京都大学のロゴ 第Ⅲ問 和文英訳 京都大学 2022
京都大学 2022年度 前期日程 · 英語

第Ⅲ問 和文英訳
解答と解説

旅の途中で車窓を眺める楽しさから、見知らぬ人々の暮らしを想像し、自分の悩みが小さく感じられる心の動きへ進む文章です。「捨てがたい」「目の保養」「その人なりの喜びや悲しみ」「心がふっと軽くなる」など、日本語らしい言い回しが連続します。直訳できる英単語を探すより、what we see、how each person lives、how small our own worries seem と節に開き、視線と気持ちの変化を順に描くことが得点につながります。

難易度 ★★★★ 目安 27分 和文英訳 テーマ 車窓の眺めと心の解放
1

問題

第Ⅲ問 次の文を英訳しなさい。

数ある旅の楽しみのなかで,車窓からの眺めというのもまた捨てがたい。そこに美しい自然が広がっていれば,ただただ目の保養になる。でも,ありふれた田舎や街並みを眺めているのも悪くない。そこに見かける,きっとこの先出会うこともなさそうな人々は,みなそれぞれにその人なりの喜びや悲しみとともに暮らしている。そう思うと,自分の悩み事もどこか遠くに感じられて,心がふっと軽くなる気がするのだ。

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この問題で見られている力

  • 「数ある楽しみのなかで」を one of the pleasures と可算名詞で処理できるか
  • 「捨てがたい」を worth enjoying / too good to miss と意味で言えるか
  • 「目の保養」を pleasing to the eye と説明できるか
  • 見知らぬ人々との今後の非再会を we will probably never meet と表せるか
  • 各人の暮らしと自分の心の変化を how 節で具体化できるか
2

文ごとの解説

第 1 文

数ある旅の楽しみのなかで,車窓からの眺めというのもまた捨てがたい。

つまずきやすいところ
  • 「数ある」は many を pleasures の前に置くより、Among the many pleasures of travel とまとめます
  • 車窓は train window と具体化してよく、view from a train window とします
  • ここが山場です。「捨てがたい」は hard to throw away ではなく、見逃すには惜しいという価値の話です
  • one is ... と受けると、数ある楽しみの一つだと明確になります
発想の切り替え

「捨てる」の英語を探すと物を廃棄する話になってしまいます。原文は車窓の眺めも旅の大切な楽しみだと言っています。one we should not miss または worth enjoying と、評価の中身を説明してください。この評価を冒頭に置くのは、後の美しい自然だけでなく、平凡な町並みも楽しみになるという展開を受け止める枠を作るためです。should not miss なら、その幅を保ったまま「捨てがたい」を説明できます。

訳例
標準

Among the many pleasures of travel, what we see from a train window is also something we should not miss.

別解

One of the many things that make travel enjoyable is watching how the view changes outside a train window.

この文でやりやすい誤り

「捨てがたい」を throw away で訳す

減点 大
The view from a train is hard to throw away.
What we see from a train window is something we should not miss.

throw away は物を捨てる動作です。原文は、旅の楽しみとして見逃せないという評価を述べています。旅の楽しみとして評価する文が、持ち物を処分しにくいという物理的な話に変わります。

車窓を car window に限定する

減点 中
The sight from a car window is a pleasure of travel.
The view from a train window is one of the pleasures of travel.

車窓は列車の窓を指す文脈が一般的です。car とすると自動車旅行に限定され、移り変わる沿線風景の内容からずれます。列車から偶然見える人々を想像する後半とのつながりも弱くなります。

この文の言いかえ
捨てがたい
something we should not miss楽しみとして見逃せない意味が伝わります
worth enjoying短く評価を示せます
hard to throw away物を廃棄する意味なので使えません
車窓からの眺め
what we see from a train window眺めを what 節に開いたおすすめの形です
the view from a train window短く自然な名詞句です
a train-window landscape不自然な複合語なので避けます
第 2 文

そこに美しい自然が広がっていれば,ただただ目の保養になる。

つまずきやすいところ
  • 「そこ」は窓の外なので outside the window と補います
  • 「自然が広がる」を nature spreads とせず、we can see beautiful scenery と視点を置きます
  • 「目の保養」は food for the eyes ではなく a pleasure just to look at と説明します
  • 条件の「〜ていれば」は If で素直につなげます
発想の切り替え

英語では自然そのものを主語にして「広がる」とするより、旅行者が窓から何を見るかを主語 we で書くと安定します。what we see is a pleasure to look at と what 節にすれば、「目の保養」の中身も平易に伝わります。「ただただ」は理由を考えず見て楽しむ素直さを表します。simply を使い、景色の価値を大げさな感動へ広げないことで、次文のありふれた眺めとの対比が自然に続きます。

訳例
標準

If beautiful nature stretches out beyond the window, what we see is simply a pleasure to look at.

別解

When we can see beautiful fields and mountains outside, we can simply enjoy how lovely they look.

この文でやりやすい誤り

自然が広がるを nature spreads とする

減点 中
Beautiful nature spreads there.
Beautiful nature stretches out beyond the window.

spread だけでは何がどこに広がるのか不自然です。窓の外に景色が続くことを stretches out beyond the window とします。景色の存在ではなく自然そのものが移動して拡散するように読まれます。

目の保養を food と直訳する

減点 大
It is only food for my eyes.
It is simply a pleasure to look at.

日本語の比喩をそのまま作った形で、自然な英語ではありません。見るだけで楽しい、と機能を説明します。美しい眺めが与える視覚的な楽しさが、目のための食物という奇妙な意味になります。

この文の言いかえ
目の保養
a pleasure to look at見る喜びだと平易に説明できます
beautiful to look at形容詞で短く逃げられます
a feast for the eyes使える比喩ですが、覚えていなくても問題ありません
food for the eyes日本語から作った不自然な比喩です
第 3 文

でも,ありふれた田舎や街並みを眺めているのも悪くない。

つまずきやすいところ
  • But で美しい自然だけがよいわけではないと転じます
  • 「ありふれた」は ordinary で十分です
  • 「田舎や街並み」は country scenes and town streets のように見えるものとして書きます
  • 「悪くない」は not bad でもよいですが、can also be enjoyable と肯定に開くと自然です
発想の切り替え

not bad を避ける必要はありませんが、前文が pleasure なので can also be enjoyable とそろえると流れがきれいです。「眺めている」は looking at より watching のほうが、列車から移り変わる景色を見る感じを出せます。ここは美しい景色から平凡な生活風景へ視線が移る転換点です。Yet や But を先に置き、ordinary を価値の低さではなく、日常が見える景色として扱うと後の人々への想像につながります。

訳例
標準

But watching ordinary country scenes and town streets can also be enjoyable.

別解

Still, it is not bad to watch what everyday life looks like in the countryside and in towns.

この文でやりやすい誤り

ordinary を boring に変える

減点 中
Watching boring villages is not bad.
Watching ordinary country scenes can also be enjoyable.

ordinary はありふれているというだけで、退屈だと否定的に決めていません。boring では筆者の温かい視線が失われます。平凡な景色にも価値を見いだす原文が、退屈なものを我慢して見る話へ変わります。

この文の言いかえ
ありふれた田舎や街並み
ordinary country scenes and town streets見える対象を具体的にできます
everyday views of villages and towns日常的な景色という言い換えです
boring villages and cities退屈だという余計な評価を加えてしまいます
第 4 文

そこに見かける,きっとこの先出会うこともなさそうな人々は,みなそれぞれにその人なりの喜びや悲しみとともに暮らしている。

つまずきやすいところ
  • 「そこに見かける」は people we see from the window と関係節にします
  • 「この先出会うこともなさそう」は whom we will probably never meet と推量を残します
  • ここが山場です。「その人なりの喜びや悲しみ」を名詞の所有だけで終えず、what makes each of them happy or sad と開きます
  • all / each の対応を整理し、each of them lives と単数一致にします
  • 「暮らしている」は live their own lives と自然に受けられます
発想の切り替え

長い修飾を前から積まず、まず The people we see ... all live ... と骨組みを作ります。そのあと whom we will probably never meet を挿入します。喜びや悲しみは their joys and sorrows でもよいですが、what makes each of them happy or sad とすれば、「その人なり」が各人で違うことまで出せます。筆者は見知らぬ人の人生を知っているのではなく、車内から一瞬見て想像しています。probably と imagine を残すのは、他人の喜びや悲しみを断定せず、距離を保った温かな視線にするためです。

訳例
標準

The people we see there, whom we will probably never meet, all live their own lives with what makes each of them happy or sad.

別解

Each person we happen to see has a life of their own, and we can only imagine how they live with their particular joys and troubles.

この文でやりやすい誤り

never meet の推量を落とす

減点 小〜中
We never meet the people we see there.
We will probably never meet the people we see there.

原文は「きっと〜なさそう」と推測しています。断定すると、将来の事実を知っているかのような強い文になります。二度と会わないと確定した人々の話になり、旅先の一瞬の想像という控えめさが消えます。

each people と書く

減点 大
Each people lives with their own joys and sorrows.
Each person lives with their own joys and sorrows.

each の直後には単数名詞を置くため each person です。喜びと悲しみの両方や lives の単数扱いは残っていますが、people だけが each と一致せず、一人ひとりという個別性を正しく作れません。

見知らぬ人々を不幸だと決めつける

減点 大
The people we see all live sad lives, so our problems seem small.
They each live with what makes them happy or sad, and thinking about their lives makes our worries seem farther away.

原文は一人ひとりに喜びも悲しみもあると想像しており、全員が不幸だとは述べていません。この文では他人の不幸と自分の悩みを比べて安心する話になり、さまざまな暮らしへ思いを広げた結果、心が軽くなるという意味が変わります。

この文の言いかえ
その人なりの喜びや悲しみ
what makes each person happy or sad各人で中身が違うことを what 節で示せます
their own joys and troubles短くまとめる場合に使えます
each happiness and sadnesseach のかかり方が不自然で意味が通りません
この先出会うこともなさそうな人々
people whom we will probably never meetprobably で推量を残し、whom 以下で人々を説明できます
people we are unlikely to meet againagain を使うと、車窓から一度見たことも表せます
people we never meet absolutely語順が不自然で、将来を断定しすぎるため使いません
第 5 文

そう思うと,自分の悩み事もどこか遠くに感じられて,心がふっと軽くなる気がするのだ。

つまずきやすいところ
  • 「そう思うと」は When we think about how they live と内容を明示します
  • 「悩み事」は worries で十分です
  • 物理的な far だけでなく seem less close and less serious と心理的な距離を説明できます
  • ここが山場です。「心が軽くなる」は one's heart becomes light の直訳を避け、feel less troubled とします
  • 「気がする」は seem / feel を使って断定を弱めます
発想の切り替え

心を物体のように軽くするより、悩みが遠く小さく感じられ、その結果気分が楽になると二段階で書きます。how different their lives may be と考える対象を示すと、「そう」の指示内容も英語で明確になります。心が軽くなるのは、他人のほうが不幸だからではありません。自分の悩みだけに集中していた視野が広がるためなので、their lives を考えた結果として worries seem smaller とつなぎます。

訳例
標準

When we think about how each of them lives, our own worries somehow seem farther away, and we notice how much lighter we feel.

別解

Thinking about what their lives may be like makes our own troubles seem less close, and for a moment we feel free from what has been worrying us.

この文でやりやすい誤り

心が軽いを light heart と機械的に作る

減点 大
My heart becomes lightly.
Our worries seem smaller, and we feel less troubled.

lightly は副詞で becomes の補語には置けません。また直訳より、悩みが小さく感じられると説明するほうが意味が明確です。気持ちの変化ではなく、心臓が軽い方法で動くような意味になってしまいます。

「そう」の内容が不明なままにする

減点 中
When I think so, my worries go far away.
When we think about how those people live, our worries seem farther away.

so が何を指すか英語では追いにくく、worries が物理的に移動するようにも聞こえます。見知らぬ人の暮らしを考える、と明示します。他人の暮らしを思うことが自分の悩みとの距離を変える、という因果が読み手に届きません。

この文の言いかえ
心がふっと軽くなる
feel less troubled for a moment心理的な軽さを直接説明できます
our worries seem smaller原因側を述べる安全な言い換えです
our hearts become lightly副詞の位置も意味も不自然です
暮らしに思いをめぐらす
think about how they live暮らし方の中身を how 節で開く基本形です
imagine what their lives are like実際には知らず想像していることを明確にできます
contemplate their individual existences意味は通りますが硬く、今回の答案で覚える必要はありません
3

模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×2 / what節 ×399語

Among the many pleasures of travel, what we see from a train window is also something we should not miss. If beautiful nature stretches out beyond the window, what we see is simply a pleasure to look at. But watching ordinary country scenes and town streets can also be enjoyable. The people we see there, whom we will probably never meet, all live their own lives with what makes each of them happy or sad. When we think about how each of them lives, our own worries somehow seem farther away, and we notice how much lighter we feel.

標準解では「車窓からの眺め」と「目の保養」を what we see で受け、「その人なりの喜びや悲しみ」を what makes each of them happy or sad と開きました。最後は how each of them lives と how much lighter we feel で、他人の暮らしを想像した結果、自分の気持ちが変わる流れを示しています。how節2個、what節3個です。比喩を逐語訳せず、誰が何を見てどう感じるかを動詞で追えば十分です。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×4 / what節 ×399語

One of the many things that make travel enjoyable is watching how the view changes outside a train window. When we can see beautiful fields and mountains, we enjoy how lovely they look. Yet ordinary villages and towns are worth watching too. Each person we happen to see has a life of their own, and we can only imagine what makes them smile, what makes them sad, and how they spend each day. Thinking about how different their lives may be makes our own troubles seem smaller and helps us forget what has been worrying us for a while.

こちらは nature や mind の抽象度も下げ、fields and mountains、smile、spend each day と目に見える動作へ置き換えました。車窓の楽しさを how the view changes、各人の喜びと悲しみを二つの what 節で説明しています。最後は troubles seem smaller として、心理的な遠さを大きさに言い換えました。原文の情景、見知らぬ人への想像、自分の心が軽くなる結末はすべて残っています。

6

他の問題にも使える形

学習のコツを紹介する Boost のキャラクター Boo
Among the many ..., what S V is ...よく使う

多数の中から一つを取り上げる

「数ある〜のなかで」を導入し、取り上げる内容を what 節で置けます。

旅の楽しみのなかで車窓は格別だ → Among the pleasures of travel, what we see from a train is special.
学ぶ喜びの中でも理解は大きい → Among the joys of learning, what we understand matters greatly.
多くの休日の楽しみの中で読書は特別だ → Among the pleasures of a holiday, what I read is special.
what we see / hear / feel最重要

知覚の内容を節に開く

view や sound の適切な名詞が出なくても、何を見るか、聞くか、感じるかをそのまま節にできます。

車窓からの眺め → what we see from a train window
耳にしたこと → what we heard
窓の外で聞こえたこと → what we heard outside the window
someone whom S will probably never meetよく使う

将来の非再会を控えめに述べる

never と断定せず probably を加え、先行詞を関係節で説明します。

二度と会わなそうな人 → someone whom we will probably never meet
再訪しなそうな町 → a town that I will probably never visit again
もう訪れなさそうな店 → a shop that I will probably never visit again
what makes S + 形容詞最重要

感情の原因を説明する

joy や sorrow を名詞のまま並べず、何が人をその気持ちにするかを what 節で示せます。

その人なりの喜びや悲しみ → what makes each person happy or sad
彼を怒らせるもの → what makes him angry
子どもを安心させるもの → what makes a child feel safe
think about how S V最重要

状況のあり方を想像する

「そう思う」の so を放置せず、考える内容を how 節で明示できます。

彼らがどう暮らすか考える → think about how they live
町がどう変わったか考える → think about how the town has changed
友人がなぜ黙ったのか考える → think about why my friend became quiet
make O seem + 形容詞よく使う

見方が変わることを表す

外の出来事が自分の問題の見え方を変える因果関係を一文で示せます。

悩みが小さく感じられる → make our troubles seem smaller
課題が簡単に見える → make the task seem easier
休みが仕事を小さく見せる → a break can make the task seem smaller
7

この問題の語彙

表現意味ひとこと
pleasure楽しみ、喜び一つの楽しみなら a pleasure、複数なら pleasures です
train window列車の窓、車窓window of a train より短く自然です
scenery景色通常は数えない名詞なので sceneries としません
ordinaryありふれた、普通のboring のような否定的評価までは含みません
by sight見たところでは、顔だけはknow someone by sight で顔見知りを表します
worry悩み、心配名詞では複数の悩みを worries とすることが多いです
farther awayより遠くに心理的な距離にも比喩的に使えます
troubled悩んでいるfeel troubled として心の状態を表せます
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出題の傾向

京大第III問は、2021年のことわざと比喩、2023年の善意と見返り、2024年の無知と学びのように、自然な日本語を英語の論理へ組み直す問題が続いています。2022年は抽象論だけでなく情景描写が入り、現在形の一般論と、車窓を眺めたときの想像を滑らかにつなぐ力も求められます。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

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解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。

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