文字に囲まれた生活を基準にして、文字を持たない言語を不便だと決める危うさを論じます。推量、傾向、譲歩、批判の強さを訳し分けます。この問題固有の山場は「文字のない言語を劣ると決めつけないこと」です。日本語の長い名詞を難語一語にせず、誰が何をし、どのような状態かをhow節・what節に開いてください。まず主語と動詞で中心を作り、理由・対比・推量をあとから足します。原文の語順より論理の順序を優先し、内容を落とさない平易な答案を目指しましょう。
世界には文字を持たない言語がたくさんあるらしい。毎日文字に囲まれて暮らしている私たちからすれば,さぞ不便なことだろうと思ってしまいがちだ。しかし,文字があろうがなかろうが,ことばの基本的な働きに変わりはない。文字のある言語のほうが文字のない言語より優れている,と考えるのは,とんでもない思い上がりだろう。
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「文字を持たない」を letters が一つもないと狭く取らず、話し言葉を記録する仕組みがないという no writing system で受けます。「らしい」は筆者が直接すべてを確かめたわけではないので It seems that と断定を弱めます。言語そのものが存在しないのではなく、書き表す体系を持たないという区別が、この後の優劣の議論の出発点です。
It seems that many languages around the world have no writing system.
We are told how many languages are not written down.
alphabet は表音文字を一定の順序に並べた体系です。漢字のようにアルファベットではない文字もあるため、これでは書く仕組みがないのではなく、アルファベットだけがないという別の意味になります。
many は数えられるものが複数あることを示すので、単数の language とは結びつきません。一言語だけの存在に見える形になり、「世界にたくさんある」という出発点を正しく表せません。
unwritten は書き表す体系がないという意味で、話し言葉や語彙がないという意味ではありません。この文では、言語の一形態を言語そのものの欠如へ変えてしまいます。
毎日文字に囲まれて暮らしている私たちからすれば,さぞ不便なことだろうと思ってしまいがちだ。
まず Because we live surrounded by writing と、そう考えてしまう側の生活条件を理由にします。「不便なこと」は inconvenience 一語で決めず、how inconvenient life without it must be と節に開けば、文字のない暮らし全体を不便だと想像していることが明確です。tend to は、誰もが必ずそう考えるのではなく、文字中心の生活からその判断に傾きやすいという原文の慎重さを残します。
Because we live surrounded by writing, we tend to imagine how inconvenient life without it must be.
From our view, we wonder how people can live without writing.
surround by us では surround の目的語がなく、words が何を囲むのかという能動の形も完成しません。原文では私たちが文字に囲まれる側なので、We are surrounded by ... と視点を戻します。
tend の後ろは to + 動詞の原形です。thinking とすると文の形が止まり、「そう考えがちだ」という繰り返し起こる傾向を述べる述語になりません。
しかし,文字があろうがなかろうが,ことばの基本的な働きに変わりはない。
「あろうがなかろうが」は whether a language is written or not と二つの条件を並べます。「基本的な働き」は function を置くだけでも書けますが、what language basically does とすれば、人が考えを伝え理解し合う働きだと読めます。文字は記録の方法を変えても、ことばが人と人を結ぶ中心の働きまでは変えない、という対比を does not change で支えます。
However, whether a language is written or not does not change what language basically does.
Writing makes no difference to how language carries what people think.
whether it has writing だけでは、文字がある場合の条件だけを示したまま対になる条件が閉じません。or not を加えて初めて、文字の有無のどちらでも働きは同じだという原文の範囲になります。
functionally は「機能の面では」という副詞なので、同じだと評価される物そのものになれません。function と名詞に直さないと、ことばの基本的な働きが変わらないという判断の主語がなくなります。
if では文字がない場合だけの条件になり、何と比べて同じなのかが示されません。原文は文字がある場合とない場合の両方を一つの範囲に入れて、働きは変わらないと述べています。
文字のある言語のほうが文字のない言語より優れている,と考えるのは,とんでもない思い上がりだろう。
「思い上がり」に難しい名詞を探さず、we would be thinking much too highly of ourselves と行動に開きます。優れているという比較は a written language was better than an unwritten one と、何を何と比べるのかを明示します。would を使うのは、筆者が読者を直接責め切るのではなく、もしそう考えるならそれは思い上がりだ、と一歩引いて批判しているからです。
We would be thinking much too highly of ourselves if we thought that a written language was better than an unwritten one.
We think too highly of ourselves if we believe writing makes a language better.
better の中にすでに「よりよい」という比較が入っているため、more を重ねると比較を二度作ることになります。書記言語と非書記言語の優劣という主張を示すなら better than だけで十分です。
be proud はその優越判断を肯定的に受け入れる意味です。原文は、文字がある側を上に置く発想そのものを思い上がりとして批判しているので、評価の向きが正反対になります。
It seems that many languages have no writing system. Because we live surrounded by written words, we tend to imagine how inconvenient life without writing must be. However, whether a language is written or not does not change what language basically does or how people use it to share what they think. We would be thinking much too highly of ourselves if we thought that a written language was better than an unwritten one.
no writing system は、話し言葉がないのではなく、ことばを書き表す仕組みがないという意味です。第2文では how inconvenient で私たちが想像する不便さを示し、第3文では what language basically does、how people use it、what they think と、ことばの働きを内容へ開きました。whether ... or not は文字がある場合とない場合を対等に扱います。最後は think too highly of ourselves として、文字の便利さを認めることと、文字のある言語を上位に置くことを区別しています。
Many languages are not written down. Since we see writing every day, we may ask how people live without it. Yet writing does not decide what a language can do, how speakers understand one another, or what they pass on. We think too highly of ourselves if we call a language with writing better.
こちらは writing system が出ないときに are not written down と動作で説明した版です。「基本的な働き」も、話し手同士がどう理解し、何を伝えるかという二つの働きにほどきました。call a language with writing better とすれば、superior のような語を知らなくても優劣の判断を表せます。大切なのは、文字のない生活を不便だと感じる私たちの視点と、言語の価値そのものは別だという論理を崩さないことです。

「文字体系」を説明する
個々の letter ではなく、ことばを書き表す仕組み全体を示します。have no ... と組み合わせれば、その言語が劣るという評価を加えず、文字体系がないという事実だけを書けます。
「〜らしい」を説明する
自分で確認した事実として断定せず、見聞きした情報からそう考えられると示します。that 以下に完全な文を置くので、何がそうらしいのかも曖昧になりません。
「囲まれる」を説明する
囲む物ではなく、囲まれる人や場所を主語に置く受け身です。by の後ろに何に囲まれているかを置き、生活環境から生まれる見方を説明できます。
「〜しがち」を説明する
必ずそうするのではなく、繰り返しその方向へ傾くことを示します。後ろは動名詞ではなく to + 動詞の原形にしてください。
「基本的働き」を説明する
function のような抽象名詞を探さず、言語が実際に何をするかとして働きを説明します。does の中身を後ろの文で伝達や理解へ具体化することもできます。
有無にかかわらない範囲を作る
二つの可能性を同じ文の条件に入れられます。片方だけを述べる if と違い、どちらの場合にも結論が変わらないことを示します。
| 表現 | 意味 | ひとこと |
|---|---|---|
| writing system | 文字体系 | letters だけではアルファベットの文字に狭まりやすいので、仕組み全体なら writing system とします。可算なので一つなら a が必要です |
| seem | 〜らしい | It seems that S V の形で使い、It is seeming とはしません。断定を避ける語なので certainly と同時に置かないでください |
| surround | 囲まれる | 人を主語にするなら be surrounded by の受け身です。surround by us のように be を落とすと形が完成しません |
| tend | 〜しがち | 後ろは tend to think のように to + 動詞の原形です。tend thinking と動名詞を続けないでください |
| function | 基本的働き | 名詞は function、形容詞は functional、副詞は functionally です。文の主語に置くときは function を選びます |
| think | 思い上がり | think too highly of oneself のまとまりで使い、oneself は主語に合わせて ourselves などに変えます。be proud では肯定的な誇りに変わります |
| unwritten | 文字で書かれない | unwritten language は文字体系を持たない言語で、words や話し言葉がないという意味ではありません |
| whether | 〜かどうか、〜であろうとなかろうと | 両方を明示するなら whether ... or not とします。if だけにすると片方の条件に狭まることがあります |
2014年の人間関係、2015年の言語、2016年のパン作りと、身近な常識を問い直す文章が続いています。
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