京都大学のロゴ 第Ⅲ問(1) 和文英訳 京都大学 2002
京都大学 2002年度 前期日程 · 英語

第Ⅲ問(1) 和文英訳
解答と解説

文化財が多い環境では、その存在を当たり前だと思ってしまうという反省から始まります。「努力の結晶」を難しい比喩で飾るより、each treasure exists because of what many people have done と原因に開くのが安全です。最後は neglecting cultural treasures と failing to respect people's work が同じことだという同定なので、what it means to ... を使うと論理が見えます。文化財そのものと、それを守った人々の努力の両方を目的語として取り違えないことが山場です。内容の流れは『多いので慣れる』『実は人々の努力で残っている』『粗末に扱えば努力まで軽んじる』です。この因果を先に三行で整理してから英語にすると、文化財を守ろうという一般論だけに縮めずに済みます。第2文の over many years は時間の長さ、many people は人数の多さで、どちらも努力の重みを作る要素です。第3文では cultural treasure と people's work が別の目的語であることを意識してください。見直しでは each に対応する is と it、many people に対応する have worked と they を確かめ、what 節の中でも単複を崩さないようにします。take for granted と neglect は似ていますが、前者は意識しない状態、後者は世話を怠る行為なので使い分けます。保存の動詞は keep でも構いませんが、単に keep it では『所有し続ける』とも読めます。keep it safe、keep it in good condition のように状態を補うと維持の意味が伝わります。また cultural treasures are many around us の語順は日本語的なので、there are many cultural treasures around us と存在構文に直します。名詞を一語ずつ置き換えるより、存在・保存・尊重という三つの動作を中心に英文を作ってください。最後に must not forget の後ろが事実の that 節か内容の what 節になっているかを確認します。答案を読み返すときは、同じ it が何を指すかを一つずつ指で追ってください。each treasure を受ける it と、複数の treasures を受ける them が混ざると、保存する対象が不明になります。those people は長年保存に努めた人々だけを受けます。代名詞を明確にすることが、抽象的な内容を読みやすくする最後の仕上げです。

難易度 ★★★★ 目安 24分 和文英訳 テーマ 文化財を支える人々の努力
1

問題

第Ⅲ問(1) 次の文を英訳しなさい。

私たちは,周囲にあまりにもたくさんある文化財になれっこになって,その存在を当然のように思いがちである。しかしほんとうは,一つ一つの文化財は,それを維持するために尽くしてきた数多くの人々の長年の努力の結晶なのだ。文化財をおろそかにすることは,そうした人々の努力をないがしろにすることであるという事実を忘れてはならない。

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この問題で見られている力

  • become used to の to の後ろに名詞相当を置く力
  • so many ... that ... で多さと当然視の結果をつなぐ力
  • take cultural treasures for granted の目的語を明示する力
  • 「努力の結晶」を人々がしてきたことへ開く力
  • neglect の目的語を文化財と努力で使い分ける力
2

文ごとの解説

第 1 文

私たちは,周囲にあまりにもたくさんある文化財になれっこになって,その存在を当然のように思いがちである。

つまずきやすいところ
  • 「なれっこ」は be so used to ... that ... で結果までつなげます
  • to は前置詞なので後ろに名詞か動名詞が必要です
  • 「あまりにもたくさんある」は having so many ... around us と動名詞のかたまりにします
  • take A for granted では A に cultural treasures を明示します
  • 「〜しがち」は tend to を使い、必ずそうすると断定しません
発想の切り替え

文化財の多さが原因で意識しなくなる、という流れです。be used to と take for granted をただ並べず、so ... that ... で因果を見せます。existence を使わなくても them で文化財を受ければ十分です。

訳例
標準

We tend to become so used to having so many cultural treasures around us that we take them for granted.

別解

Because cultural treasures are all around us, we often stop noticing how special their presence is and begin to think that they will always be there.

この文でやりやすい誤り

be used to の後ろを動詞原形にする

減点 大
We are used to see many cultural treasures around us.
We are used to seeing many cultural treasures around us.

be used to の to は前置詞です。後ろには seeing のような動名詞を置きます。

used to と be used to を混同する

減点 大
We used to many cultural treasures around us.
We are used to the many cultural treasures around us.

used to do は過去の習慣で、慣れている意味には be used to 名詞 が必要です。be がないため文が成立しません。

take for granted の目的語を落とす

減点 大
We tend to take for granted because they are everywhere.
We tend to take them for granted because they are everywhere.

take A for granted では、当然視する対象 A が必要です。ここでは文化財を them で受けます。

この文の言いかえ
文化財
cultural treasureこの文脈ではこれが最も素直です。価値ある個々の物を treasure で表せます。
object of cultural value少し説明的になりますが、意味を保った正しい言いかえです。
culture property日本語の形に引かれた不自然な形なので、この答案では使いません。
なれっこになる
become used toこの文脈ではこれが最も素直です。to の後ろの形に注意します。
grow so familiar with ... that少し説明的になりますが、意味を保った正しい言いかえです。
become accustomed with日本語の形に引かれた不自然な形なので、この答案では使いません。
当然と思う
take ... for grantedこの文脈ではこれが最も素直です。対象を目的語に置きます。
think ... will always be there少し説明的になりますが、意味を保った正しい言いかえです。
think ... as natural日本語の形に引かれた不自然な形なので、この答案では使いません。
第 2 文

しかしほんとうは,一つ一つの文化財は,それを維持するために尽くしてきた数多くの人々の長年の努力の結晶なのだ。

つまずきやすいところ
  • ここが山場です。「努力の結晶」を crystal of efforts と直訳しません
  • each cultural treasure を単数で主語にし、動詞も is とします
  • 「維持する」は preserve / keep it safe and in good condition と説明できます
  • 長年続く努力は what many people have done over many years と現在完了で表します
  • 数多くの人々と長年という二つの量を落とさないようにします
発想の切り替え

結晶という比喩の核心は、多くの人の仕事が積み重なって現在の文化財が残っていることです。result of what ... have done とすれば、比喩を不自然に直訳せず、現在へのつながりも表せます。

訳例
標準

In fact, each cultural treasure is the result of what many people have done over many years to preserve it.

別解

The truth is that every cultural treasure remains with us only because many people have worked for years to keep it safe.

この文でやりやすい誤り

each を置いたのに are を使う

減点 中
Each cultural treasure are the result of years of work.
Each cultural treasure is the result of years of work.

each cultural treasure は単数扱いなので、動詞も is にします。複数の文化財を念頭に置いても are にはなりません。

many people の所有格を peoples' とする

減点 小
It is the result of many peoples' efforts over many years.
It is the result of many people's efforts over many years.

people はすでに複数形です。一般の多数の人々の所有格は people's とし、peoples' とはしません。

maintain を自動詞にする

減点 大
Many people worked so that the treasure could maintain.
Many people worked to maintain the treasure.

maintain は他動詞で、文化財を維持する人を主語にして目的語 it を置きます。文化財側なら be maintained が必要です。

結晶を crystal と物質的に直訳する

減点 中
Each cultural treasure is a crystal of people's long effort.
Each cultural treasure is the result of people's work over many years.

crystal は実物の結晶を表し、努力の蓄積を表すこの日本語の比喩には不自然です。結果だと説明します。

この文の言いかえ
一つ一つの
eachこの文脈ではこれが最も素直です。each の後ろは単数名詞です。
every single少し説明的になりますが、意味を保った正しい言いかえです。
each of treasure日本語の形に引かれた不自然な形なので、この答案では使いません。
維持する
preserveこの文脈ではこれが最も素直です。現在まで守る意味を出します。
keep safe and in good condition少し説明的になりますが、意味を保った正しい言いかえです。
continue the treasure日本語の形に引かれた不自然な形なので、この答案では使いません。
努力の結晶
the result of years of workこの文脈ではこれが最も素直です。比喩の中身を原因と結果に開きます。
what many people have achieved through years of work少し説明的になりますが、意味を保った正しい言いかえです。
a crystal of effort日本語の形に引かれた不自然な形なので、この答案では使いません。
第 3 文

文化財をおろそかにすることは,そうした人々の努力をないがしろにすることであるという事実を忘れてはならない。

つまずきやすいところ
  • 「忘れてはならない」は We must not forget that ... とします
  • 二つの『おろそか』は neglect と fail to respect で意味を分けられます
  • 動名詞 Neglecting ... を主語にすると行為同士を比べやすくなります
  • what it means to neglect ... で『〜することの意味』を節に開けます
  • those people が第2文の保存に尽くした人々を正しく受けるか確認します
発想の切り替え

単に We must protect cultural treasures とまとめると、人々の努力を軽んじるという倫理的な理由が落ちます。what it means to neglect を使い、文化財への態度が保存者への態度でもあると同定します。

訳例
標準

We must not forget what it means to neglect a cultural treasure: it means failing to respect how hard those people worked to preserve it.

別解

We should remember that if we fail to care for cultural treasures, we also show that we do not value what all those people did to protect them.

この文でやりやすい誤り

neglect の後ろに前置詞を置く

減点 中
We must not neglect about cultural treasures.
We must not neglect cultural treasures.

neglect は他動詞なので目的語を直接取ります。about は不要です。

forget の後ろを不定詞にして過去の事実を変える

減点 中
We must not forget to respect what those people did.
We must not forget what those people did.

forget to do は『これからすべきことをし忘れる』です。原文は忘れてはいけない事実を述べるので forget that / what を使います。

人々の努力を people themselves に置き換える

減点 大
Neglecting the treasures means neglecting those people.
Neglecting the treasures means failing to respect those people's work.

原文が問題にしているのは人々そのものへの無視ではなく、彼らが払った努力を軽んじることです。対象が変わっています。

この文の言いかえ
おろそかにする
neglectこの文脈ではこれが最も素直です。他動詞なので直接目的語を取ります。
fail to care for少し説明的になりますが、意味を保った正しい言いかえです。
neglect about日本語の形に引かれた不自然な形なので、この答案では使いません。
ないがしろにする
fail to respectこの文脈ではこれが最も素直です。努力への敬意の欠如として書けます。
show no respect for少し説明的になりますが、意味を保った正しい言いかえです。
make light for日本語の形に引かれた不自然な形なので、この答案では使いません。
3

模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×1 / what節 ×265語

We tend to become so used to having so many cultural treasures around us that we take them for granted. In fact, each cultural treasure is the result of what many people have done over many years to preserve it. We must not forget what it means to neglect a cultural treasure: it means failing to respect how hard those people worked to preserve it.

having so many cultural treasures around us で周囲の多さ、what many people have done で努力の内容、what it means to neglect で行為の意味、how hard those people worked で努力の程度を表しました。『存在』『結晶』『事実』と名詞を重ねず、節にすると関係が見えます。each cultural treasure と複数の people の主述一致、代名詞 it / them の受け先も一文ずつ確認しています。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×1 / what節 ×176語

Because cultural treasures are all around us, we often stop noticing how special their presence is and begin to think that they will always be there. The truth is that every cultural treasure remains with us only because many people have worked for years to keep it safe. We should remember that if we fail to care for these treasures, we also show that we do not value what all those people did to protect them.

こちらは preserve や neglect が出ない場合に備え、keep it safe と fail to care for にほどいた解答です。文化財が今も残るのは人々が長年働いたからだ、そして粗末に扱えばその仕事を評価しないことになる、という因果を二つの because / if で明示しました。抽象語を避けても原文の重みは落ちません。

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他の問題にも使える形

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so + 形容詞 + that ...最重要

程度から結果へつなぐ

慣れの程度が大きいため当然視する、という因果を一文で表せます。so と that の間には形容詞や副詞を置きます。

あまりに慣れて当然と思う → so used to them that we take them for granted
疲れすぎて歩けない → so tired that I cannot walk
how many + 複数名詞 + there areよく使う

存在量を節にする

『多くの〜の存在』を名詞化せず、どれほど多くあるかと開けます。there are の語順まで一組で確認します。

周囲に文化財がいくつあるか → how many cultural treasures there are around us
町に店がいくつあるか → how many shops there are in town
take A for grantedよく使う

Aを当然視する

A を必ず take の直後に置きます。人の支えや日常の便利さを意識しないという話で広く使えます。

文化財を当然と思う → take cultural treasures for granted
家族の助けを当然と思う → take my family's help for granted
the result of what S have done最重要

積み重ねの成果を節にする

『努力の結晶』のような比喩を、過去から現在までにしてきたことの結果として説明できます。

人々の努力の結晶 → the result of what people have done
改革の成果 → the result of what the team has changed
what it means to Vよく使う

行為の意味を同定する

一つの行為が別の態度を意味する、と説明するときに便利です。what 節の中の it は形式主語ではありません。

文化財をおろそかにする意味 → what it means to neglect a treasure
責任を持つとは何か → what it means to be responsible
fail to Vよく使う

すべきことをしない

単なる not より、本来期待される行為を果たさない含みがあります。後ろは to 不定詞です。

大切に扱わない → fail to care for it
約束を守らない → fail to keep a promise
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この問題の語彙

表現意味ひとこと
cultural treasure文化財property は不可算の扱いが難しいため、個々の文化財には treasure が書きやすいです
be used to〜に慣れているto は前置詞なので名詞か動名詞が続きます
take for granted当然のことと思うtake と for の間に当然視する対象を置きます
preserve保存する現在の状態を守って後世へ残す意味に合います
over many years長年にわたってfor many years は期間、over は積み重ねを感じさせます
result結果・成果result of の後ろに原因を置きます
neglectおろそかにする他動詞なので about を付けません
respect尊重する名詞でも動詞でも使えます。動詞なら目的語を直接取ります
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出題の傾向

2001年前期の自然や好奇心、2003年前期の休暇文化と同様、京大は身近な対象への見方を問い直す文章をよく出します。この年は『結晶』『ないがしろ』の一語対応を競う問題ではありません。保存のために誰が何をしたかを具体的な節へ直すことが得点につながります。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

この問題を解いて添削してもらう

解説で組み立て方を確かめたら、次は原文だけを見て自分の英語にしてみてください。Boost アプリでは、この問題への答案をそのまま AI が添削し、内容の抜けや不自然な表現を具体的に確認できます。

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