京都大学のロゴ 第Ⅲ問(2) 和文英訳 京都大学 2007
京都大学 2007年度 前期日程 · 英語

第Ⅲ問(2) 和文英訳
解答と解説

星が多く見える理由を、空気のきれいさという科学的説明だけで終わらせず、風景は見る人の心を映すという比喩へ移す文章です。「最近久しぶりに旅行して実感した」の語順、「科学的に考えれば」と「でしょうが」の控えめな判断、「雑事に追われた生活からの逃避行」という長い修飾を一つずつほどく必要があります。最後の二重の「もしかしたら/かもしれません」を強く断定せず、how clear my mind was などで心の状態を節に開くのがポイントです。

難易度 ★★★★ 目安 23分 和文英訳 テーマ 田舎の星空と見る人の心
1

問題

第Ⅲ問(2) 次の文を英訳しなさい。

最近久しぶりに旅行して実感したのですが,田舎の夜空には星が驚くほどたくさん見えます。科学的に考えれば,汚染がなく空気がきれいだからでしょうが,風景はそれを見る者の心を映すとも言われます。雑事に追われて忙しいだけの生活からしばしの逃避行を敢行したあの時の私は,もしかしたら,めずらしく無邪気な子供のように心が澄んでいたのかもしれません。

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この問題で見られている力

  • 旅行で気づいた現在の実感を時制で自然に導入できるか
  • 星が見える数を how many stars で節に開けるか
  • 科学的理由と心の比喩を but で対照させられるか
  • 風景が見る人の心を映すという比喩の主語を保てるか
  • 忙しい日常から短く離れた過去の自分を長すぎない英語に分けられるか
  • 推量を may / perhaps で重ねすぎず表せるか
2

文ごとの解説

第 1 文

最近久しぶりに旅行して実感したのですが,田舎の夜空には星が驚くほどたくさん見えます。

つまずきやすいところ
  • 最近の旅行は過去、そこで得た実感は現在にも続くと考えます
  • 「久しぶりに」は for the first time in a long while と説明します
  • ここが山場です。「驚くほどたくさん」は how many stars we can see と節に開きます
  • 田舎は the country、夜空は the night sky とします
発想の切り替え

日本語の順序を守り、A recent trip made me realize ... と気づきの原因を主語にできます。その中身を how many stars we can see と置けば、驚きと数の多さが一つの節にまとまります。「最近」と「久しぶり」は別の時間情報です。recently で旅行の時点を示し、for the first time in a long while で長い空白を補うと、久々の体験だから星の多さを改めて実感した流れが見えます。

訳例
標準

When I recently took a trip for the first time in a long while, I realized how many stars we can see in the night sky out in the country.

別解

A recent trip after a long break showed me how surprisingly full of stars the country sky can be at night.

この文でやりやすい誤り

「久しぶりに」を recently だけで済ませる

減点 中
I traveled recently and realized how many stars can be seen in the country.
I recently traveled for the first time in a long while and realized how many stars can be seen in the country.

recently は旅行が最近だったことしか示さず、長い間旅行していなかったという空白を表しません。そのため、久しぶりに日常を離れたから景色と自分の心を新鮮に見直せた、という後半につながる体験の特別さが弱くなります。

star を単数にする

減点 小
We can see a surprisingly large number of star in the country sky.
We can see a surprisingly large number of stars in the country sky.

a large number of の後ろには数えられる名詞の複数形が必要です。star の単数形では「多数」と「一つ」が同時に置かれ、田舎の夜空に驚くほど多く見えるという数の内容が文法上成立しません。

country を国家の意味にする

減点 大
We can see many stars in a foreign country at night.
We can see many stars out in the country at night.

foreign country は外国です。原文の田舎は都市から離れ、街明かりや汚染が少ない地域を意味しており、国境を越えたとは述べていません。この誤訳では星が多く見える理由が外国だからという別の話になります。

この文の言いかえ
久しぶりに旅行する
take a trip for the first time in a long while空白期間まで明確です
take a trip after a long break短く自然です
travel recently最近だけで、久しぶりの意味が消えます
驚くほど星が多い
realize how many stars we can see驚きの中身を節に開けます
see a surprising number of stars名詞句でも自然です
see countless stars数え切れないまで強めるので、この文では無理に使いません
第 2 文

科学的に考えれば,汚染がなく空気がきれいだからでしょうが,風景はそれを見る者の心を映すとも言われます。

つまずきやすいところ
  • 「科学的に考えれば」は From a scientific point of view と枠を示します
  • 汚染がなく空気がきれいという二点を because で理由にします
  • 「でしょうが」は probably と but で控えめな判断と逆接を残します
  • 「〜とも言われます」は people also say that と伝聞にします
  • it は landscape ではなく what we see と受け直せます
発想の切り替え

前半は The reason is probably that ...、後半は people also say ... と二つの説明を並べます。「見る者の心」は the mind of the viewer と名詞に固めず、what a scene looks like reflects how the person seeing it feels と開くと明快です。ここは科学的な原因を否定して心だけを選ぶ文ではありません。probably で物理的説明を認めつつ、but people also say で同じ景色の感じ方には心も関わる、という二層の見方を並べます。

訳例
標準

From a scientific point of view, this is probably because there is little pollution and the air is clean, but people also say that what a scene looks like reflects how the person seeing it feels.

別解

Science may explain how clearly we see the stars by the clean air, yet a view is also said to show what is in the heart of the person who sees it.

この文でやりやすい誤り

pollution を複数形にする

減点 中
There are few pollutions, so the air is clean.
There is little pollution, so the air is clean.

環境汚染一般を表す pollution は不可算名詞です。pollutions とすると複数の種類を数える特殊な意味になり、田舎では汚染の量が少ないという科学的な理由にはなりません。量には few でなく little を使います。

風景ではなく鏡が心を映す文にする

減点 大
A mirror reflects how the person who sees the landscape feels.
A landscape is said to reflect how the person seeing it feels.

原文で心を映すとされている主語は風景です。mirror を主語にすると、比喩ではなく実物の鏡の話へ変わります。

「とも言われます」の伝聞を落とす

減点 小〜中
A landscape reflects the mind of the person who sees it.
A landscape is also said to reflect the mind of the person who sees it.

原文は一般にそう言われる見方を紹介しており、話し手自身が科学的事実として証明したのではありません。伝聞を落とすと、風景が必ず心を映すという強い法則に変わり、前半の probably と同じ慎重な調子が失われます。

汚染がまったくないと断定する

減点 中
We can see many stars because there is no pollution in the country.
We can see many stars because there is little pollution in the country.

no pollution は汚染が完全にゼロだという断定です。原文の「汚染がなく」は都会と比べて少ないという科学的説明として読めるため、little pollution とすれば、観測していない絶対的なゼロまで主張せずに済みます。

この文の言いかえ
科学的に考えれば
from a scientific point of view判断の枠を明示できます
if we think about it scientifically節で説明する形です
scientifically thinking主語とのつながりが不明確で使いません
心を映す
reflect how a person feels心の状態を節で説明できます
show what is in a person's heart平易で分かりやすいです
copy a person's heart複写する意味になり、比喩が伝わりません
汚染がなく空気がきれい
there is little pollution and the air is clean汚染の少なさと空気の状態を二つとも平易に残せます
the air is clean because there is less pollution都会などとの比較が文脈にある場合に使える説明的な形です
there is no pollution at all汚染が完全にゼロだと原文以上に強く断定するので使いません
第 3 文

雑事に追われて忙しいだけの生活からしばしの逃避行を敢行したあの時の私は,もしかしたら,めずらしく無邪気な子供のように心が澄んでいたのかもしれません。

つまずきやすいところ
  • 長い主語を When I ... と時の節に変えます
  • 「雑事に追われる」は be busy with small daily tasks と平易に説明します
  • 「しばしの逃避行を敢行」は took a short break from my life と大げさにしません
  • 無邪気な子供のようには like an innocent child で表します
  • 推量は perhaps と may have been のどちらか一方でも十分です
発想の切り替え

ここは日本語の名詞句「あの時の私」をそのまま主語にしないことが大切です。When I took that short trip ... と状況を先に出し、I may have had a mind as clear as ... と過去への推量で結びます。「逃避行を敢行」は危険から逃げたのではなく、雑事で埋まる日常を一時止めたことです。その結果として空を子供のように見られたのではないか、と may have been で後から推測する因果を保ちます。

訳例
標準

When I took that short trip away from a life in which I was always busy with small daily tasks, my mind may, for once, have been as clear as that of an innocent child.

別解

Perhaps, during that brief escape from the daily tasks that kept me busy, I saw the sky with the clear and open mind of a child and understood how peaceful I felt.

この文でやりやすい誤り

escape を危険から逃げる意味に限定する

減点 大
I escaped from danger in my busy daily life for a short time.
I took a short break from my busy daily life.

原文には逃げなければならない危険はありません。この文では忙しい生活の中に危険があり、そこから身を守るため逃走した意味になります。実際には雑事に追われる日常から旅行で短く離れ、心に余裕を取り戻したという話です。

過去への推量を現在形で書く

減点 中
On that trip, my mind may be as clear as a child's.
On that trip, my mind may have been as clear as a child's.

旅行した「あの時」の心の状態を、現在の話者が振り返って推測しています。may be では今この瞬間の心が澄んでいる可能性になり、星空を見た過去の体験についての自己分析から時間がずれます。

child の所有格を落とす

減点 中
My mind may have been as clear as a child.
My mind may have been as clear as a child's.

これでは心と子供そのものを比較しています。比較するのは私の心と子供の心なので、a child's と所有格にします。

この文の言いかえ
雑事に追われる
be busy with small daily tasks難語なしで状況を説明できます
have too many little things to doさらに口語的な逃げ道です
be beset by trivial affairs硬く難しいため覚える必要はありません
心が澄んでいる
have a clear and open mind子供の素直さまで伝わります
feel peaceful and free from worry状態を説明する別解です
have a transparent heart日本語の比喩を直訳しており不自然です
もしかしたら〜だったのかもしれない
may have been ...現在から過去の旅行時の状態を控えめに推測する基本形です
perhaps I was ...perhaps だけでも断定を避けながら過去の状態を表せます
might conceivably have been ...意味は近いですが重く、無理に語を重ねる必要はありません
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模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×2 / what節 ×1101語

When I recently took a trip for the first time in a long while, I realized how many stars we can see in the night sky out in the country. From a scientific point of view, this is probably because there is little pollution and the air is clean, but people also say that what a scene looks like reflects how the person seeing it feels. When I took that short trip away from a life in which I was always busy with small daily tasks, my mind may, for once, have been as clear as that of an innocent child.

前半の実感を how many stars、風景の見え方を what a scene looks like、見る人の感情を how the person ... feels と三つの節で説明しました。最終文は長い日本語の主語を When I took ... に変え、旅行中の心の状態を主節に置いています。probably と may have been によって、科学的説明も自己分析も断定しすぎない原文の慎重な調子を残しました。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×3 / what節 ×297語

A recent trip after a long break showed me how many stars can be seen in the country at night. Science may explain how clearly we see them: the air is clean because there is little pollution. Still, people say that what we see in a view can depend on what is in our own hearts. I had stepped away for a short time from a life full of small tasks. Perhaps that is why I was able to look at the sky with the open mind of an innocent child and notice how peaceful I felt.

最終文が重ければ、「日常を離れた」と「子供のような心だった」を二文に分けて構いません。風景が心を映すという比喩も can depend on what is in our own hearts と因果を説明しています。原文より語数は増えますが、汚染、空気、風景、日常からの離脱、心の澄み方を順に置くため、内容の取り落としを防げます。

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他の問題にも使える形

学習のコツを紹介する Boost のキャラクター Boo
realize how many + 複数名詞 + S V最重要

数の多さへの気づき

「驚くほど多い」を難しい形容詞にせず、気づいた内容として示せます。

星の多さに気づく → realize how many stars we can see
支えてくれた人の多さに気づく → realize how many people helped me
町に古い建物が多いと気づく → realize how many old buildings the town has
From a ... point of viewよく使う

見る立場を先に示す

科学、社会、個人など、どの観点からの判断かを文頭で明確にできます。

科学的に考えれば → From a scientific point of view
学生の立場からは → From a student's point of view
環境の観点からは → From an environmental point of view
what S looks like reflects how S feels最重要

外の見え方と内面を結ぶ

外見や風景と感情の関係を、what と how の二つの節で説明できます。

風景は見る者の心を映す → what a scene looks like reflects how the viewer feels
顔つきは気分を映す → what her face looks like reflects how she feels
部屋の様子は住む人の感じ方を映す → what a room looks like reflects how its owner feels
take a short break from ...よく使う

日常からしばらく離れる

大げさな escape を使わず、仕事や生活を短く休む意味を表せます。

忙しい生活からしばし離れる → take a short break from busy life
勉強を少し休む → take a short break from studying
画面を見るのを少し休む → take a short break from looking at a screen
may have + 過去分詞最重要

過去への控えめな推量

今から振り返って「あの時は〜だったかもしれない」と述べる形です。

心が澄んでいたかもしれない → my mind may have been clear
彼は道に迷ったかもしれない → he may have lost his way
私たちは早く判断しすぎたかもしれない → we may have judged too quickly
A may explain B, but people also say that Cよく使う

科学的説明と別の見方を並べる

一方を否定せず、事実に基づく説明を認めたうえで、人の感じ方など別の見方を追加できます。

きれいな空気で星を説明できるが心も関わる → Clean air may explain the stars, but people also say that a view reflects the viewer's mind
値段で人気を説明できるが品質も重要だ → Price may explain its popularity, but people also say that quality matters
数字で変化を説明できるが経験も考えるべきだ → Numbers may explain the change, but we should also consider people's experience
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この問題の語彙

表現意味ひとこと
for the first time in a long while久しぶりにrecently は最近という時点だけです。長い空白の後という情報には for the first time in a long while が必要です
the country田舎country だけでは国の意味もあるため the を含む形で覚えます
pollution汚染一般的な汚染は不可算なので pollutions と数えません。量が少ないなら little pollution とします
reflect〜を映す、反映するこの文の主語は mirror ではなく landscape です。風景が見る人の心を reflect する比喩だと保ってください
daily task日々の雑事affair は事件や情事にもなります。日常の細かな用事には small daily tasks が安全です
innocent無邪気な人によっては無罪の意味にもなるので、ここでは an innocent child と子供を修飾して無邪気さを明確にします
clear-minded頭や心が澄んだtransparent heart のような日本語直訳は避けます。子供の素直さなら a clear and open mind と説明するほうが安全です
from a scientific point of view科学的な観点から科学だけが唯一の説明だと断定せず、後ろに probably を残して心についての見方へ移ります
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出題の傾向

2007年第(1)問では教師の人柄が教えを支えるという見えない関係を扱い、2008年第(2)問では都会生活と季節感の薄れを結びました。この問題も、目に見える星空と見る側の心という二層を英語で明示する京大らしい随筆です。日本語の長い名詞修飾を節へ開く力が得点差になります。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

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解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。星空の科学的説明と、見る側の心の説明を対照させてみてください。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。

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