人への親切が予想どおりの見返りを生むとは限らず、むしろ善意からしたことが思わぬ形で返ってくるという随筆です。「損得勘定で動く」「便宜を図る」「コロッと忘れる」「恩に報いる」を、辞書の難しい一語に頼らず、何を期待し、何をして、どれほど感謝したかという節に開けるかで差がつきます。最後のことわざも直訳だけで終えず、ここまでの論理につながる形で意味を残す必要があります。
人間,損得勘定で動くとろくなことがない。あとで見返りがあるだろうと便宜を図っても,恩恵を受けた方はコロッと忘れているものだ。その一方で,善意で助けた相手がずっと感謝していて,こちらが本当に困ったときに恩に報いてくれることもある。「情けは人のためならず」というが,まさに人の世の真理を突いた言葉である。
解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。
アプリでこの問題を解く 無料で1日2回まで添削できます人間,損得勘定で動くとろくなことがない。
最初の文は文章全体の主張です。「損得勘定」にぴったりの難しい名詞を探す必要はありません。得るものと失うものを考えることだ、と内容を what 節で説明すれば十分です。また「人間」を名詞で立てると大げさになりやすいので、読み手を含む we を使い、行動の基準を guide every action と言葉にします。
When we let thoughts of what we may gain or lose guide every action, things rarely go well.
Things seldom turn out well when people act only after asking what they will get in return.
move by は人の行動原理を表す言い方になっておらず、calculation も実際に数字を計算する感じが強くなります。「何を得て何を失うかばかり考える」という意味が伝わりません。
元の文は経験から述べる一般的傾向で、未来永劫よいことが一つもないと断言しているわけではありません。ever を伴う全否定は筆者の主張を強くしすぎます。
あとで見返りがあるだろうと便宜を図っても,恩恵を受けた方はコロッと忘れているものだ。
日本語では「見返り」「便宜」「恩恵」と名詞が続きますが、英語でも名詞を三つ並べると硬くなります。こちらが favor をし、相手が help を受け、相手が what we did を忘れる、という三つの動作に組み直してください。even if を先に置けば、「期待して親切にしたのに忘れられる」というずれも自然に出せます。
Even if we do someone a favor because we expect something in return later, the person who received our help may completely forget what we did.
We may help someone because we think they will repay us later, but that person may soon forget how we helped them.
convenient は物事が人にとって便利だという形で使い、人を convenient にするとは言いません。ここでは相手のために何かをしてあげるという動作です。
「見返りに」は in return という決まった形で表します。in を落とすと、something と return がつながらず、文法的に正しい英文になりません。
benefit は通常、The person benefited from our help や Our help benefited the person の形です。ただし、この問題では received our help のほうが簡単で自然です。
その一方で,善意で助けた相手がずっと感謝していて,こちらが本当に困ったときに恩に報いてくれることもある。
第2文との違いは、親切の動機と、相手の記憶が続く点です。On the other hand を置いたあと、out of kindness で動機を示し、how grateful they felt で相手の気持ちを節に開きます。「恩」は同じ favor が返ってくると考えればよく、return the favor で十分です。困る時点は未来に限らない一般論なので、現在形でまとめます。
On the other hand, someone we helped out of kindness may remain grateful for what we did and return the favor when we are truly in trouble.
Yet a person we helped simply because we wanted to be kind may remain grateful for our help and help us when we really need it.
thank us forever では、相手が感謝の気持ちを持ち続けるのではなく、永遠にお礼を言い続ける意味に寄ってしまいます。ここでは remain grateful で感謝の気持ちが続くことを表します。
this side は試合のこちら側や対立する陣営を指す言葉です。ここでは親切をした自分たちを指すだけなので、we / us で受けます。
pay は代金や借金には使えますが、kindness をそのまま目的語にはしません。これでは親切に料金を払うように聞こえます。
「情けは人のためならず」というが,まさに人の世の真理を突いた言葉である。
このことわざは「人に情けをかけるな」という意味ではありません。親切は巡って自分にも返る、という前の二文のまとめです。英語の似たことわざを無理に探すより、kindness is not only for the sake of others と意味をそのまま説明してください。「人の世の真理」も truth of the human world と直訳せず、人が共に生きる上で何が本当か、と what と how の節に開きます。
People say that kindness is not only for the sake of others, and this saying shows exactly what is true about how people live together.
There is a saying that kindness to others will one day help the giver, and it tells us something important about how human relationships work.
「情けは人のためならず」は、人に親切にしてはいけないという意味ではありません。親切は巡って自分にも返るという意味なので、この訳では文章全体と反対になります。
hit the truth は自然な組み合わせではなく、human world も人間以外の世界と対比するように聞こえます。人間関係について何が本当かを示す、と説明するほうが確実です。
When we let thoughts of what we may gain or lose guide every action, things rarely go well. Even if we do someone a favor because we expect something in return later, the person who received our help may completely forget what we did. On the other hand, someone we helped out of kindness may remain grateful for what we did and return the favor when we are truly in trouble. People say that kindness is not only for the sake of others, and this saying shows exactly what is true about how people live together.
「損得勘定」「した親切」「感謝が続くこと」「人の世の真理」を、それぞれ what we may gain or lose、what we did、remain grateful for what we did、what is true about how people live together と節に開いています。難しい名詞を探さなくても、期待してした親切は忘れられ、善意の親切は思わぬ時に返るという対比を落とさず書けます。ことわざも直訳だけにせず、前の内容につながる意味を示しました。まずはこの形を目標にしてください。
Things seldom turn out well when people act only after asking what they will get in return. We may help someone because we think they will repay us later, but that person may soon forget how we helped them. Yet a person we helped simply because we wanted to be kind may remain grateful for our help and help us when we really need it. There is a saying that kindness to others will one day help the giver, and it tells us something important about how human relationships work.
こちらは「便宜」「恩恵」「恩に報いる」を一語ずつ訳さず、help を中心にして場面を説明した版です。何を期待したか、どのように助けたか、相手の感謝が続いて困ったときに助けてくれることを順に書いているため、少し長くても論理は明確です。ことわざも kindness to others will one day help the giver と意味を明示しました。決まった英語のことわざを思い出せなくても、説明で押し切って大丈夫です。

損得の中身を節に開く
「損得」「利害」のような抽象的な名詞は、何を得て何を失うか、と動詞を使って説明できます。難しい名詞に頼らず、意味を採点者へ確実に届けられます。
期待と結果のずれを示す
「〜しても、結果はそうならないことがある」を書く形です。譲歩のあとに may を置くと、一般論を強く断言しすぎずに済みます。
行動の動機を書く
because を使わず、「その気持ちから行動した」と簡潔に示せます。善意と見返りを求める行動を対比するときにも便利です。
感情の程度を節で表す
「感謝の気持ち」「驚きの大きさ」のような名詞のかたまりを、実際にどう感じたかという how 節にできます。
親切へのお返しを書く
「恩返し」の難しい一語を探さずに書ける形です。favor が思い出せなければ help in return と説明しても意味は十分伝わります。
抽象的な真理を二段階で開く
「〜の真理」を truth of ... と名詞で重ねず、何が本当なのか、物事がどう動くのかと節に開けます。随筆の結論で使いやすい形です。
| 表現 | 意味 | ひとこと |
|---|---|---|
| gain | 得るもの、利益 | ここでは動詞で使い、what we may gain と節にすると書きやすいです |
| lose | 失う | 過去形・過去分詞はどちらも lost です |
| do someone a favor | 人のために便宜を図る、親切をする | do a favor for someone も使えます。make a favor にはしません |
| in return | お返しに | expect something in return / help someone in return の形で使います |
| out of kindness | 親切心から、善意で | out of は場所の外だけでなく、行動の動機も表せます |
| grateful | 感謝している | 人を主語にして be grateful to 人 for 物事、または how grateful S felt とします |
| return the favor | 親切に報いる、恩返しをする | return a favor も可能ですが、すでに出た親切を指すこの文では the が自然です |
| for the sake of | 〜のために | 利益や目的のためという意味です。for sake of と冠詞を落とさないでください |
京大の第III問は、2022年の車窓からの眺め、2023年のこの問題、2024年の無知と学び、2025年の顔と心の関係と、身近な経験から一般的な真理へ進む随筆が続いています。特に2023年は、見返りを求めた行為と善意の行為を対比し、最後にことわざでまとめる構成です。抽象語を無理に一語へ置き換えるより、誰が何を期待し、相手がどう反応するかまで動詞で書く力が問われています。
解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。
アプリでこの問題を解く iOS · Android · Web で使えます問題文と模範解答をまとめた質問文を用意しました。いつも使っている AI を選ぶと、質問文がコピーされた状態でそのサービスが開きます。
添削そのものは Boost アプリのほうが得意です。AI には「なぜこの訳になるの?」のような、解説の追加質問を投げるのがおすすめです。