京都大学のロゴ 第Ⅲ問(2) 和文英訳 京都大学 2014
京都大学 2014年度 前期日程 · 英語

第Ⅲ問(2) 和文英訳
解答と解説

満員電車で少年を見かけた短い出来事を、過去の時間軸にそって描く問題です。「揺られていたら」の途中で出来事が起きる関係、少年が人込みをかき分ける動き、赤い頬と大声から分かる必死さを落とさないことが大切です。後半は事実ではなく書き手の推量なので、Did he ...?、If so、must have been を使い分けます。「あの必死の形相からして」は how desperate he looked と節に開けば、難しい名詞を探さず正確に書けます。直接話法では運転手に過去の駅へ戻ってほしいという、現実には無理のある子供の叫びをそのまま残してください。 物語文では、細部を辞書順に並べるより、読み手が何をいつ見たかを再現することが重要です。少年がこちらへ走ってきたのか、車内を通り過ぎただけなのかは原文だけでは確定しないため、toward me のような情報を標準解では足していません。また、忘れ物の正体も不明なので bag や ticket と決めず something のままにします。分からない事実を分からないまま正確に書くことも、和文英訳の大切な技術です。

難易度 ★★★★ 目安 25分 和文英訳 テーマ 満員電車を駆ける少年と忘れ物
1

問題

第Ⅲ問(2) 次の文を英訳しなさい。

きのう通勤帰りの満員電車で揺られていたら,小学生くらいの男の子が大きな声を張り上げて車内の人込みをかき分けて走ってきた。子供は頬を真っ赤に染めて,「運転手さん,さっきの駅で降ろしてください!」と叫んでいた。そしてたちまちのうちに私の目の前から姿を消してしまった。忘れ物でもしたのだろうか?だとしたら,あの必死の形相からして,よほど大事なものだったに違いない。

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この問題で見られている力

  • 過去進行形と単純過去を使って背景と新しい出来事を分けられるか
  • push through the crowd で人込みをかき分ける動きを示せるか
  • 頬が赤い状態を his face was bright red と自然に描けるか
  • 直接話法の呼びかけと依頼を引用符内で正しく書けるか
  • must have been で過去についての強い推量を表せるか
  • how desperate he looked から大切さを判断する論理を示せるか
2

文ごとの解説

第 1 文

きのう通勤帰りの満員電車で揺られていたら,小学生くらいの男の子が大きな声を張り上げて車内の人込みをかき分けて走ってきた。

つまずきやすいところ
  • 背景は過去進行形、少年の登場は単純過去にすると場面が動きます
  • 「通勤帰り」は on my way home from work と説明できます
  • 満員電車は a crowded train で十分で、直訳的な full train は避けます
  • 小学生くらいは a boy who looked about elementary-school age と見た目に開きます
  • ここが山場です。人込みをかき分ける動きは pushed his way through the crowd とします
  • 大声を張り上げる様子は shouting at the top of his voice で同時に示せます
発想の切り替え

一文に情報が多いので、私が電車に乗っていた背景と、少年が走ってきた出来事を when で分けます。「小学生くらい」は年齢を断定せず、how young he looked に近い見た目の判断として who looked ... としてください。揺れそのものを細かく訳すより、満員電車の中にいた状況を先に確立すると読みやすくなります。

訳例
標準

Yesterday, while I was on a crowded train on my way home from work, a boy who looked about elementary-school age came running through the crowd, shouting at the top of his voice.

別解

Yesterday I was being carried home in a packed train when a young boy pushed his way through the people and ran toward me, crying out loudly.

この文でやりやすい誤り

満員電車を a full train とする

減点 大
I was on a full train on my way home.
I was on a crowded train on my way home.

full train は列車全体が満杯という直訳に聞こえ、車内の混雑を自然に表しません。人が多い状態には crowded を使います。

背景も少年の登場も過去進行形にする

減点 中
A boy was coming while I was riding the train.
A boy came running while I was riding the train.

少年が現れた出来事まで進行形にすると、いつ起きたかの輪郭がぼやけます。背景だけを進行形にしてください。

小学生だと断定する

減点 中
An elementary school student ran toward me.
A boy who looked about elementary-school age ran toward me.

原文は見た目から「くらい」と判断しています。所属を確定せず、looked about ... age と弱める必要があります。

人込みを cut で切る

減点 大
The boy cut the crowd and ran toward me.
The boy pushed his way through the crowd.

cut the crowd では人を切るように読めます。人の間を押し進む動きは push one's way through が自然です。

この文の言いかえ
通勤帰り
on my way home from work最も自然で短く背景を置けます
while going home after work動作を節で説明する形でも正解です
on my returning commutereturning commute という組合せは使いません
満員電車
a crowded train人の混雑を直接示せます
a train full of people少し長いですが状況が明確です
a full train満員の自然な言い方になりません
小学生くらい
about elementary-school age年齢の見た目として安全です
who looked eight or nine年齢を幅で示す説明もできます
an elementary school student実際の所属を断定してしまいます
人込みをかき分ける
push one's way through the crowd押し進む様子が伝わります
make one's way through the people動きに重点を置く穏やかな形です
cut the crowd人込みを切るという不自然な表現です
大声を張り上げる
shout at the top of one's voice声量と必死さを示せます
cry out loudly平易な語だけで表せます
raise a big voice日本語の語順を移した不自然な形です
第 2 文

子供は頬を真っ赤に染めて,「運転手さん,さっきの駅で降ろしてください!」と叫んでいた。

つまずきやすいところ
  • 日本語の「頬を染めて」を自分で赤く塗った意味にしないでください
  • 運転手への呼びかけは Driver! と引用文の中に置きます
  • さっきの駅は the last station とすれば直前の駅だと伝わります
  • 降ろしてくださいは let me off ですが、戻る願いなので take me back も補えます
  • 叫んでいたは shouted とし、前文との時系列を過去でそろえます
発想の切り替え

頬の赤さは his face was bright red と状態で書くのが安全です。引用内の Please let me off at the last station は少年の言葉なので、現実に可能かどうかを説明で直す必要はありません。呼びかけ、依頼、感嘆符まで含めて場面の強さを残します。

訳例
標準

His face was bright red, and he shouted, "Driver, please take me back and let me off at the last station!"

別解

With his cheeks red, the boy cried, "Driver! Please let me get off at the station we just left!"

この文でやりやすい誤り

頬を自分で赤くした意味にする

減点 中
The boy painted his cheeks red.
The boy's cheeks were bright red.

painted は少年が頬に色を塗った意味です。走って赤くなった状態だけを be red で示します。

運転手への呼びかけを文の主語にする

減点 小〜中
The driver shouted, "Please let me off!"
The boy shouted, "Driver, please let me off!"

これでは叫んだのが運転手になります。叫び手は少年で、Driver は引用内の呼びかけです。

さっきの駅を next station にする

減点 中
Please let me off at the next station!
Please let me off at the last station!

next station はこれから着く駅です。少年が求めたのはすでに通過した直前の駅なので last station とします。

この文の言いかえ
さっきの駅
the last station直前に通った駅を短く示せます
the station we just left関係節で状況を明確にできます
the before stationbefore をこの位置で形容詞にはできません
第 3 文

そしてたちまちのうちに私の目の前から姿を消してしまった。

つまずきやすいところ
  • たちまちのうちは a moment later や in no time で表せます
  • 姿を消すは disappear from my sight と書けます
  • 出来事が予想外に終わった感じを before I knew it で補えます
  • 主語は前文の the boy を受ける he です
  • 過去の連続なので suddenly disappears と現在形にしないでください
発想の切り替え

日本語の「〜してしまった」を regrettably などと足す必要はありません。速さと、話し手が追えなかった感じを in a moment と from my sight で示せば十分です。短い一文にして、次の問いかけへ間を作りましょう。

訳例
標準

Then, in a moment, he disappeared from my sight.

別解

Before I knew it, the boy was gone from in front of me.

この文でやりやすい誤り

姿を消したを現在形にする

減点 大
Then he suddenly disappears from my sight.
Then he suddenly disappeared from my sight.

物語は yesterday から始まる過去の出来事です。ここだけ現在形にすると時間がずれます。

この文の言いかえ
たちまち姿を消す
disappear in a moment短く速さを表せます
be gone before I know it話し手が追えない感じも出ます
lose his figure quicklyfigure を lose する主語がずれています
第 4 文

忘れ物でもしたのだろうか?だとしたら,あの必死の形相からして,よほど大事なものだったに違いない。

つまずきやすいところ
  • 最初は疑問なので Did he perhaps leave something behind? と問いかけます
  • 「だとしたら」は If so で前の推測を条件として受けます
  • 過去の物への推量は must have been と完了形にします
  • 「よほど大事」は very important to him と人との関係を加えます
  • 「形相」は難しい名詞にせず how desperate he looked と節に開きます
  • 推量を二つとも確定事項に変えないよう、perhaps と must を使い分けます
発想の切り替え

忘れ物をしたかは弱い推測、物が大切だったことは表情からの強い推測です。同じ maybe で処理せず、疑問文と must have been を分けてください。「形相」は expression を無理に使わなくても、judging from how desperate he looked で判断の根拠が自然に伝わります。

訳例
標準

Had he left something behind? If so, judging from how desperate he looked, it must have been very important to him.

別解

I wondered what he had forgotten. If he had left something at the station, the way he looked showed how much it must have meant to him.

この文でやりやすい誤り

忘れ物を確定させる

減点 小
He certainly left his bag at the station.
Perhaps he had left something at the station.

原文は何を忘れたかも、忘れ物をしたかも分かっていません。bag を足さず疑問や perhaps で推測に保ちます。

過去の大切さを must be で書く

減点 中
It must be very important to him.
It must have been very important to him.

少年がその時に探していた物への推量なので must have been が時間に合います。現在の断定に変えないでください。

この文の言いかえ
必死の形相からして
judging from how desperate he lookedhow節で判断根拠を明示できます
the way he looked showed that主語と動詞で説明する安全な形です
from his desperate faceface 自体を desperate とするのは硬く不自然です
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模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×2 / what節 ×191語

Yesterday, while I was on a crowded train on my way home from work, a boy who looked about elementary-school age came running through the crowd, shouting at the top of his voice. His face was bright red, and he shouted, "Driver, please take me back and let me off at the last station!" Then, in a moment, he disappeared from my sight. Had he left something behind? If so, judging from how desperate he looked, I wondered what he had forgotten and how important it must have been to him.

全91語です。背景を while I was ...、少年の登場を came running として時間関係を分けました。引用文は少年の無理な願いを勝手に直さず、そのまま過去の駅へ戻してほしい内容にしています。後半では how desperate、what he had forgotten、how important の三つの節を使い、表情から忘れ物の大切さを推測する流れを明示しました。冠詞は a crowded train、a boy、the last station と、初出と既知を区別しています。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×1 / what節 ×284語

Yesterday I was being carried home in a packed train when a young boy pushed his way through the people and ran toward me, crying out loudly. With his cheeks red, he cried, "Driver! Please let me get off at the station we just left!" Before I knew it, he was gone. I wondered what he had left behind. If he had forgotten something there, the way he looked showed me what it was worth to him and how badly he wanted it back.

全84語です。こちらは crowded train の動きを was being carried home と説明し、人込みを pushed his way through で具体化しました。直接話法の the station we just left によって「さっきの駅」を平易に表しています。最後は what he had left、what it was worth、how badly he wanted it back の三節で、忘れ物の正体は不明でも表情からその価値を推測する流れを示しました。難しい「形相」に頼らず、the way he looked と見えた様子を書く逃げ道です。

6

他の問題にも使える形

学習のコツを紹介する Boost のキャラクター Boo
while S was V-ing, S V-ed最重要

背景の途中で起きた出来事を書く

物語では、続いていた背景を過去進行形、新しく起きた出来事を単純過去にすると読み手が時間を追いやすくなります。

電車に乗っていると少年が来た → While I was on the train, a boy came.
勉強中に電話が鳴った → While I was studying, the phone rang.
push one's way through最重要

人込みの中を進む

push の目的語を crowd にせず、one's way を置いて通り道を作りながら進む動きを表します。所有格を主語に合わせてください。

少年は人込みをかき分けた → The boy pushed his way through the crowd.
彼女は出口へ進んだ → She pushed her way toward the exit.
who looked about ...よく使う

見た目による判断を残す

「〜くらい」に確証がないとき、look を使えば断定を避けられます。入試では原文以上に事実を決めないことが大切です。

小学生くらいの少年 → a boy who looked about elementary-school age
五十歳くらいの男性 → a man who looked about fifty
Before I knew it, ...よく使う

突然の変化を語る

出来事が速く、話し手が気づいた時には終わっていた場面に使えます。物語のテンポを作る短い導入です。

気づくと少年はいなかった → Before I knew it, the boy was gone.
気づくと日が暮れていた → Before I knew it, it was dark.
If so, ...よく使う

直前の推測を条件にする

「もしそうなら」を一語で受けられます。前文に判断や疑問があり、その可能性を受けて次を推測するときに便利です。

もしそうなら大切だったはずです → If so, it must have been important.
もしそうなら計画を変えます → If so, we will change our plan.
must have + 過去分詞よく使う

過去について強く推量する

今ある手がかりから、過去にそうだったはずだと考える形です。must be と時間を混同しないでください。

大事な物だったに違いない → It must have been important.
彼は疲れていたに違いない → He must have been tired.
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この問題の語彙

表現意味ひとこと
crowded混雑した人でいっぱいの場所を表します。crowded train の語順で使います
elementary school小学校複合形容詞では elementary-school age のようにハイフンを置けます
crowd人込み人の集まりを指す数えられる名詞です。この場面では the crowd とします
shout叫ぶ目的語なしでも使え、発言内容は引用符で続けられます
cheek左右をまとめる場面では複数形 cheeks が自然です
let ... off〜を降ろすlet の後ろは目的語と動詞原形です。to get にはしません
disappear姿を消す自動詞なので disappear from my sight とし、目的語を直接置きません
desperate必死の人や様子に使えます。how desperate he looked と節にすると自然です
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出題の傾向

京都大学の2013〜2015年の初めの和文英訳では、抽象論だけでなく、目の前で起きた出来事や話し手の感覚を物語として再現させる問題も見られます。2014年第(2)問は、満員電車という背景、少年の登場、叫び、消失、語り手の推測が短く切り替わります。出来事を全部 and で並べず、while、when、then、if so を使って読者が場面を追えるようにすることが、この大学で求められる再構成力です。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

この問題を解いて添削してもらう

解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。

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