抽象的な随筆文の和文英訳です。文の形自体はやさしいのですが、「〜した分だけ」の比例関係、「〜のだろう」の推量、「これが学ぶということ」の言い換えという3つの論理を英語で組み直せるかで差がつきます。難しい単語はまったく必要ありません。むしろ how 節・what 節に開いて、少し説明的に書くほうが確実に点になります。
かつての自分の無知と愚かさを恥じることはよくあるが,それは同時に,未熟な自分に気づいた分だけ成長したことをも示しているのだろう。逆説的だが,自分の無知を悟ったときにこそ,今日の私は昨日の私よりも賢くなっていると言えるのだ。まだまだ知らない世界があることを知る,きっとこれが学ぶということであり,その営みには終わりがないのだろう。
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アプリでこの問題を解く 無料で1日2回まで添削できますかつての自分の無知と愚かさを恥じることはよくあるが,それは同時に,未熟な自分に気づいた分だけ成長したことをも示しているのだろう。
「かつての自分の無知」を of my past ignorance のように名詞で処理すると、「かつての」が形容詞1語につぶれて硬くなります。how ignorant we used to be と節に開けば、used to be という時制だけで「かつての」を表せます。ここが京大の和文英訳で一番よく効く発想です。「〜分だけ」は only as much as を使って、少し説明を足す形で書けば十分。難しい構文はいりません。
We often feel ashamed of how ignorant and foolish we used to be. But at the same time, that feeling probably shows how much we have grown, because we can see how immature we were only as much as we have actually grown.
It often happens that we look back and feel ashamed of how little we knew. Yet that feeling itself probably shows how far we have come, because we can notice how immature we used to be only after we have grown that much.
shame は「誰かに恥をかかせる」という意味の他動詞です。この文だと「過去の自分の無知に恥をかかせる」という、よくわからない文になってしまいます。
It is often that ... という言い方は英語にありません。「よくある」は often という副詞か、It often happens that ... の形で表します。
元の文は「気づいた分だけ成長している」という比例の話をしています。and で並べてしまうと、ただ2つの事実が並んだだけになって、この文が言いたかったことが丸ごと消えます。この問題で一番差がつくところです。
元の文は「示しているのだろう」であって、言い切ってはいません。京大の文章は言い切りと推量がきちんと書き分けられているので、ここを落とすと筆者より強く主張している別の文になってしまいます。第1文と第3文の2か所にあります。
「かつての自分」の話なので過去です。現在形にすると「今の自分が無知だ」という意味になり、第2文の「今日の私は昨日より賢い」と矛盾してしまいます。
逆説的だが,自分の無知を悟ったときにこそ,今日の私は昨日の私よりも賢くなっていると言えるのだ。
「こそ」は It is exactly when ... that ... という強調の形で受けるのが一番安全です。倒置(Only when ... can we ...)でも書けますが、語順を一つ間違えると文が壊れるので、無理に狙う必要はありません。「今日の私/昨日の私」は名詞ではなく today / yesterday という副詞で処理して、動詞のほうで時間差をつけます(we are wiser today than we were yesterday)。日本語の名詞的な発想を、英語の副詞的な発想に切り替える練習として、とてもいい例です。
It may sound strange, but it is exactly when we realize how little we know that we can say we are wiser today than we were yesterday.
It sounds like a contradiction, but the moment we understand how much we still do not know is exactly the moment we can say we are wiser today than we were yesterday.
所有格のあとに me を置く形は英語にありません。また smart は「頭の回転が速い」という意味で、この文の「知恵がついた」という話とはずれています。
意味は通じますが、「こそ」が持っていた「まさにそのときに」という強調がなくなっています。元の文の言い方を再現できていない分だけ減点されます。
まだまだ知らない世界があることを知る,きっとこれが学ぶということであり,その営みには終わりがないのだろう。
「まだまだ知らない世界がある」は、there is still so much we do not know と「量」で言いかえるのが一番自然です。ここでも how much / so much という形が効きます。「これが〜ということだ」は what 節で受けるのが定番で、京大ではほぼ毎年どこかで使えます。「その営み」を process や pursuit のような単語で受けようとすると急に硬くなるので、it で受けて there is no end to it とするほうがきれいにまとまります。
Knowing that there is still so much we do not know — this is surely what it means to learn, and there is no end to it.
To learn, surely, is to keep finding out how much is still unknown to us, and that is something that never ends.
英語の world は「地球・世の中」が基本の意味です。複数形にすると「異世界・別の惑星」のように聞こえてしまい、「まだ知らない領域がある」という日本語の比喩とはずれます。
これだと「これが学ぶべき内容だ」という、まったく違う意味になります。元の文は「学ぶという行為はこういうことだ」と言っています。
the end の冠詞が違いますし、have を使うのも不自然です。
We often feel ashamed of how ignorant and foolish we used to be. But at the same time, that feeling probably shows how much we have grown, because we can see how immature we were only as much as we have actually grown. It may sound strange, but it is exactly when we realize how little we know that we can say we are wiser today than we were yesterday. Knowing that there is still so much we do not know — this is surely what it means to learn, and there is no end to it.
使っている単語は ashamed / ignorant / foolish / immature / realize だけで、どれも高校で習う範囲です。そのかわり how 節を4回、what 節を1回使って、日本語では表に出ていない論理を全部言葉にしています。京大の採点はこの「論理を再現できているか」に配点が寄るので、これで十分に戦えます。まずはここを目標にしてください。
It often happens that we look back and feel ashamed of how little we knew and how foolish we were. Yet that feeling itself probably shows how far we have come, because we can notice how immature we used to be only after we have grown that much. It sounds like a contradiction, but the moment we understand how much we still do not know is exactly the moment we can say we are wiser today than we were yesterday. To learn, surely, is to keep finding out how much is still unknown to us, and that is something that never ends.
こちらはもっと説明的に、噛みくだいて書いた版です。「〜分だけ」を only after we have grown that much と時間の順序で言いかえたり、「学ぶということ」を To learn is to ... の形にしたりしています。英語としてはやや長くなりますが、内容は正確に伝わるので減点されません。本番でうまい形が思いつかなかったときは、こうやって説明でねじ伏せて大丈夫です。

名詞のかたまりを節に開く
日本語の「Aの無知」「Bの美しさ」のような『名詞+の+名詞』は、英語では how 節に開くと一気に書きやすくなります。和文英訳でいちばん出番が多い形なので、まずこれを体に入れてください。
量を節で表す
「どれだけ〜か」「まだまだ〜ない」は、量を表す how much / how little を使うと、難しい名詞を探さずに書けます。この問題では3か所で使えます。
「〜するということ」を受ける
「これが〜ということだ」「〜とは何か」を受ける形です。京大の随筆文ではほぼ毎年どこかで使えます。
「〜したときにこそ」の強調
「〜こそが」「まさに〜のときに」を出す形。exactly を入れると「こそ」の感じがしっかり出ます。
「〜した分だけ」の比例
日本語では助詞ひとつで済んでしまう比例の関係を、英語ではきちんと形にする必要があります。ここを and で済ませないことが、この問題の分かれ目でした。
「終わりがない」
抽象的な名詞を探さずに it で受けてしまうのがコツです。2通り持っておくと表現が単調になりません。
「〜のだろう」を残す
日本語の文末の言い方は、英語では副詞や助動詞に置きかえます。ここを落とすと言い切りの文になってしまい、元の文とずれます。京大は毎年ここを見ています。
| 表現 | 意味 | ひとこと |
|---|---|---|
| feel ashamed of | 〜を恥ずかしく思う | shame は他動詞なので、必ず feel / be ashamed of の形で使います |
| ignorant | 無知な | 名詞は ignorance。ignore(無視する)とは別の語です |
| foolish | 愚かな | 名詞は foolishness。how foolish と節に開けば名詞形は不要です |
| immature | 未熟な | 名詞は immaturity |
| realize | (そうだと)気づく | notice(目で気づく)より、頭で理解するときに使います |
| wise | 賢い(知恵がある) | smart / clever は「頭の回転が速い」。この問題では wise です |
| grow | 成長する | have grown で「成長してきた」 |
| there is no end to ~ | 〜に終わりはない | it never ends とセットで覚えておくと便利です |
京大の第III問(和文英訳)は、2022年「車窓からの眺め」、2023年「情けは人のためならず」、2024年のこの問題、2025年「顔と心の関係」と、ずっと一般論を語る随筆文が続いています。難しい単語はほとんど出ません。そのかわり「日本語では表に出ていない論理関係を、英語では言葉にして書く」作業が毎年1〜2か所しかけられています。この年はそれが「〜分だけ」でした。
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