京都大学のロゴ 第Ⅲ問 和文英訳 京都大学 2024
京都大学 2024年度 前期日程 · 英語

第Ⅲ問 和文英訳
解答と解説

抽象的な随筆文の和文英訳です。文の形自体はやさしいのですが、「〜した分だけ」の比例関係、「〜のだろう」の推量、「これが学ぶということ」の言い換えという3つの論理を英語で組み直せるかで差がつきます。難しい単語はまったく必要ありません。むしろ how 節・what 節に開いて、少し説明的に書くほうが確実に点になります。

難易度 ★★★★ 目安 25分 和文英訳 テーマ 無知の自覚と学び
1

問題

第Ⅲ問 次の文を英訳しなさい。

かつての自分の無知と愚かさを恥じることはよくあるが,それは同時に,未熟な自分に気づいた分だけ成長したことをも示しているのだろう。逆説的だが,自分の無知を悟ったときにこそ,今日の私は昨日の私よりも賢くなっていると言えるのだ。まだまだ知らない世界があることを知る,きっとこれが学ぶということであり,その営みには終わりがないのだろう。

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この問題で見られている力

  • 「かつての自分の無知と愚かさ」のような名詞のかたまりを how 節に開けるか
  • 「〜した分だけ」という比例の関係を英語の形で表せるか
  • 文末の「〜のだろう」を probably / surely などで残せるか
  • 「今日の私は昨日の私よりも」を名詞のまま訳そうとしないか
  • 「これが学ぶということだ」を what 節で受けられるか
2

文ごとの解説

第 1 文

かつての自分の無知と愚かさを恥じることはよくあるが,それは同時に,未熟な自分に気づいた分だけ成長したことをも示しているのだろう。

つまずきやすいところ
  • 主語が書かれていません。誰の話かというと一般論なので、we を補ってあげます
  • 「無知と愚かさ」は名詞が2つ並んだ形。ignorance and foolishness と置き換えてもいいのですが、how ignorant and foolish we used to be と how 節に開くほうがぐっと英語らしくなります
  • 「それは」が何を指すのかがあいまいです。「恥ずかしいと思う気持ち」のことなので、that feeling のように書いてあげないと英語では伝わりません
  • ここが山場です。「未熟な自分に気づいた分だけ成長した」は、気づいた量と成長した量が比例しているという話。and でつなぐと、この関係がまるごと消えてしまいます
  • 「〜のだろう」は言い切りを避けた言い方。probably を足すだけで残せます
発想の切り替え

「かつての自分の無知」を of my past ignorance のように名詞で処理すると、「かつての」が形容詞1語につぶれて硬くなります。how ignorant we used to be と節に開けば、used to be という時制だけで「かつての」を表せます。ここが京大の和文英訳で一番よく効く発想です。「〜分だけ」は only as much as を使って、少し説明を足す形で書けば十分。難しい構文はいりません。

訳例
標準

We often feel ashamed of how ignorant and foolish we used to be. But at the same time, that feeling probably shows how much we have grown, because we can see how immature we were only as much as we have actually grown.

別解

It often happens that we look back and feel ashamed of how little we knew. Yet that feeling itself probably shows how far we have come, because we can notice how immature we used to be only after we have grown that much.

この文でやりやすい誤り

shame を「恥じる」の意味で使ってしまう

減点 大
I often shame my past ignorance and foolishness.
We often feel ashamed of how ignorant we used to be.

shame は「誰かに恥をかかせる」という意味の他動詞です。この文だと「過去の自分の無知に恥をかかせる」という、よくわからない文になってしまいます。

「〜はよくある」を It is often that ... と書く

減点 中
It is often that we are ashamed of our past.
We often ... / It often happens that ... / More often than not, we ...

It is often that ... という言い方は英語にありません。「よくある」は often という副詞か、It often happens that ... の形で表します。

「〜した分だけ」を and でつないで、比例の関係を消してしまう

減点 大
It shows that we have grown and we have noticed our own immaturity.
we can see how immature we were only as much as we have actually grown

元の文は「気づいた分だけ成長している」という比例の話をしています。and で並べてしまうと、ただ2つの事実が並んだだけになって、この文が言いたかったことが丸ごと消えます。この問題で一番差がつくところです。

文末の「〜のだろう」を訳さずに言い切ってしまう

減点 中
It shows that we have grown.
probably / surely を足すだけで大丈夫です

元の文は「示しているのだろう」であって、言い切ってはいません。京大の文章は言い切りと推量がきちんと書き分けられているので、ここを落とすと筆者より強く主張している別の文になってしまいます。第1文と第3文の2か所にあります。

「かつての」が消えて、現在形で書いてしまう

減点 中
how ignorant and foolish we are
how ignorant and foolish we used to be / we once were

「かつての自分」の話なので過去です。現在形にすると「今の自分が無知だ」という意味になり、第2文の「今日の私は昨日より賢い」と矛盾してしまいます。

この文の言いかえ
恥じる
feel ashamed ofこれが基本。迷ったらこれで大丈夫です
be embarrassed by「きまりが悪い」寄りですが、この文なら使えます
be shameful「恥ずべきものだ」という意味になって、主語がずれます
無知(だということ)
how little we know節に開いた形。この問題ではこれが一番きれいです
how ignorant we used to be「かつての」を used to be で表せます
ignorance名詞で受けても正解です
愚かさ
how foolish we were節に開けば foolishness を覚えなくても書けます
foolishness名詞形。これも問題ありません
folly文語的な語。知っていれば使えますが、覚える必要はありません
stupidityけなす響きが強すぎます
未熟な
how immature we were節に開く形
immatureそのまま形容詞で
inexperienced「経験が足りない」寄りになります
callow難しい語です。この問題では出番がありません
〜した分だけ
only as much as S Vこの問題に一番合います。比例がはっきり出ます
only after S have V-ed that much順序に言いかえる逃げ道。説明的でも通じます
to the degree that S V少し硬いですが正確です
andただ並べるだけになり、比例の関係が消えます
第 2 文

逆説的だが,自分の無知を悟ったときにこそ,今日の私は昨日の私よりも賢くなっていると言えるのだ。

つまずきやすいところ
  • 「逆説的だが」に paradoxical という単語は必要ありません。It may sound strange, but で十分伝わります
  • 「〜たときにこそ」の「こそ」をどう出すか。It is exactly when ... that ... の形が一番わかりやすいです
  • 「今日の私は昨日の私よりも」を名詞のまま訳そうとすると必ず行き詰まります
  • 「賢い」は wise です。smart は「頭の回転が速い」で、この文の知恵の話とはずれます
  • 「〜と言えるのだ」は we can say でそのまま書けます
発想の切り替え

「こそ」は It is exactly when ... that ... という強調の形で受けるのが一番安全です。倒置(Only when ... can we ...)でも書けますが、語順を一つ間違えると文が壊れるので、無理に狙う必要はありません。「今日の私/昨日の私」は名詞ではなく today / yesterday という副詞で処理して、動詞のほうで時間差をつけます(we are wiser today than we were yesterday)。日本語の名詞的な発想を、英語の副詞的な発想に切り替える練習として、とてもいい例です。

訳例
標準

It may sound strange, but it is exactly when we realize how little we know that we can say we are wiser today than we were yesterday.

別解

It sounds like a contradiction, but the moment we understand how much we still do not know is exactly the moment we can say we are wiser today than we were yesterday.

この文でやりやすい誤り

「今日の私は昨日の私よりも」を名詞のまま訳す

減点 大
Today's me is smarter than yesterday's me.
we are wiser today than we were yesterday

所有格のあとに me を置く形は英語にありません。また smart は「頭の回転が速い」という意味で、この文の「知恵がついた」という話とはずれています。

「〜たときにこそ」の「こそ」が消える

減点 小〜中
When we realize our ignorance, we can say we are wiser.
It is exactly when we realize how little we know that we can say ...

意味は通じますが、「こそ」が持っていた「まさにそのときに」という強調がなくなっています。元の文の言い方を再現できていない分だけ減点されます。

この文の言いかえ
逆説的だが
It may sound strange, butこれで十分です。paradoxical は不要
It sounds like a contradiction, but少し説明的ですが自然です
Paradoxically,知っていれば1語で済みます
Ironically,「皮肉なことに」で意味がずれます
〜したときにこそ
It is exactly when ... that ...一番わかりやすく、確実です
the moment ... is exactly the moment ...説明的に押し切る形。これも正解です
Only when ... can we ...倒置が必要。語順を間違えると文が壊れるので、無理に狙わなくて大丈夫です
第 3 文

まだまだ知らない世界があることを知る,きっとこれが学ぶということであり,その営みには終わりがないのだろう。

つまずきやすいところ
  • 「知らない世界」の「世界」を world と直訳していいかどうか。英語の world は「地球・世の中」が基本の意味なので、少しずれます
  • ここも山場です。「これが学ぶということだ」は what it means to learn という what 節で受けます。この形を知っているかどうかだけで決まります
  • 「その営み」という抽象的な言葉は、it で受けてしまってかまいません
  • 「終わりがない」は there is no end to it が一番シンプルです
  • ここにも「〜のだろう」があります。surely を入れておきましょう
発想の切り替え

「まだまだ知らない世界がある」は、there is still so much we do not know と「量」で言いかえるのが一番自然です。ここでも how much / so much という形が効きます。「これが〜ということだ」は what 節で受けるのが定番で、京大ではほぼ毎年どこかで使えます。「その営み」を process や pursuit のような単語で受けようとすると急に硬くなるので、it で受けて there is no end to it とするほうがきれいにまとまります。

訳例
標準

Knowing that there is still so much we do not know — this is surely what it means to learn, and there is no end to it.

別解

To learn, surely, is to keep finding out how much is still unknown to us, and that is something that never ends.

この文でやりやすい誤り

「知らない世界」を worlds とそのまま訳す

減点 中
There are many worlds which we don't know.
there is still so much we do not know

英語の world は「地球・世の中」が基本の意味です。複数形にすると「異世界・別の惑星」のように聞こえてしまい、「まだ知らない領域がある」という日本語の比喩とはずれます。

「これが学ぶということだ」を別の意味にしてしまう

減点 大
This is the thing to learn.
this is what it means to learn / what learning is

これだと「これが学ぶべき内容だ」という、まったく違う意味になります。元の文は「学ぶという行為はこういうことだ」と言っています。

「終わりがない」の冠詞と言い方をまちがえる

減点 中
The activity doesn't have the end.
there is no end to it / it never ends

the end の冠詞が違いますし、have を使うのも不自然です。

この文の言いかえ
その営み
it代名詞で受けてしまうのが一番きれいです
something that never ends後半とまとめて言いかえる手
process名詞で受けたい場合はこれ
endeavor大げさになります
3

模範解答

標準解

まずここを目標にhow節 ×4 / what節 ×197語

We often feel ashamed of how ignorant and foolish we used to be. But at the same time, that feeling probably shows how much we have grown, because we can see how immature we were only as much as we have actually grown. It may sound strange, but it is exactly when we realize how little we know that we can say we are wiser today than we were yesterday. Knowing that there is still so much we do not know — this is surely what it means to learn, and there is no end to it.

使っている単語は ashamed / ignorant / foolish / immature / realize だけで、どれも高校で習う範囲です。そのかわり how 節を4回、what 節を1回使って、日本語では表に出ていない論理を全部言葉にしています。京大の採点はこの「論理を再現できているか」に配点が寄るので、これで十分に戦えます。まずはここを目標にしてください。

説明を足した解

書けなかったときの逃げ道how節 ×6102語

It often happens that we look back and feel ashamed of how little we knew and how foolish we were. Yet that feeling itself probably shows how far we have come, because we can notice how immature we used to be only after we have grown that much. It sounds like a contradiction, but the moment we understand how much we still do not know is exactly the moment we can say we are wiser today than we were yesterday. To learn, surely, is to keep finding out how much is still unknown to us, and that is something that never ends.

こちらはもっと説明的に、噛みくだいて書いた版です。「〜分だけ」を only after we have grown that much と時間の順序で言いかえたり、「学ぶということ」を To learn is to ... の形にしたりしています。英語としてはやや長くなりますが、内容は正確に伝わるので減点されません。本番でうまい形が思いつかなかったときは、こうやって説明でねじ伏せて大丈夫です。

6

他の問題にも使える形

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how + 形容詞 + S V最重要

名詞のかたまりを節に開く

日本語の「Aの無知」「Bの美しさ」のような『名詞+の+名詞』は、英語では how 節に開くと一気に書きやすくなります。和文英訳でいちばん出番が多い形なので、まずこれを体に入れてください。

かつての自分の無知 → how ignorant we used to be
彼の若さに驚いた → I was surprised at how young he was
how much / how little / so much最重要

量を節で表す

「どれだけ〜か」「まだまだ〜ない」は、量を表す how much / how little を使うと、難しい名詞を探さずに書けます。この問題では3か所で使えます。

どれだけ成長したか → how much we have grown
まだまだ知らないことがある → there is still so much we do not know
what it means to V / what S is最重要

「〜するということ」を受ける

「これが〜ということだ」「〜とは何か」を受ける形です。京大の随筆文ではほぼ毎年どこかで使えます。

これが学ぶということだ → this is what it means to learn
それが友情というものだ → that is what friendship is
It is exactly when ... that ...よく使う

「〜したときにこそ」の強調

「〜こそが」「まさに〜のときに」を出す形。exactly を入れると「こそ」の感じがしっかり出ます。

無知を悟ったときにこそ → It is exactly when we realize how little we know that ...
only as much as S Vよく使う

「〜した分だけ」の比例

日本語では助詞ひとつで済んでしまう比例の関係を、英語ではきちんと形にする必要があります。ここを and で済ませないことが、この問題の分かれ目でした。

気づいた分だけ成長した → we can see it only as much as we have actually grown
there is no end to it / it never endsよく使う

「終わりがない」

抽象的な名詞を探さずに it で受けてしまうのがコツです。2通り持っておくと表現が単調になりません。

その営みに終わりはない → there is no end to it
probably / surely / mustよく使う

「〜のだろう」を残す

日本語の文末の言い方は、英語では副詞や助動詞に置きかえます。ここを落とすと言い切りの文になってしまい、元の文とずれます。京大は毎年ここを見ています。

示しているのだろう → it probably shows
きっとこれが〜だ → this is surely ...
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この問題の語彙

表現意味ひとこと
feel ashamed of〜を恥ずかしく思うshame は他動詞なので、必ず feel / be ashamed of の形で使います
ignorant無知な名詞は ignorance。ignore(無視する)とは別の語です
foolish愚かな名詞は foolishness。how foolish と節に開けば名詞形は不要です
immature未熟な名詞は immaturity
realize(そうだと)気づくnotice(目で気づく)より、頭で理解するときに使います
wise賢い(知恵がある)smart / clever は「頭の回転が速い」。この問題では wise です
grow成長するhave grown で「成長してきた」
there is no end to ~〜に終わりはないit never ends とセットで覚えておくと便利です
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出題の傾向

京大の第III問(和文英訳)は、2022年「車窓からの眺め」、2023年「情けは人のためならず」、2024年のこの問題、2025年「顔と心の関係」と、ずっと一般論を語る随筆文が続いています。難しい単語はほとんど出ません。そのかわり「日本語では表に出ていない論理関係を、英語では言葉にして書く」作業が毎年1〜2か所しかけられています。この年はそれが「〜分だけ」でした。

学習の成果を喜ぶ Boost のキャラクター Boo

この問題を解いて添削してもらう

解説を読んだあとに自分の言葉で書き直すと、力のつき方がまったく違います。Boost アプリでこの問題を開けば、書いた答案をそのまま AI が添削します。

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