京都大学のロゴ 第Ⅲ問(2) 和文英訳 京都大学 2009
京都大学 2009年度 前期日程 · 英語

第Ⅲ問(2) 和文英訳
解答と解説

身近な題材ですが、「思い出が詰まっている」「処分する気になれない」「買い取って再生させる」といった、日本語では短く言える気持ちや動作を英語でどうほどくかが勝負です。特に、娘が成長した結果として誰も弾かなくなった流れと、持ち主が手放せない気持ちを混同せずにつなぐ必要があります。難しい名詞を探さず、what life used to be like や how it can be used again のように節で説明すると、内容を落とさず安定した答案になります。

難易度 ★★★★★ 目安 20分 和文英訳 テーマ 古いピアノに残る家族の思い出
1

問題

第Ⅲ問(2) 次の文を英訳しなさい。

我が家の古いピアノには懐かしい思い出がたくさん詰まっている。5歳からピアノを始めた娘もすっかり大人になり,今や誰も弾かなくなった。しかし,なかなか処分する気にはなれない。そういうピアノを買い取って再生させる会社があるらしい。プロの手で修理すれば,また美しい音を奏でることができるという。

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この問題で見られている力

  • 「思い出が詰まっている」を物理的な詰め込みと区別して表せるか
  • 5歳から始めて今は大人になった時間の流れを時制で示せるか
  • 「処分する気になれない」を cannot bring ourselves to で気持ちまで残せるか
  • 会社が買い取り、直して再び使えるようにする動作の順序を表せるか
  • 「〜らしい」「〜という」の伝聞を I hear / They say で残せるか
2

文ごとの解説

第 1 文

我が家の古いピアノには懐かしい思い出がたくさん詰まっている。

つまずきやすいところ
  • 「我が家」は our home とし、所有者だけでなく家族の生活を示します
  • ここが山場です。「思い出が詰まる」は be filled with memories と書けますが、中に物が詰まる意味との違いを文脈で支えます
  • 「懐かしい」は一語に無理にせず、happy memories of the past と説明できます
  • 古いのはピアノであり、思い出ではないので修飾位置に注意します
発想の切り替え

ピアノを主語にして holds many happy memories と置けば、ピアノが家族の過去を残しているという比喩が自然に伝わります。さらに what life in our home used to be like と開くと、何が懐かしいのかまで説明できます。

訳例
標準

Our old piano holds many happy memories of what life in our home used to be like.

別解

Our family has many warm memories connected with the old piano in our home.

この文でやりやすい誤り

memories をピアノの中に物理的に詰める

減点 大
Many old photographs are packed inside our old piano.
Our old piano holds many happy memories.

これではピアノの内部に写真が入っているという物理的な話になります。原文の「思い出が詰まっている」は、ピアノを見ると家族の過去を思い出すという比喩です。

この文の言いかえ
思い出が詰まっている
hold many memories比喩のまま自然に書けます
be connected with many memories説明的で安全です
be packed with photographs物が中に詰まる意味になり、原文と違います
第 2 文

5歳からピアノを始めた娘もすっかり大人になり,今や誰も弾かなくなった。

つまずきやすいところ
  • 娘が5歳だった時点と、現在の成長を分けて書きます
  • 「ピアノを始めた」は started learning how to play the piano が安全です
  • 「すっかり大人」は is now grown up と現在の状態で表せます
  • 「誰も〜ない」は no one を主語にすると簡潔です
  • the piano の冠詞を落とさないようにします
発想の切り替え

娘を説明する who 節の中に、始めた年齢を置きます。その後を is now grown up, and no one plays it anymore と進めると、成長した結果として家で弾く人がいない現在まで一本の線になります。

訳例
標準

Our daughter, who started learning how to play the piano at five, is now grown up, and no one plays it anymore.

別解

Our daughter began piano lessons when she was five, but she is an adult now and the piano is no longer played.

この文でやりやすい誤り

「5歳から」を現在完了の継続にしてしまう

減点 大
Our daughter has played the piano since she was five, but no one plays it now.
Our daughter started learning how to play the piano at five.

has played since は娘が今まで弾き続けていることを表します。直後の「今や誰も弾かない」と内容がぶつかります。始めた時点だけを過去形で示す必要があります。

piano の前の冠詞を落とす

減点 小
Our daughter started playing piano when she was five.
Our daughter started playing the piano when she was five.

楽器を演奏するという一般的な言い方では、楽器名の前に the を置きます。日本語には冠詞がないため起こりやすいミスです。

「大人になった」を became adult とする

減点 中
Our daughter became adult, and no one plays the piano now.
Our daughter is now grown up, and no one plays the piano anymore.

adult を可算名詞として使うなら a が必要です。状態を表す grown up を使うと冠詞で迷いません。

誰も弾かないをピアノが弾けない意味にする

減点 大
Now the old piano cannot play anymore.
Now no one in our family plays the old piano anymore.

この形ではピアノに演奏能力がなくなったという意味になります。原文は故障を述べているのではなく、娘が大人になり、家族の中に弾く人がいなくなったという生活の変化です。no one を人の主語にして、演奏者の不在を表します。

この文の言いかえ
すっかり大人になる
be grown up now現在の状態が簡潔に出ます
become an adulta を忘れなければ使えます
mature into adulthoodこの問題には硬すぎるので覚える必要はありません
今や誰も弾かなくなった
now no one plays it anymore演奏者がいない現在の状態を最も平易に示せます
it is no longer played by anyone in the family受け身でも、家族の誰も弾かない意味を保てます
it has fallen into disuse意味は近いですが硬いため、覚える必要はありません
the piano cannot play nowピアノ自身の能力の話になるので使いません
第 3 文

しかし,なかなか処分する気にはなれない。

つまずきやすいところ
  • 省略された主語はピアノの持ち主である we です
  • 「しかし」は直前との逆接なので Even so がよく合います
  • ここが山場です。「気になれない」は単なる cannot ではなく心理的なためらいです
  • 「処分する」は throw it away で十分です
発想の切り替え

物理的に捨てられないのではなく、思い出があるため決心できないという意味です。cannot bring ourselves to を使えば、そのためらいまで平易に表せます。

訳例
標準

Even so, we cannot quite bring ourselves to throw it away.

別解

Still, because of all those memories, we do not feel ready to get rid of it.

この文でやりやすい誤り

処分できない理由を能力不足にする

減点 中
We are not able to throw the piano away.
We cannot bring ourselves to throw the piano away.

not able to は、重くて運べないなど能力や状況のため不可能だと読まれます。原文は思い出があり、気持ちの上で決心できないという話です。

この文の言いかえ
処分する気になれない
cannot bring ourselves to throw it away気持ちのため決心できないことが伝わります
do not feel ready to get rid of it説明的ですが自然です
cannot throw it away物理的に不可能とも読めるため、この文では説明が足りません
第 4 文

そういうピアノを買い取って再生させる会社があるらしい。

つまずきやすいところ
  • 「らしい」は I hear で伝聞として残します
  • 「そういう」は pianos like ours と具体的に受けます
  • 会社は複数あると考え、there are companies とします
  • 買い取りと再生の二段階を buy and repair で並べます
  • 「再生」は難しい一語を探さず、使える状態に戻すと説明します
発想の切り替え

日本語の「再生」を直訳しようとせず、show how they can be brought back to life のように、古いピアノがもう一度使える状態になることを節で示します。

訳例
標準

I hear there are companies that buy pianos like ours and show how they can be brought back to life.

別解

It seems that some companies buy old pianos of this kind, repair them, and make them useful again.

この文でやりやすい誤り

会社がピアノを売る話に変える

減点 大
There are companies that sell old pianos and repair them.
There are companies that buy old pianos and repair them.

sell では会社が古いピアノを売ることになり、持ち主から「買い取る」という取引の向きが逆になります。

「らしい」を事実として断定する

減点 小〜中
There are companies that buy and repair pianos like ours.
I hear there are companies that buy and repair pianos like ours.

文法は整っていますが、原文の「らしい」という伝聞が消え、話し手が確認済みの事実として述べる強さに変わっています。

この文の言いかえ
買い取る
buy pianos like ours平易で向きも明確です
pay the owners for their old pianos動作を開いた安全な言い方です
sell old pianos取引の向きが逆です
再生させる
make them useful again難語なしで意味を説明できます
bring them back to life物を生き返らせる比喩として使えます
revitalize them知っていれば使えますが、覚える必要はありません
第 5 文

プロの手で修理すれば,また美しい音を奏でることができるという。

つまずきやすいところ
  • 「プロの手で」は a skilled worker を主語にして自然にします
  • 修理が条件なので if 節を使います
  • 「〜という」は They say で伝聞を保ちます
  • 「音を奏でる」は make a beautiful sound と平易に書けます
  • again / once again で「また」を落としません
発想の切り替え

by professional hands と手を直訳するより、誰が修理するかを if a skilled worker repairs one と書くほうが自然です。one は同種の古いピアノを受けています。

訳例
標準

They say that if a skilled worker repairs one, it can once again make a beautiful sound.

別解

A piano like this can produce a beautiful sound again when it is repaired by someone who knows how to do the job.

この文でやりやすい誤り

修理する人とピアノを同じ主語にする

減点 大
If the piano repairs, it can make a beautiful sound again.
If a skilled worker repairs the piano, it can make a beautiful sound again.

repair はここでは人が物を修理する他動詞です。この形ではピアノが自分自身を修理する意味になってしまいます。

sound を可算名詞なのに無冠詞で置く

減点 小
The piano can make beautiful sound again.
The piano can make a beautiful sound again.

ここでは一台のピアノが出す美しい音を a beautiful sound と数えます。sound を単数の可算名詞で使うのに冠詞がありません。

この文の言いかえ
プロの手で修理すれば
if a skilled worker repairs it人を主語にする一番安全な形です
if it is repaired by a professional受け身でも正解です
if professional hands repair ithands の直訳が不自然です
美しい音を奏でる
make a beautiful sound冠詞を含めた平易な形でおすすめです
sound beautiful again音の状態を形容詞で表す形でも自然です
play beautiful soundsound が無冠詞で、ピアノ自身が曲を演奏する形にもずれるため使いません
3

模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×2 / what節 ×187語

Our old piano holds many happy memories of what life in our home used to be like. Our daughter, who started learning how to play the piano at five, is now grown up, and no one plays it anymore. Even so, we cannot quite bring ourselves to throw it away. I hear there are companies that buy pianos like ours and show how they can be brought back to life. They say that if a skilled worker repairs one, it can once again make a beautiful sound.

家族の過去から現在、そしてピアノの新しい可能性へという順序をそのまま保ちました。what life in our home used to be like で思い出の中身を説明し、how to play と how they can be brought back to life で、硬い名詞に頼らず動作を示しています。「らしい」と「という」は I hear と They say に分け、話し手が直接確認した事実ではないことも残しました。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×2 / what節 ×295語

Our family has many warm memories connected with the old piano in our home. Our daughter began piano lessons when she was five, but she is an adult now and the piano is no longer played. Still, because of what the piano means to us, we do not feel ready to get rid of it. It seems that some companies know how to buy old pianos, repair them, and make them useful again. People say such a piano can make a beautiful sound again if someone who knows how to repair it works on it.

比喩的な holds memories が出なければ、memories connected with the piano と関係を説明して大丈夫です。「処分する気になれない」も because of what the piano means to us を足すと理由が明確になります。長めですが、買い取り、修理、再利用という情報を一つずつ置いているので、原文の内容を落とさず採点者にも追いやすい答案です。

6

他の問題にも使える形

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what S used to be like最重要

昔の様子を節に開く

「昔の生活」「かつての状態」を硬い名詞にせず、中身まで説明できます。人や町の変化を述べる問題にもそのまま使えます。

我が家の昔の暮らし → what life in our home used to be like
昔の町の様子 → what the town used to be like
学生時代の父の様子 → what my father used to be like as a student
start learning how to Vよく使う

方法を学び始める

「〜を始める」を、何ができるようになる学習かまで開く形です。楽器や技能の話で使いやすいです。

ピアノを始める → start learning how to play the piano
泳ぎを習い始める → start learning how to swim
料理を習い始める → start learning how to cook
cannot bring oneself to V最重要

気持ちの上でどうしてもできない

能力ではなく、ためらいや愛着のため決心できない場面に使います。oneself は主語に合わせて変えてください。

処分する気になれない → we cannot bring ourselves to throw it away
真実を話す気になれない → he could not bring himself to tell the truth
古い手紙を捨てる気になれない → she cannot bring herself to throw away the old letters
I hear (that) ...よく使う

伝聞の「〜らしい」

自分で確認した事実ではなく、聞いた情報だという距離を簡単に残せます。

会社があるらしい → I hear there are companies ...
店が閉まるらしい → I hear the shop will close
来週雨になるらしい → I hear it will rain next week
if S V, S can Vよく使う

条件と可能性を結ぶ

ある処置をすれば可能になる、という因果を明確にします。日本語で省略された動作主も補えます。

修理すればまた鳴る → If a worker repairs it, it can make a sound again
毎日練習すれば上達できる → If you practice every day, you can improve
少し休めばまた集中できる → If you take a short break, you can concentrate again
no one V anymoreよく使う

今はもう誰もしない

物の能力が失われたのではなく、その行動をする人が現在はいないという変化を表せます。

今や誰もピアノを弾かない → no one plays the piano anymore
今は誰もその部屋を使わない → no one uses the room anymore
今では誰もその話を信じない → no one believes the story anymore
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この問題の語彙

表現意味ひとこと
hold memories思い出を宿す写真などが物理的に中に入る意味ではありません。物が思い出を呼び起こす比喩として hold memories を使います
grown up大人になったadult を名詞で使うなら become an adult と a が必要です。grown up なら be grown up の形で冠詞を避けられます
anymore今はもう否定文の末尾に置くのが基本です。肯定文で still と同じ位置に置かないようにしてください
get rid of〜を処分するof まで含む形で、目的語を後ろに置きます。能力ではなく気持ちのため処分できないなら cannot bring oneself to を足します
repair修理する人 repairs a thing の他動詞です。物を主語にして the piano repairs とすると、ピアノが自分を修理する意味になります
skilled熟練したprofessional hands と「手」を直訳せず、skilled worker のように修理する人を主語にしてください
make a sound音を出す一つの音として言うときは a sound と冠詞を付けます。make beautiful sound と無冠詞にしないでください
bring oneself toどうしても〜する気になるoneself は主語に合わせます。we なら ourselves、she なら herself とし、後ろには動詞の原形を置きます
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出題の傾向

京大のこの時期の和文英訳は、2008年第(1)問の読書の記憶、2009年第(1)問のユーモア、2010年第(1)問の列車旅行の記憶のように、身近な経験から一般的な意味を語る文章が中心です。この問題も難語より、家族の時間の変化と話し手の感情を、英語の主語と時制で組み直せるかが問われています。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

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解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。

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