京都大学のロゴ 第Ⅲ問(2) 和文英訳 京都大学 2008
京都大学 2008年度 前期日程 · 英語

第Ⅲ問(2) 和文英訳
解答と解説

コンクリートと機能を優先する都会では、鳥や虫の声、名も知らない草木を通して季節の微妙な変化を感じる機会が減った、という長い第一文が山場です。surrounded by から始めると修飾が迷子になりやすいため、When we live in a city ... と骨格を先に置きます。第二文は、心の余裕、一度だけの大切な人生、潤い、田舎への移住という因果を整理します。比喩的な「潤い」は moist ではなく make life richer と内容で表してください。 第一文の「鳥や虫」と「草木」は、音に注意を向けるものと目を向けるものに分かれています。listen と look の目的語を入れ替えず、二つの知覚が季節感へ集まるように書いてください。また、移住を決める人が増えた理由は都会が嫌いだからと単純化できません。心の余裕を取り戻し、一度だけの人生をより豊かにしたいという積極的な願いまで残すと、第二文の論理が完成します。 原文の慎重な語り口も保ってください。

難易度 ★★★★★ 目安 27分 和文英訳 テーマ 都会で失う季節感と田舎への移住
1

問題

第Ⅲ問(2) 次の文を英訳しなさい。

コンクリートの建物に囲まれ,機能第一主義の無機質な都会で生活していると,鳥や虫の鳴き声に耳をすませたり,名も知らぬような草木に目をやったりしながら,季節の微妙な移り変わりを実感するようなことがめっきり少なくなってきたように思う。もっと心に余裕を持ち,一回きりのかけがえのない人生をうるおいのあるものにしたいと考えて,田舎に移住することを決断する人が近年増えてきているのも無理からぬことである。

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この問題で見られている力

  • 都市の特徴を buildings と function の二点で説明できるか
  • 耳をすます・目をやるという知覚動作を自然に並べられるか
  • 季節の微妙な移り変わりを how the seasons slowly change に開けるか
  • 機会が減ってきた変化を現在完了で表せるか
  • 心の余裕を have more time and peace of mind と説明できるか
  • 移住者が増えたことを不思議ではないという評価まで訳せるか
2

文ごとの解説

第 1 文

コンクリートの建物に囲まれ,機能第一主義の無機質な都会で生活していると,鳥や虫の鳴き声に耳をすませたり,名も知らぬような草木に目をやったりしながら,季節の微妙な移り変わりを実感するようなことがめっきり少なくなってきたように思う。

つまずきやすいところ
  • 文頭の修飾を When we live in a city で受けます
  • 無機質は cold and built only for practical use と説明します
  • 耳をすますは listen carefully to です
  • 名も知らぬ草木を plants whose names we do not know と開きます
  • ここが山場です。季節の移り変わりを how the seasons slowly change にします
  • 少なくなってきたを have had far fewer chances と現在完了で示します
発想の切り替え

日本語の修飾順を保つと主語が遅れすぎます。そこで、まず「機会が減った」という文の中心を we have had far fewer chances と決め、都会の環境は When と where の節へ移します。こうすると、長い前置きの途中で主語を見失いません。何をする機会かは to listen、to look、to feel と知覚の順に並べます。鳥や虫は音、草木は目、季節は実感の対象なので、三つの動詞を分ける発想になります。「微妙な」は難しい形容詞を探すより、slowly を how 節の中に置くと変化の小ささまで伝えられます。

訳例
標準

When we live in a cold city where concrete buildings surround us and practical use comes first, we seem to have far fewer chances to listen to birds and insects, look at plants whose names we do not know, and feel how the seasons slowly change.

別解

Living among concrete buildings in a city made mainly for practical needs, we rarely stop to hear what birds and insects sound like or notice how unknown plants show the small changes from one season to another.

この文でやりやすい誤り

分詞構文の主語を建物にしてしまう

減点 大
Surrounded by concrete buildings, the city gives us fewer chances to notice nature.
Living among concrete buildings, we have fewer chances to notice nature.

surrounded の意味上の主語が the city になり、都市が建物に囲まれる文です。原文では、建物に囲まれた環境で暮らす私たちの経験が述べられています。主語を取り違えると、自然に気づく機会が減った主体まで city に変わり、人の感覚を語る文ではなくなります。

無機質をinorganicとする

減点 大
We live in an inorganic city.
We live in a cold city built mainly for practical use.

inorganic は化学で「無機の」という分類を表す語です。an inorganic city では都市の素材を科学的に分類するように聞こえ、便利さだけが優先されて人間的な温かさを感じにくい、という原文の評価が伝わりません。

鳥の声をbird's voiceと単数にする

減点 中
We listen to a bird's voice and insects.
We listen to the sounds of birds and insects.

a bird's voice は一羽の鳥の声だけを指し、後ろの insects は声ではなく虫そのものを聞く形になります。原文は特定の一羽ではなく、身近な鳥や虫のさまざまな音に耳を向ける話なので、sounds of birds and insects と両方を同じ対象にそろえます。

名を知らない主体を植物にする

減点 大
We look at plants which do not know their names.
We look at plants whose names we do not know.

which do not know の主語は plants なので、植物が自分の名前を知らないという意味になります。原文で名前を知らないのは、草木に目を向ける私たちです。whose names we do not know とすれば、植物と名前の関係も、知らない人も同時に明確になります。

季節の変化をchange seasonsと他動詞にする

減点 大
We feel how nature changes the seasons.
We feel how the seasons slowly change.

changes を他動詞にすると、nature が seasons を操作して別の季節に変えるという意味になります。原文は季節そのものが少しずつ移っていく様子を感じる話です。the seasons を how 節の主語にして、自ら変化する change を使います。

めっきり少なくなったを否定しすぎる

減点 中
We no longer have any chance to notice nature.
We have far fewer chances to notice nature.

no longer ... any chance は、自然に気づく機会が現在は一度もないという全面否定です。原文の「めっきり少なくなった」は以前より大幅に減ったものの、機会が残っているという比較なので、far fewer chances でその幅を保ちます。

この文の言いかえ
無機質な都会
a cold city built for practical use平易で意味が明確なおすすめ表現です
a city without warmthこの形でも自然に伝わります
an inorganic city意味または語法がずれるため使いません
耳をすます
listen carefully to平易で意味が明確なおすすめ表現です
stop to hearこの形でも自然に伝わります
hear with ears意味または語法がずれるため使いません
名も知らぬ草木
plants whose names we do not know平易で意味が明確なおすすめ表現です
unfamiliar plantsこの形でも自然に伝わります
nameless plants for me意味または語法がずれるため使いません
季節の移り変わり
how the seasons slowly change平易で意味が明確なおすすめ表現です
the change from one season to anotherこの形でも自然に伝わります
season movement意味または語法がずれるため使いません
第 2 文

もっと心に余裕を持ち,一回きりのかけがえのない人生をうるおいのあるものにしたいと考えて,田舎に移住することを決断する人が近年増えてきているのも無理からぬことである。

つまずきやすいところ
  • 心に余裕を持つを have more time and peace in their minds と説明します
  • 一回きりを the one life they have とします
  • かけがえのないは cannot be replaced と開けます
  • 潤いを moist とせず make life richer とします
  • 田舎に移住するは move to the countryside です
  • 無理からぬを It is no wonder that で示します
発想の切り替え

この文の中心は移住者の増加そのものより、それを「無理もない」と見る筆者の評価です。そのため It is no wonder that ... を先に置くと、後ろの長い理由が迷子になりません。心の余裕と人生の潤いは別々の願いなので want more peace of mind と want to know how they can make ... を並べます。「かけがえのない」を難語にせず the one life they have とするのは、代わりがない理由が人生は一度だけだからです。近年の変化は have decided、今の願いは want と時制を分けると、増加の流れと動機の両方が見えます。

訳例
標準

It is no wonder that in recent years more people have decided to move to the countryside because they want more peace of mind and want to know how they can make the one life they have richer.

別解

We can understand why more and more people now choose to live in the country: they want room in their hearts and want to make what is their only life more meaningful and full.

この文でやりやすい誤り

人生の潤いをmake life wetとする

減点 大
They want to make their lives wet.
They want to make their lives richer.

wet は水などで物理的にぬれた状態です。この文では人生そのものがぬれるという奇妙な意味になり、自然に触れて心を豊かにしたいという比喩が消えます。内容を説明する richer や more meaningful を使います。

田舎をmy hometownとする

減点 中
More people move to their hometowns.
More people move to the countryside.

hometown は自分が生まれ育った町なので、故郷へ戻る人だけに意味を狭めます。原文の田舎は都市を離れた生活環境を指し、出身地とは限りません。the countryside なら移住先の性質をそのまま表せます。

無理からぬをIt is impossibleとする

減点 大
It is impossible for more people to move to the countryside.
It is no wonder that more people move to the countryside.

It is impossible は移住者が増えることは起こりえない、と事実を否定する表現です。原文は実際に増えていることを認めた上で、その理由は理解できる、驚くことではないと評価しています。It is no wonder that なら判断の向きが正しくなります。

一回きりの人生をone-time lifeとする

減点 中
They want to make their one-time life richer.
They want to make the one life they have richer.

one-time は「一度限り開催される催し」や「今回だけの支払い」のような限定に使われやすく、人生が二度と取り替えられないという意味にはなりません。the one life they have と書けば、一人に一つしかないから大切だという原文の理由まで伝わります。

この文の言いかえ
心に余裕を持つ
have more peace of mind平易で意味が明確なおすすめ表現です
have time to stop and notice thingsこの形でも自然に伝わります
have a wide heart意味または語法がずれるため使いません
人生をうるおいあるものにする
make life richer平易で意味が明確なおすすめ表現です
make life more meaningfulこの形でも自然に伝わります
make life wet意味または語法がずれるため使いません
一回きりのかけがえのない人生
the one life we have一度しかないことを平易な関係で示せるのでおすすめです
our only life短くしても、代わりのない一つの人生という意味を保てます
our irreplaceable existence意味は近くても硬く、標準解で無理に覚える必要はありません
our one-time life一度だけの催しのように聞こえるため使いません
近年増えてきている
more people have decided in recent years過去から現在までの増加を現在完了で示せます
more and more people now choose現在の傾向として説明する形でも伝わります
people increased recently人そのものが増殖した意味になり、移住を選ぶ人の増加を表さないので使いません
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模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×2 / what節 ×1100語

When we live in a cold city where concrete buildings surround us and practical use comes first, we seem to have far fewer chances to listen to birds and insects, look at plants whose names we do not know, and feel how the seasons slowly change. We may then forget what small signs in nature tell us about the time of year. It is no wonder that in recent years more people have decided to move to the countryside because they want more peace of mind and want to know how they can make the one life they have richer.

標準解では how the seasons slowly change、what small signs ... tell us、how they can make ... の三つを使いました。第一文は都会の特徴を where 節にまとめ、知覚動作を listen、look、feel の順で並べています。第二文の「潤い」は水分ではなく人生の豊かさなので richer としました。近年までの増加には現在完了、一般的な動機には現在形を使い、時制の役割も分けています。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×2 / what節 ×188語

In a city full of concrete buildings, everything is often planned for use rather than warmth. As a result, we have fewer moments when we stop and listen to birds or insects, look at plants even though we do not know their names, and notice how one season becomes another. It is therefore easy to understand why more people have recently chosen country life. They hope to learn what it feels like to have more time in their minds and how to make their only life more satisfying.

こちらは長い第一文を都会の特徴とその結果に分けました。「無機質」を warmth がないこととして説明し、季節の変化は one season becomes another と平易にしています。「心に余裕」は直訳せず、立ち止まる時間がある状態として表しました。田舎暮らしを必ず幸せにすると断定せず、人々がそう望んで決断するという原文の範囲を守っています。

6

他の問題にも使える形

学習のコツを紹介する Boost のキャラクター Boo
where A surrounds B最重要

場所の特徴を節で示す

都市の説明を主節から分け、どんな場所かを後ろから補えます。

建物に囲まれた都市 → a city where buildings surround us
木々に囲まれた家 → a house where trees surround the garden
高い山に囲まれた村 → a village where high mountains surround the houses
plants whose names S do not know最重要

所有関係をwhoseで開く

知らないのは名前であり植物ではないことを明確にできます。

名も知らぬ草木 → plants whose names we do not know
著者名を知らない本 → a book whose writer I do not know
用途を知らない道具 → a tool whose use we do not know
feel how S slowly V最重要

微妙な変化をhow節にする

変化の仕方を難しい名詞でなく、主語と動詞の節で説明できます。

季節の移り変わりを感じる → feel how the seasons slowly change
町の変化がわかる → see how the town is changing
子どもが少しずつ成長するのを見る → watch how a child slowly grows
It is no wonder that ...最重要

当然だと評価する

事実を述べた後、その理由が理解できるという筆者の判断を加えます。

移住者が増えるのも無理はない → it is no wonder that more people move
彼が疲れたのも無理はない → it is no wonder that he is tired
道が混んだのも無理はない → it is no wonder that the road was crowded
the one N S have最重要

一度きりを平易に示す

かけがえのなさを難語一語でなく、持っている一つだけのものとして説明します。

一度きりの人生 → the one life we have
唯一の機会 → the one chance we have
今日使える唯一の部屋 → the one room we can use today
have far fewer chances to Vよく使う

機会が大幅に減ったと表す

完全になくなったとは言わず、以前と比べて回数が大きく減った変化を現在完了と一緒に示せます。

自然に気づく機会が減った → we have far fewer chances to notice nature
友人と話す機会が減った → I have far fewer chances to talk with my friends
手紙を書く機会が減った → people have far fewer chances to write letters
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この問題の語彙

表現意味ひとこと
concreteコンクリート素材名では通常数えない名詞です。建物を表すときは a concrete とはせず、concrete buildings と名詞を前から修飾します
practical実用的なpractice は練習、practical は実用的という別の語です。practical use の形で機能を優先する意味を表します
surround取り囲むbe surrounded by の直後には囲む側を置きます。分詞で文頭に出すときは、直後の主語が囲まれる人か物かを必ず確かめます
countryside田舎通常 the countryside と冠詞を付けます。hometown は故郷なので、単に都市でない地域へ移る文では置き換えられません
peace of mind心の平穏peace in my mind と単語を直結するより peace of mind のまとまりで使います。時間的な余裕まで言うなら have time to stop を足します
richerより豊かなrich はお金持ちだけでなく、経験や人生の内容が豊かな場合にも使えます。人生を目的語にするなら make life richer の語順です
far fewerずっと少ない数えられる複数の chances を修飾するので fewer を使います。less chances としない点、完全なゼロではない点に注意してください
no wonder無理もない、当然だIt is no wonder that ... の形で使います。wonderful と混同したり、impossible として逆の意味にしたりしないようにしてください
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出題の傾向

2007年は恩師や田舎の星空、2008年は読書の記憶と都会生活、2009年は冗談や古いピアノが題材です。自然や日常の経験から人生観へ進む随筆が続いています。京大は長い修飾をそのまま積むのでなく、知覚したものと考えたことを英語で組み直す力を見ます。この年は how the seasons change と why more people choose the country が中心です。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

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解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。

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