens after they finish a doctorate, because companies here rarely explain how such training helps a career. If firms showed what skills they value, more students would choose to continue their studies after graduation.
標準解は全78語で、「80語程度」を満たしています。グラフの事実 → 日本の状況 → 要因 → 提案、という順に並べ、要因だけを選んで改善案には踏み込んでいません。図から読める 15,000 と 54,000 を引いているので、図を見て書いたことが一読で伝わります。how 節・what 節は shows how / what happens / how such training helps / what skills they value の4か所で、いずれも難しい名詞を探さずに中身を具体化するために使っています。
According to the graph, Japan awarded about 15,000 doctorates a year between 2000 and 2014, while the number in China rose from about 11,000 to 54,000. This gap is a serious problem for research. To improve the situation, universities could show students what careers a doctorate opens, and companies could explain how research skills are used at work. If young people understood what they would gain, more of them would decide to study further after finishing their master's degree.
改善案で書いた解は全79語です。設問は「要因、もしくは、改善案」と選ばせているので、要因が出てこないときはこちらへ切り替えて構いません(設問の括弧書きのとおり、積極的な施策は要らないという立場でも、理由を書けば答案として成立します)。書き出しを According to the graph にして、動詞を awarded と rose に変えていますが、対比の骨格は標準解と同じです。うまい一語が出てこなくても、節に開けば書き切れます。

設問は状況を述べたうえで「要因、もしくは、改善案」を論じることまで求めています。図の読み取りを増やしても、条件を半分しか満たしていません。語数の半分以上を事実の記述に使ってしまうと、後半を書く余地も残りません。この一項目では答案の構成だけを直しています。
図の6系列は 米国・中国・ドイツ・日本・フランス・韓国 で、イギリスは入っていません。右端の国名を確かめずに「主要国」の思い込みで書くと、実在しない系列に触れることになります。この一項目では国名だけを直しています。
設問は「要因、もしくは、改善案」と選ばせています。両方を並べると、80語ではどちらも一行ずつで終わり、論じたことになりません。この一項目では欲張りだけを直しています。

グラフの対比を一文にする型
グラフ問題で最初に書くべきなのは、いちばん大きな対比です。while は「〜する一方で」を作れるので、二つの動きを一文に収められます。数値をそのまま入れておくと、図を見て書いたことが読み手に伝わり、傾向の説明も一度で済みます。
「その先」を節に開く型
「将来の不透明さ」「その先が見えないこと」といった名詞のかたまりは、英語の名詞で受けようとすると詰まります。what 節に開けば、知っている語だけで中身まで書けます。
「役に立つ」を関係のまま示す型
「有用性」を名詞で書こうとすると of が重なって読みにくくなります。how 節にすると、誰にとってどう役立つのかが残ります。理由や提案を書く場面で何度も使えます。
what+名詞+S V で中身を指す型
what のあとに名詞を置くと「どの〜を」という意味になります。評価基準や求める条件を、抽象名詞を使わずに書けます。
提案を「そうすればこうなる」に変える型
改善案を書くときに、命令口調にせずに提案できます。If の中を過去形に、後ろを would にするだけです。現状はそうなっていない、という含みも同時に出せます。
要因を一つに絞って示す型
One reason と書くことで「ほかにもあるが、ここでは一つ挙げる」と示せます。語数が限られた答案で、絞ったことを読み手に伝えられる便利な出だしです。
出典を示して書き出す型
The graph shows that ... と並ぶ書き出しです。後ろを独立した文にできるので、一文が長くなりすぎるときに使い分けられます。by the graph とは言わない点に注意してください。
| 表現 | 意味 | ひとこと |
|---|---|---|
| doctorate | 博士号 | earn a doctorate / get a doctorate の形で使います。doctor は「医者」とも読めるので、学位の話ではこちらが安全です。 |
| steadily | 着実に、一貫して | rose steadily で「一貫して増えた」。グラフ記述の定番の副詞です。 |
| fall behind | 後れを取る | 比べる相手が文脈から明らかなら behind で止められます。than は続きません。 |
| gap | 差、隔たり | 前段で述べた対比をひと言で受け直せます。this gap の形で使うと指すものがはっきりします。 |
| rarely | めったに〜しない | それ自体が否定の意味を持つので、not と重ねないでください。動詞の前に置きます。 |
| career | 職業人生、経歴 | 日本語の「キャリア」より広く、働く人生全体を指します。help a career で「仕事の役に立つ」。 |
| value | 〜を評価する、重んじる | 名詞の「価値」だけでなく動詞でも使えます。what skills they value の形が便利です。 |
| graduation | 卒業 | after graduation で「卒業後に」。冠詞を付けずに使うのが普通です。 |
| further | さらに先へ | study further で「進学して学び続ける」。more と重ねると冗長になります。 |
| awarded | (学位などを)授与した | award A B / award B to A。大学や国を主語にして「学位を出した」と書けます。 |
阪大の全学部の条件英作文は、2022年のAIに代わってほしくない仕事、2023年の効率と速度、2024年の理想の学び、2026年のポスト真実と、社会的な問いに具体例を置いて約80語で論じる形が続いています。そのなかで2025年だけがグラフ読み取り型で、翌2026年には論述型に戻りました。形式が変わっても、求められているのは「一つの筋を80語で通す力」で変わりません。グラフが出ても身構えず、読み取った事実を一文で述べてから、いつもどおり理由か提案へ進めば対応できます。
解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。
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添削そのものは Boost アプリのほうが得意です。AI には「なぜこの訳になるの?」のような、解説の追加質問を投げるのがおすすめです。