京都大学のロゴ 第Ⅲ問(1) 和文英訳 京都大学 1996
京都大学 1996年度 後期日程 · 英語

第Ⅲ問(1) 和文英訳
解答と解説

百科事典の拾い読みを、広い図書館での気ままな散歩に重ねた文章です。第1文では「AするのはBすることに似ている」という骨格を先に作り、二つの長い動名詞句をそろえることが大切です。第2文では「本が目にとまる→手がのびる」と「項目を偶然見つける→読みふける」の対応を just as で見せます。「ものだ」は義務ではなく、人がついそうしてしまう傾向として often で受けると自然です。

難易度 ★★★★★ 目安 18分 和文英訳 テーマ 目的のない読書が生む発見
1

問題

第Ⅲ問(1) 次の文を英訳しなさい。

特に目的もなく百科事典の項目をあれこれと眺めるのは,ちょうど広大な図書館の書架の中をあてもなくうろつくことに似ている。おもしろそうな題の本が目にとまってふと手がのびるように,われわれは偶然に見つけた事典の記述について読みふけってしまうものだ。

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この問題で見られている力

  • 「特に目的もなく」を without any special purpose と動作に正しくかけられるか
  • 「〜に似ている」を be much like doing の形で二つの行為を比べられるか
  • 書架そのものではなく書架の間を歩く情景を among the shelves で表せるか
  • 「目にとまる」「ふと手がのびる」という無意識の連続を英語の主語と動詞で補えるか
  • 「偶然に見つけた」と「読みふける」を happen to find / become lost in reading で結べるか
2

文ごとの解説

第 1 文

特に目的もなく百科事典の項目をあれこれと眺めるのは,ちょうど広大な図書館の書架の中をあてもなくうろつくことに似ている。

つまずきやすいところ
  • 文の中心は「眺めるのは、うろつくことに似ている」です。長い修飾を外して、この比較を最初に見抜いてください
  • 「特に目的もなく」と「あてもなく」は似ていますが、前者は without any special purpose、後者は without a destination と分けると単調になりません
  • 「百科事典の項目」は items in an encyclopedia が安全です。項目を意味する article も使えますが、新聞記事の意味に引っぱられない注意が要ります
  • ここが山場です。日本語の名詞的な「眺めるの」を looking through various entries と行為にし、比較される両側を doing の形でそろえます
  • 「書架の中」は inside bookshelves ではありません。人が歩くのは棚の内部ではなく棚の間なので among the shelves とします
  • 「ちょうど」は時間の just now ではなく、よく似ているという much like で十分に出せます
発想の切り替え

まず Looking through ... is much like wandering ... と一本の骨組みを作ります。そのあと左側に「目的なく」「あれこれ」、右側に「広大な図書館」「あてもなく」を足すと、主語を見失いません。「百科事典を読む」と決めつけず looking through とすることで、一項目ずつ深く読む前の、気ままにページを眺める感じも残せます。日本語の語順どおりに名詞を積み上げるより、二つの動作を左右に並べるのが得点しやすい組み立てです。

訳例
標準

Looking through various entries in an encyclopedia without any special purpose is much like wandering without a destination among the shelves of a huge library.

別解

When we look here and there through an encyclopedia with no clear purpose, it is like walking around a very large library without knowing where we want to go.

この文でやりやすい誤り

purpose を複数形にして一般的な目的を表そうとする

減点 小〜中
We look through an encyclopedia without any special purposes.
We look through an encyclopedia without any special purpose.

この文の purpose は「その場での目的」という不可算的な考えなので、通常は単数です。複数にすると、いくつもの具体的な目的を一つずつ否定する不自然な響きになります。

百科事典の項目を subjects と訳す

減点 中
Looking through subjects in an encyclopedia is like wandering through a library.
Looking through entries in an encyclopedia is like wandering through a library.

subject は「話題・科目」で、実際にページ上に並ぶ個々の項目を指しません。何を眺めているのかが原文よりぼやけます。

二つの行為を because で因果関係にする

減点 大
We look through an encyclopedia because we wander around a huge library.
Looking through an encyclopedia is much like wandering around a huge library.

原文は原因を述べず、二つの行為が似ていると述べています。because にすると、図書館を歩くことが百科事典を読む原因だという別の話になります。

書架の内部を歩く意味にする

減点 中
We wander inside the bookshelves of a huge library.
We wander among the shelves of a huge library.

inside the bookshelves では棚の中に人が入り込む意味になります。歩く場所は棚と棚の間です。

この文の言いかえ
特に目的もなく
without any special purpose目的が定まっていないことを素直に表せます
with no clear purposeclear を足した平易な言い方です
purposelessly硬く目立つので、この答案で覚える必要はありません
あれこれと眺める
look through various entriesページを順不同に見る感じに合います
look here and there through an encyclopedia動きを説明した安全な形です
watch entrieswatch は動くものを見続ける語なので合いません
〜に似ている
be much like doing行為どうしの比較に使いやすい形です
be similar to doingto の後ろを doing にすれば使えます
resemble to doresemble は to を取らないため、この形は使えません
あてもなくうろつく
wander without a destination目的地がない点まで表せます
walk around without knowing where to go節に開いたやさしい逃げ道です
roam aimlesslyやや硬いので無理に覚えなくて大丈夫です
第 2 文

おもしろそうな題の本が目にとまってふと手がのびるように,われわれは偶然に見つけた事典の記述について読みふけってしまうものだ。

つまずきやすいところ
  • 「〜ように」は方法の how ではなく、二つの場面を比べる just as です
  • 「本が目にとまる」は本を主語にして a book catches our eye とすると簡潔ですが、notice a book と平易に書いても十分です
  • 「おもしろそう」は how interesting the title looks と節に開けば、interesting-looking のような長い形を避けられます
  • 「手がのびる」は手が勝手に伸びる怪現象ではなく、思わず本を取ることです。reach for it と人を主語に戻します
  • ここが山場です。「読みふける」は read eagerly の一語探しより become lost in reading と状態を説明すると意味が確実です
  • 「ものだ」は must ではありません。人にありがちな傾向なので we often ... と書けば十分です
発想の切り替え

第2文は、前半と後半の動きが鏡のように対応しています。前半を Just as we may notice ... and reach ...、後半を we often become lost ... と置けば、その対応が読み手に伝わります。「偶然」は by chance でもよいのですが、what we happen to find と what 節に開くと、「何を読むか」の目的語まで一度に作れます。末尾に without knowing how much time has passed を添えると、読みふける状態も平易な語で具体的にできます。

訳例
標準

Just as we may notice how interesting the title of a book looks and reach for it, we often become lost in reading what we happen to find in an encyclopedia, without knowing how much time has passed.

別解

A book with an interesting title may catch our eye and make us pick it up; in the same way, we may keep reading an entry that we have found by chance and forget how long we have been reading.

この文でやりやすい誤り

「目にとまる」を受け身の be seen にする

減点 中
A book with an interesting title is seen by us, and we reach for it.
We notice a book with an interesting title and reach for it.

be seen は単に視界に入った事実を述べるだけで、「気になって注意を引かれる」という動きが出ません。ここでは notice を使うと意図が明確です。

「手がのびる」を hand を主語にして直訳する

減点 大
Our hand suddenly grows toward the book.
We suddenly reach for the book.

grow は手そのものが長く成長する意味になります。原文は思わず取ろうとする動作を表しています。

just as に対応する主節を as で重ねる

減点 大
Just as we may reach for a book, as we may read an entry by chance.
Just as we may reach for a book, we may read an entry that we find by chance.

just as で始めた比較には、後半の中心となる普通の主節が必要です。二つ目も as にすると、文の中心がなくなります。

happen の後ろに動名詞を置く

減点 中
We often read an entry that we happen finding in an encyclopedia.
We often read an entry that we happen to find in an encyclopedia.

「偶然〜する」の happen は to不定詞を取ります。finding にすると文法的に成り立ちません。

「読みふける」を read through と取り違える

減点 中
We read through an entry because we happen to find it.
We become lost in reading an entry that we happen to find.

read through は「初めから終わりまで一通り読む」で、夢中になって時間を忘れる意味ではありません。没頭の感じが落ちます。

「ものだ」を義務の must にする

減点 大
We must become lost in reading an entry that we find by chance.
We often become lost in reading an entry that we find by chance.

must は「そうしなければならない」という義務です。原文は、人はついそうなりがちだという傾向を述べています。

encyclopedia の冠詞を落とす

減点 小〜中
We may find an interesting entry in encyclopedia.
We may find an interesting entry in an encyclopedia.

encyclopedia は数えられる名詞なので、単数なら冠詞が必要です。無冠詞では「百科事典という媒体一般」の自然な形になりません。

この文の言いかえ
目にとまる
notice高校範囲で確実です
catch one's eye物を主語にする自然な言い方です
be seen注意を引く感じが消えるので使いません
ふと手がのびる
reach for it without thinking無意識の動作まで説明できます
suddenly pick it up本を実際に手に取る場面なら使えます
one's hand grows手が成長する意味になるため使えません
偶然に見つける
happen to find動詞の形で簡潔に書けます
find by chanceby chance を後ろに置く安全な形です
find accidentally事故のような響きが出る場面もあるので、ここでは上の二つが安全です
読みふける
become lost in reading夢中になる状態を平易に説明できます
keep reading and forget the time知っている語だけで意味をほどいた形です
read through一通り読むという別の意味なので使いません
〜するものだ
often do一般的な傾向ならこれで十分です
tend to do傾向を明示する言い方です
must do義務の意味になるので、この文では使いません
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模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×2 / what節 ×163語

Looking through various entries in an encyclopedia without any special purpose is much like wandering without a destination among the shelves of a huge library. Just as we may notice how interesting the title of a book looks and reach for it, we often become lost in reading what we happen to find in an encyclopedia, without knowing how much time has passed.

第1文では looking through と wandering を同じ doing の形にそろえ、二つの行為の似ている点を見やすくしました。第2文では how interesting で題の印象を、what we happen to find で偶然見つけた内容を、how much time has passed で読みふけった結果をそれぞれ節に開いています。難しい一語で飾らず、目にとまってから読み続けるまでを動詞で順に運ぶ答案です。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×2 / what節 ×172語

When we look here and there through an encyclopedia with no clear purpose, it is like walking around a very large library without knowing where we want to go. We sometimes see how interesting the title of a book is and pick it up without thinking. In the same way, we may keep reading what we have found by chance in an encyclopedia and forget how long we have been doing so.

wander や become lost in reading が出ないときは、walk around、keep reading、forget how long のように、知っている動詞を重ねて説明できます。原文の比喩を it is like で保ち、前半の本を手に取る場面と後半の事典を読む場面を In the same way で明示しました。少し長くても、偶然性と没頭の両方が落ちていないので、安心して使える逃げ道です。

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他の問題にも使える形

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Doing A is much like doing B最重要

二つの行為を比べる

長い日本語でも、比べられている二つの動作を先に doing の形へそろえると骨格が安定します。修飾語はあとから足してください。

百科事典を眺めるのは図書館を歩くのに似ている → Looking through an encyclopedia is much like walking around a library.
外国語を学ぶのは新しい窓を開くのに似ている → Learning a foreign language is much like opening a new window.
without doing / without + 名詞よく使う

「〜せずに」を短く添える

主語を増やさず、動作のしかたを補えます。主節の動作主と without 以下の動作主が同じかを確認してください。

目的もなく → without any special purpose
彼は何も言わずに去った → He left without saying anything.
Just as A, B最重要

似た二場面を対応させる

前半の具体例と後半の本題を比べる形です。Just as 側だけで文を終えず、後ろに中心となる主節Bを置きます。

本に手がのびるように、項目を読む → Just as we reach for a book, we read an entry.
体に食物が必要なように、心には休息が必要だ → Just as the body needs food, the mind needs rest.
how + 形容詞 + S V最重要

印象を節に開く

「題のおもしろそうな感じ」のような名詞のかたまりを、how 節にするとやさしい形容詞で説明できます。

題がおもしろそうなこと → how interesting the title looks
その町が静かなことに驚いた → I was surprised at how quiet the town was.
what S happen to Vよく使う

偶然見つけたものを一つにまとめる

先行詞を探さず、what 節で「偶然〜したもの」まで一つの目的語にできます。happen の後ろは to不定詞です。

偶然に見つけたものを読む → read what we happen to find
偶然耳にしたことを覚えていた → I remembered what I happened to hear.
become lost in doingよく使う

夢中になる

専門的な一語を探さず、「〜する中に自分を見失う」と説明する形です。読書や思考などに広く使えます。

読みふける → become lost in reading
考えに夢中になる → become lost in thought
forget how long S have been doingよく使う

時間を忘れるほど続ける

「夢中だ」を結果から説明する便利な形です。継続してきた時間なので現在完了進行形がよく合います。

どれほど読んでいたか忘れる → forget how long we have been reading
彼女はどれほど待っていたか忘れた → She forgot how long she had been waiting.
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この問題の語彙

表現意味ひとこと
encyclopedia百科事典数えられる名詞です。単数なら an encyclopedia とします
entry項目、記載enter の名詞ですが、ここでは百科事典の一項目を指します
look throughざっと目を通すlook at は一点を見る形、look through は複数のページをたどる形です
wanderあてもなく歩き回る目的地へ向かう walk と違い、行き先が定まらない感じを含みます
shelf複数形は shelves と f が v に変わります
reach for〜を取ろうと手を伸ばすreach the station の reach とは違い、物に手を伸ばすときは for が要ります
happen to do偶然〜する後ろは doing ではなく to不定詞です
by chance偶然に文末に置けば、どの動作が偶然なのかを明確にしやすくなります
become lost in〜に夢中になる道に迷う be lost と同じ形ですが、in reading なら読書への没頭を表せます
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出題の傾向

京大の和文英訳は、1996年前期の筆記具、1997年前期の空港で心の到着を待つ人物のように、身近な行為を比喩や具体的な動きで描く文章が続いています。難しい名詞を探すより、誰が何をするかを補い、場面が目に浮かぶ動詞で順に書く力が問われます。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

この問題を解いて添削してもらう

解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。

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