京都大学のロゴ 第Ⅲ問(1) 和文英訳 京都大学 2000
京都大学 2000年度 前期日程 · 英語

第Ⅲ問(1) 和文英訳
解答と解説

幼児期を過ごした町を再訪し、記憶を頼りに場所を探す場面です。「機会に恵まれた」を大げさな語にせず happened to pass through と置くこと、「それらしい場所」を where I thought the place was と what/how 節を使って説明すること、最後の家について外見から過去を推量することが山場です。現在の景色と30年前の記憶を行き来するため、過去形と過去完了の役割も丁寧に分けます。

難易度 ★★★★ 目安 22分 和文英訳 テーマ 記憶の町と変わった風景
1

問題

第Ⅲ問(1) 次の文を英訳しなさい。

あるとき私は幼児期を過ごした町を通る機会に恵まれた。記憶のなかの光景をたぐりよせながら,なんとかそれらしい場所まで来たが,自信がない。周囲の町並は完全に変わってしまっていた。そこに建っていた家はいかにも新しく,30年前からそこにあったものとはとても思えなかった。

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記憶の場面は、時制を一つ変えるだけで時間関係がずれます。幼児期・再訪・それ以前に完了した町の変化を三段に並べ、had spent / had changed / had been の基準を確認してください。「それらしい場所」と家の古さは事実ではなく話し手の判断なので、thought / was not sure / could hardly believe も落とせません。解説を閉じてから、what / how / where 節と過去完了を自分で選び直してみてください。Boost アプリなら、訳抜けや時制のずれまで答案ごとに確認できます。

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この問題で見られている力

  • 「幼児期を過ごした町」を the town where I spent my early childhood と関係詞でまとめられるか
  • 「記憶のなかの光景をたぐりよせながら」を remembering what the town had looked like と節に開けるか
  • 「それらしい場所」を、場所そのものではなく話し手の判断として説明できるか
  • 町並みが変化した時点を再訪より前の過去完了で示せるか
  • 家の新しい外見から「30年前からあったとは思えない」と推量できるか
2

文ごとの解説

第 1 文

あるとき私は幼児期を過ごした町を通る機会に恵まれた。

つまずきやすいところ
  • 「あるとき」は One day で十分です。特別な物語調の表現は必要ありません
  • 「機会に恵まれた」は was blessed with a chance と直訳すると大げさです。偶然通ったという出来事に直します
  • 「町を通る」は pass through the town と through が必要です
  • 「幼児期を過ごした」は where I spent my early childhood と町を説明します
  • 幼児期は再訪より前なので、関係節は普通の過去形でも時間の順序が伝わります
発想の切り替え

日本語は「機会に恵まれた」と名詞で出来事を包んでいますが、英語では I happened to pass through と動詞で進めると自然です。町には where を付け、その町で何をしたかを節に開きます。こうすると chance や opportunity の選択に迷わず、偶然の再訪という場面も正確に出せます。

訳例
標準

One day, I happened to pass through the town where I had spent my early childhood.

別解

One day, I had a chance to go through the town where I lived when I was a small child.

この文でやりやすい誤り

pass the town と書いて「通過する」の意味を失う

減点 中
One day, I happened to pass the town where I had spent my childhood.
One day, I happened to pass through the town where I had spent my childhood.

pass the town は「町のそばを通り過ぎる」と読まれやすく、町の中を通った場面がはっきりしません。原文では町に入り、昔の場所まで来ています。

「機会に恵まれた」を直訳して大げさにする

減点 中
I was blessed by a chance to pass through the town.
I happened to pass through the town.

人が chance によって祝福されたという受け身になり、この偶然の再訪には重すぎます。自然な出来事として happened to を使います。

幼児期の場所に when を使う

減点 大
I passed through the town when I had spent my early childhood.
I passed through the town where I had spent my early childhood.

when は時を表すため、town を説明できません。「その町で幼児期を過ごした」ので場所を表す where が必要です。

この文の言いかえ
町を通る
pass through the town町の中を通ることが明確で、最も安全です
go through the town平易で同じ場面に使えます
pass the town町のそばを通り過ぎた意味になりやすいです
幼児期を過ごした
where I spent my early childhood町を where 節で説明する基本形です
where I lived as a small childspend が出ないときの説明的な形です
my infant town町そのものが幼いという不自然な意味になります
第 2 文

記憶のなかの光景をたぐりよせながら,なんとかそれらしい場所まで来たが,自信がない。

つまずきやすいところ
  • ここが山場です。「光景をたぐりよせる」を一語で探さず、町がどう見えていたかを思い出す、と説明します
  • 「記憶のなかの」は in my memory と名詞を重ねるより what the town had looked like と節に開きます
  • 「なんとか」は managed to で、簡単ではなかったことを残します
  • 「それらしい場所」は似た場所ではなく、自分が探していたと思う場所です
  • 「自信がない」は I was not sure で、何について不確かなのかを whether 節で補えます
発想の切り替え

「それらしい」は見た目が似ているというより、記憶を照合した結果「たぶんここだ」と判断した気持ちです。そこで where I thought the place was とします。「自信がない」も単独で終えず、whether I was right と判断内容を開けば、読み手が迷いません。

訳例
標準

While trying to remember what the town had looked like, I managed to reach where I thought the place was, but I was not sure whether I was right.

別解

I tried to recall how the area had looked and finally came to what seemed to be the right place, though I could not be certain.

この文でやりやすい誤り

remember の後ろを現在形にして記憶の時点をずらす

減点 大
I tried to remember what the town looks like.
I tried to remember what the town had looked like.

現在の町の外見を思い出す文になっています。思い出しているのは幼児期の光景なので、過去の基準より前を表す had looked にします。

「それらしい」を similar place とする

減点 大
I managed to reach a similar place, but I was not sure.
I managed to reach where I thought the place was, but I was not sure.

何かに似た別の場所へ来た意味になります。原文は探していた場所がここらしいと判断したので、自分の考えを節で示します。

manage の後ろを動名詞にする

減点 大
I managed reaching what seemed to be the place.
I managed to reach what seemed to be the place.

manage は後ろに to不定詞を取ります。動名詞にすると動詞の形が壊れ、なんとか到着したという内容が伝わりません。

この文の言いかえ
記憶の光景をたぐりよせる
remember what the town had looked like記憶の内容を what 節に開けます
recall how the area had looked外見を how 節で表す自然な形です
pull the scene in my memory日本語の比喩を直訳しており英語では伝わりません
なんとか〜する
manage to do苦労して達成したことを表す基本形です
finally do時間がかかった点を中心にするなら使えます
somehow can do過去の一度の達成なら managed to のほうが正確です
それらしい場所
where I thought the place was話し手の判断をそのまま節にします
what seemed to be the right placeseem を使った自然な別解です
a place like it別の似た場所という意味にずれます
第 3 文

周囲の町並は完全に変わってしまっていた。

つまずきやすいところ
  • 「町並」は一語にこだわらず、the streets and buildings around me と見える物を並べられます
  • 「周囲の」は around me として、再訪した人の視点を置きます
  • 変化はその場所へ来る前に完了しているので had completely changed が合います
  • 「〜てしまっていた」には、変化の完了と驚きがあります。completely で大きさを残します
  • change は自動詞で使えるため、had been changed と受け身にする必要はありません
発想の切り替え

町並にぴったり合う難しい名詞を探すより、目に入る streets and buildings と分けるほうが安全です。再訪時点を過去の基準にして、それより前に町が変わったので過去完了を使います。この一文が次の「家も新しく見えた」という判断の土台になります。

訳例
標準

The streets and buildings around me had completely changed.

別解

Everything around the place looked different from how I remembered it.

この文でやりやすい誤り

町並みの変化を現在完了にする

減点 中
The streets around me have completely changed.
The streets around me had completely changed.

語りの基準は過去の再訪時です。現在完了では今までの変化になり、物語の時間から急に現在へ移ってしまいます。

change を不要な受け身にする

減点 中
The streets and buildings had completely been changed.
The streets and buildings had completely changed.

誰かが意図的に町並みを変更したという受け身になります。自然に姿が変わった話なので change を自動詞で使います。

この文の言いかえ
町並み
the streets and buildings見えるものに分けるので確実です
everything around me文脈が明らかなら平易にまとめられます
townscape使えますが、無理に覚える必要はありません
第 4 文

そこに建っていた家はいかにも新しく,30年前からそこにあったものとはとても思えなかった。

つまずきやすいところ
  • 「そこに建っていた」は the house standing there と現在分詞で家を特定できます
  • 「いかにも新しく」は looked so new と外見の判断にします
  • 「とても思えない」は I could hardly believe that と話し手の強い疑いを表します
  • 「30年前から」は for thirty years だけでなく、再訪時まで続く had been there が必要です
  • 家そのものの古さではなく、同じ場所に30年間存在したかどうかが問題です
発想の切り替え

「新しい」と「30年前からあった」を so ... that ... で結ぶと、外見が判断の理由だと明確になります。日本語の「もの」は訳さず、that the house had been there と内容を節で書きます。could hardly believe は「信じがたい」であり、事実を完全に否定してはいない点も原文に合います。

訳例
標準

The house standing there looked so new that I could hardly believe it had been there for thirty years.

別解

The house I saw there looked very new, and I could not imagine how it could have stood there for the past thirty years.

この文でやりやすい誤り

家が新しいという事実を断定する

減点 中
The house standing there was new.
The house standing there looked very new.

原文は外見から「いかにも新しい」と感じただけで、建築年を確認したわけではありません。look を使って話し手の見え方にします。

for thirty years に現在完了を合わせる

減点 大
I could hardly believe that the house has been there for thirty years.
I could hardly believe that the house had been there for thirty years.

could の基準は過去の再訪時です。その時点まで30年間あったという内容なので has been ではなく had been を使います。

この文の言いかえ
いかにも新しく見える
look very new外見の判断を素直に表せます
look as if it had just been built説明を足した形で、強い新しさが出ます
be certainly new見た印象ではなく事実の断定になります
とても思えない
can hardly believe that ...強い疑いを表す基本形です
find it hard to believe that ...少し長いですが書きやすい形です
cannot think itthat節がなく、何を思えないのか示せません
3

模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×2 / what節 ×293語

One day, I happened to pass through the town where I had spent my early childhood. While trying to remember what the town had looked like, I asked myself how closely the scene matched what I remembered. I managed to reach where I thought the place was, but I was not sure whether I was right. The streets and buildings around me had completely changed, and everything looked different from how I remembered it. The house standing there looked so new that I could hardly believe it had been there for thirty years.

「機会に恵まれた」を happened to、「記憶のなかの光景」を what the town had looked like、「それらしい場所」を where I thought the place was と、名詞のかたまりを節へ開いています。how 1回、what 1回に加えて、where節を2回使い、記憶の場所を説明しました。再訪より前の幼児期・町の変化・家の存在には過去完了を置き、時間関係を一本にそろえています。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×1 / what節 ×283語

One day, I had a chance to go through the town where I lived when I was a small child. I tried to recall how the area had looked and finally came to what seemed to be the right place. Still, I did not know whether I had found it. Everything around me was different from what I remembered. The house there looked very new, so it was hard to believe that it had stood in that place for the past thirty years.

こちらは、一文を短く切りながら判断の中身を補った版です。「自信がない」を I did not know whether I had found it と具体化し、「町並」を Everything around me と受けています。日本語の語順から離れても、何を思い出し、どこまで来て、何を疑ったかの順番を守れば内容は落ちません。長い修飾が苦手なら、この形で説明して大丈夫です。

6

他の問題にも使える形

学習のコツを紹介する Boost のキャラクター Boo
happen to doよく使う

偶然の出来事を動詞で進める

「〜する機会があった」を名詞で重くせず、偶然そうしたという一文にできます。過去の経験を自然に導入するときに便利です。

I happened to pass through my old town.
I happened to meet my teacher at the station.
the place where S V最重要

場所にそこでの経験を足す

場所を表す名詞のあとに where を置き、その場所で何をしたかを説明します。日本語の「〜した場所」に広く使えます。

the town where I spent my childhood
the park where we first met
remember what / how S had V-ed最重要

過去の記憶の内容を節にする

思い出す対象が物なら what、様子なら how で開きます。語りの過去より前なら過去完了にすると時間差が明確です。

remember what the town had looked like
remember how my father had taught me
manage to do最重要

苦労した末の達成を表す

「なんとか〜した」を一まとまりで書けます。後ろは動名詞ではなく to不定詞ですので、形ごと覚えてください。

manage to reach the place
manage to finish the work on time
so + 形容詞 + that S Vよく使う

見た印象と判断を結ぶ

程度が大きいために、後ろの結果や判断が生じたと示せます。二文の因果関係を落とさずまとめられます。

The house looked so new that I could hardly believe its age.
The road was so dark that we lost our way.
had V-ed for + 期間最重要

過去の時点までの継続を示す

過去のある時点まで何年続いていたかを表します。現在まで続く現在完了と混ぜず、物語の基準時を先に決めてください。

It had been there for thirty years.
She had lived abroad for five years before returning.
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この問題の語彙

表現意味ひとこと
early childhood幼児期childhood だけでも書けます。early を付けると幼い時期だと明確です
pass through〜の中を通る場所の内部を通過するので through を落とさないでください
happen toたまたま〜する偶然の一度の出来事に使います。機会という名詞を置かずに済みます
recall思い出すremember に言い換えられます。後ろに記憶の内容を置きます
manage toなんとか〜する後ろは必ず動詞の原形です。manage doing とはしません
be sure whether〜かどうか確信がある否定文では not sure whether とし、不確かな内容を続けます
completely完全にchange の程度を表します。語りの時制は動詞側で示します
hardlyほとんど〜ないcan hardly believe で強い疑いです。hard と形が似ていますが意味が違います
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出題の傾向

京大の和文英訳では、1998年前期(1)の映画監督へのインタビューや1999年前期(2)の早起きの随筆のように、身近な経験を自然な英語の時制で語らせる問題が続いています。2000年前期(1)では、記憶の中の町と目の前の町を比べるため、単語の難しさより時間関係の整理が得点を分けます。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

この問題を解いて添削してもらう

記憶の場面は、時制を一つ変えるだけで時間関係がずれます。幼児期・再訪・それ以前に完了した町の変化を三段に並べ、had spent / had changed / had been の基準を確認してください。「それらしい場所」と家の古さは事実ではなく話し手の判断なので、thought / was not sure / could hardly believe も落とせません。解説を閉じてから、what / how / where 節と過去完了を自分で選び直してみてください。Boost アプリなら、訳抜けや時制のずれまで答案ごとに確認できます。

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