京都大学のロゴ 第Ⅲ問(2) 和文英訳 京都大学 1990
京都大学 1990年度 前期日程 · 英語

第Ⅲ問(2) 和文英訳
解答と解説

七つの短文が、呼びかけ、出発点、判断の延期、判断する人の選択、今こそ語る時だという決意へ進みます。個々の文は短くても、let us の呼びかけと I must の自己決定を混同しないことが大切です。「自分について何か」「正しいか正しくないか」「語ること」を what / whether / how の節に開き、同じ speak や talk を機械的に繰り返さず役割を分けると自然になります。

難易度 ★★★★★ 目安 20分 和文英訳 テーマ 判断より先に語り始めること
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問題

第Ⅲ問(2) 次の文を英訳しなさい。

とにかく、何か喋ろう。自分について何か喋ることから全てが始まる。それがまず第一歩なのだ。正しいか正しくないかは、あとでまた判断すればいい。僕自身が判断してもいいし、別の誰かが判断してもいい。いずれにせよ、今は語るべき時なのだ。そして僕も語ることを覚えなくてはならない。

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この問題で見られている力

  • 「とにかく」を At any rate と議論を前へ進める語として置けるか
  • 「何か喋ろう」を Let us say something と呼びかけにできるか
  • 「自分について何か」を what we ourselves are like と節に開けるか
  • 「第一歩」を how we take the first step と前文の方法に結べるか
  • 正しいか否かを whether what we said was right or wrong と組めるか
  • 「今は語るべき時」を now is the time when ... と判断の時期に対比できるか
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文ごとの解説

第 1 文

とにかく、何か喋ろう。

つまずきやすいところ
  • 「とにかく」は At any rate と迷いを打ち切る働きを示します
  • 「〜しよう」は Let us ... と自分を含む呼びかけにします
  • 「何か」は something を目的語に置きます
  • speak something ではなく say something と語法を選びます
  • 短文なので強い難語を足さず、原文の勢いを保ちます
発想の切り替え

ここは内容より、黙った状態から言葉を出す決意が大切です。At any rate でそれまでの迷いをいったん切り、Let us say something と自分を含む呼びかけにします。say は内容を目的語に取れるので something とよく合います。speak は話す行為を表し、通常 something を直接目的語にはしません。短く言い切ることで次の「すべてが始まる」へ勢いがつきます。

訳例
標準

At any rate, let us say something.

別解

Whatever else may be uncertain, we should begin by saying something.

この文でやりやすい誤り

何か喋るを speak something とする

減点 大
Let us speak something.
Let us say something.

speak は話す行為を表し、内容の something を普通は直接目的語に取りません。何かを言うなら say を使います。

〜しようを未来の will にする

減点 中
We will say something at any rate.
At any rate, let us say something.

will はこれからそうする予測や意思の表明です。原文は相手と自分への呼びかけなので、一緒に始めようという let us が合います。

この文の言いかえ
とにかく
At any rate迷いを切って話を前へ進める基本表現です
In any case複数の可能性を受けるときにも自然です
Anyway会話的です。答案では使えますが At any rate のほうが落ち着いています
何か喋ろう
Let us say something内容を表す something と say がよく合います
We should begin by saying something呼びかけを提案として説明できます
Let us speak somethingspeak は something を直接目的語にしないので使いません
第 2 文

自分について何か喋ることから全てが始まる。

つまずきやすいところ
  • 「全てが始まる」を Everything begins と中心に置きます
  • 「〜することから」は when we talk ... と出来事に開けます
  • 「自分について」は about ourselves と再帰代名詞を使います
  • ここが山場です。「自分とはどんな人か」を what we ourselves are like と what 節で示します
  • something about ourselves だけでもよいですが、節にすると内容が明確です
発想の切り替え

日本語の長い主語「自分について何か喋ること」をそのまま動名詞にしても書けますが、Everything begins を先に置き、いつ始まるかを when で続けると読みやすくなります。「自分について何か」は what we ourselves are like と節に開けば、名前のような表面的な情報ではなく、自分がどんな人かを語るという意味が見えます。ourselves は主語 we と同じ人を指します。

訳例
標準

Everything begins when we talk about what we ourselves are like.

別解

The whole process starts when we put into words something about who we are and how we feel.

この文でやりやすい誤り

自分についてを about myself と主語に合わせない

減点 大
We should talk about myself.
We should talk about ourselves.

主語 we が自分たちについて話すなら再帰代名詞は ourselves です。myself では話し手一人だけを指し、主語との対応も崩れます。

全てが始まるを everything starts it とする

減点 大
Talking about ourselves starts everything it.
Talking about ourselves starts everything.

everything が目的語なら後ろの it は同じ内容を重ねた余分な目的語です。英語では目的語を二つ並べられません。

この文の言いかえ
自分について何か
what we ourselves are likeどんな人かを what 節へ開けます
something about ourselves短くまとめる自然な別解です
something of ourselves話題を表す前置詞は about なので使いません
全てが始まる
Everything begins when ...始まるきっかけを when 節で続けられます
The whole process starts with ...後の歩み全体を process として説明できます
All is begin受け身の形にならず文法的に成立しないので使いません
第 3 文

それがまず第一歩なのだ。

つまずきやすいところ
  • 「それ」は前文の語り始める行為全体を指します
  • 「第一歩」は the first step と定冠詞を付けます
  • 「まず」は first ではなく、最初の段階だという名詞に含められます
  • how we take the first step と前文の方法に結べます
  • 直訳の It is first one step は避けます
発想の切り替え

「それ」を It だけで受けると何を指すか少し弱くなります。That is how we take the first step とすれば、語り始めることが第一歩を踏み出す方法だと明確です。how は手段をまとめて受けるので、前文全体とのつながりも出ます。first step は順序上ただ一つの最初の段階なので the を付けます。大げさな表現にせず、短く前文を受けてください。

訳例
標準

That is how we take the first step.

別解

Speaking about ourselves is the first step from which everything else can follow.

この文でやりやすい誤り

第一歩の冠詞を落とす

減点 中
That is first step.
That is the first step.

順序の中で一つに決まる最初の段階なので the first step と定冠詞が必要です。

この文の言いかえ
第一歩
the first step順序上特定されるので the を付けます
how we begin最初の行動を how 節で説明できます
a first step複数ある最初の一歩の一つという特殊な文脈でないため使いません
第 4 文

正しいか正しくないかは、あとでまた判断すればいい。

つまずきやすいところ
  • 「正しいか正しくないか」は whether ... or ... で二択にします
  • 何が正しいかを what we said と補います
  • 「あとで」を later とし、今との対比を作ります
  • 「判断すればいい」は can decide と許容を表せます
  • 時制は語った後の判断なので what we said と過去形にします
発想の切り替え

原文は真偽より発話を先に置いています。We can decide later を中心にして、判断の内容を whether what we said was right or wrong と後ろへ置きます。what we said はこれから語った内容を、後で振り返る時点から見た過去です。is right とすると判断時点の引用のようにも読めますが、was とすれば時間の順が明確になります。「正しさ」という名詞を探す必要はありません。

訳例
標準

We can decide later whether what we said was right or wrong.

別解

There will be time later to ask whether the things we have said are right or not.

この文でやりやすい誤り

正しいか否かを if or not の途中に置く

減点 大
We can decide if or not what we said was right later.
We can decide later whether what we said was right or wrong.

if or not を先に固める語順は使えません。二択の内容を whether の後に置き、or not または or wrong を最後に続けます。

あとでの判断を過去形にする

減点 中
We decided later whether it was right or wrong.
We can decide later whether it was right or wrong.

過去にすでに判断した話になり、今は語って判断は将来に回すという時間関係が消えます。can decide later とします。

この文の言いかえ
正しいか正しくないか
whether it is right or wrong二択を最も明確に示せます
whether it is right or notwrong を繰り返さない自然な形です
if or not it is right語順が成立しないので使いません
第 5 文

僕自身が判断してもいいし、別の誰かが判断してもいい。

つまずきやすいところ
  • 「僕自身」は I may decide for myself と強調できます
  • 「〜してもいい」は may で選択の余地を表します
  • 二人の判断者を or で並べます
  • someone else は別の誰かという自然な形です
  • judge me とすると人格の評価になるため decide を続けます
発想の切り替え

ここで問題なのは判断の中身ではなく、誰が判断してもよいという開かれた態度です。前文の decide を受けて、I may decide for myself, or someone else may decide と並べます。judge は人を裁く響きが出やすいため、この文では正誤を決める decide が安全です。myself は I を強調し、someone else と明確に対照します。

訳例
標準

I may make that judgment myself, or someone else may do so.

別解

I can make that judgment myself, or I can leave it to another person.

この文でやりやすい誤り

判断の対象を自分の人物評価に変える

減点 中
I may judge myself, or someone else may judge me.
I may make that judgment myself, or someone else may do so.

judge myself / judge me では、僕という人間の性格や行動全体を評価する意味になります。原文で判断するのは、先に語った内容が正しいかどうかです。判断者と判断対象を分けてください。

別の誰かを another someone とする

減点 中
Another someone may decide.
Someone else may decide.

不特定の別人は someone else の語順です。another は通常、単数名詞の前に置きます。

この文の言いかえ
別の誰か
someone else不特定の別人を表す基本の語順です
another personperson を明示する自然な別解です
another someone語順が不自然なので使いません
第 6 文

いずれにせよ、今は語るべき時なのだ。

つまずきやすいところ
  • 「いずれにせよ」は In any case と二つの選択を受けます
  • 「今は」を now is ... と文頭近くで強調します
  • 「語るべき時」は the time when we should speak と節に開きます
  • 判断する時と語る時の対比を保ちます
  • It is time to speak でもよいですが、when 節なら時の役割が見えます
発想の切り替え

前文で判断者が二通り示されましたが、どちらでも今することは同じです。そのため In any case で選択を受けます。now is the time when we should speak とすれば、判断は later、発話は now という対照がはっきりします。should は外からの命令ではなく、今こそそうするのがよいという筆者の決意を表します。

訳例
標準

In any case, now is the time when we should speak.

別解

Whoever makes the judgment, what matters now is that I begin to speak.

この文でやりやすい誤り

語るべき時を time of speaking と固い名詞にする

減点 中
Now is the time of speaking.
Now is the time when we should speak.

the time of speaking は発話時間という予定表の項目のように聞こえます。原文は今こそ語るのがよいという判断なので、should を含む節にします。

第 7 文

そして僕も語ることを覚えなくてはならない。

つまずきやすいところ
  • 「僕も」は I too と、ほかの人だけでなく自分もという含みを残します
  • 「覚えなくてはならない」は must learn how to ... と学ぶ必要を示します
  • 「語ること」は単に speak ではなく、考えや気持ちを言葉にすることです
  • what I think and feel と語る内容を what 節で補います
  • learn to speak だけでは幼児の言語習得にも聞こえるので説明を足します
発想の切り替え

最後の「語る」は発音や言語を覚えることではなく、自分の内面を言葉にする力を身につけることです。そこで learn how to put what I think and feel into words と二つの節に開きます。put ... into words は、ぼんやりした考えや感情を言語化するという意味です。I too は、語る必要が他人だけでなく筆者自身にもあるという自己への向き直りを表します。

訳例
標準

I too must learn how to put what I think and feel into words.

別解

And I myself must learn how I can express what is inside me in words.

この文でやりやすい誤り

語ることを覚えるを幼児の発話にする

減点 大
I must learn to speak too.
I too must learn how to put what I think into words.

learn to speak は幼児が話せるようになることや外国語の会話習得に聞こえます。原文は自分の考えを言葉にする力を身につけることです。

この文の言いかえ
語ることを覚える
learn how to put what I think into words語る中身と方法を二つの節で示せます
learn how to express what is inside me内面を表現することだと説明できます
learn to speak言語を話せるようになる意味に狭まるので使いません
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模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×2 / what節 ×375語

At any rate, let us say something. Everything begins when we talk about what we ourselves are like. That is how we take the first step. We can decide later whether what we said was right or wrong. I may make that judgment myself, or someone else may do so. In any case, now is the time when we should speak. I too must learn how to put what I think and feel into words.

実測は how 2、what 3です。what we ourselves are like が自分についての内容、how we take the first step が語り始める働き、what we said が後で判断する対象、how to put what I think and feel into words が身につけるべき語り方を担当します。let us から we、そして I へ主語が移る流れも原文どおりです。判断は later、発話は now と時を対比すると、短文の連続が一つの決意としてまとまります。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×2 / what節 ×299語

Whatever else may be uncertain, we should begin by saying something. The whole process starts when we put into words something about who we are and how we feel. Speaking about ourselves is the first step from which everything else can follow. There will be time later to ask whether the things we have said are right or not. I can make that judgment myself, or leave it to another person. Whoever makes the judgment, what matters now is that I begin to speak. And I myself must learn how I can express what is inside me in words.

こちらは「すべて」を the whole process とし、その後の歩み全体が始まると説明しました。「第一歩」は everything else can follow を足して、なぜ最初の一歩なのかを示しています。最後は learn to speak ではなく express what is inside me とし、自分について語る力だと明確にしました。七文を無理に一つへまとめず、同じ主語と時を持つ短文を保てば、原文のためらいと決意のリズムも伝わります。

6

他の問題にも使える形

学習のコツを紹介する Boost のキャラクター Boo
Let us V最重要

一緒に〜しよう

話し手を含む相手への呼びかけや提案を表せます。

何か言おう → Let us say something.
問題を別の角度から見よう → Let us look at the problem from another angle.
Everything begins when S Vよく使う

〜するとすべてが始まる

出発点となる行動を when 節で具体的に説明できます。

自分について語ると全てが始まる → Everything begins when we talk about ourselves.
互いの話を聞くと変化が始まる → Everything begins when we listen to each other.
That is how S V最重要

それが〜する方法だ

前の文全体を方法として受け、how 節で次の結果へ結べます。

それが第一歩を踏み出す方法だ → That is how we take the first step.
それが信頼を築く方法だ → That is how we build trust.
decide whether A or B最重要

AかBか判断する

判断の対象となる二つの可能性を whether で並べます。

正しいか間違いか判断する → decide whether it is right or wrong
今行くか待つか決める → decide whether to go now or wait
now is the time when S should Vよく使う

今こそ〜すべき時だ

行動に適した時期を強調し、後回しにする事柄と対比できます。

今は語るべき時だ → Now is the time when we should speak.
今こそ計画を変えるべき時だ → Now is the time when we should change the plan.
learn how to put what S think into words最重要

考えを言葉にする方法を学ぶ

抽象的な「語る力」を、方法と内容を含む how / what 節に開けます。

考えを言葉にすることを覚える → learn how to put what I think into words
感じたことを文章にする方法を学ぶ → learn how to put what I felt into writing
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この問題の語彙

表現意味ひとこと
at any rateとにかく迷いや前の議論を切って次へ進むときに使います
say something何かを言う内容を目的語に取るときは say が基本です
about ourselves私たち自身について主語 we に対応する再帰代名詞は ourselves です
the first step第一歩順序上特定されるので the を付けます
whether〜かどうかor not や or wrong と二択を続けられます
for myself自分自身で、自分のためにby myself は助けなしで一人でという意味です
someone else別の誰かelse は someone の後ろに置きます
put into words言葉にする考えや感情を目的語として put と into words の間に置きます
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出題の傾向

1990年前期第(1)問は物質的な豊かさの裏にある心の問題を論じ、この第(2)問は心の中身をまず言葉にする必要を語ります。1991年前期第(2)問でも、理解できなかったものが分かる内面の変化を具体的な動作へ直します。京大では短い日本語ほど、指示語が何を受け、誰がどの時点で判断するのかを英語で補う力が問われます。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

この問題を解いて添削してもらう

呼びかけ、判断の延期、今語る決意を、what / whether / how 節で組み直してみましょう。Boost アプリなら短文同士のつながりも確認できます。

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